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  作者: Allen
5/13

ある者には


勢いよく部屋を飛び出し、『難攻不落の城塞』の前に来てはみたものの。

肝心の呼び出した人物らしき人は誰もいない。


というか『難攻不落の城塞』に近づこう、と、普通の人なら思わないのだから誰もいないのは当然であるが。


あの電話は誰かのイタズラだったのか、

自分をここに呼び寄せる為の口実で、自分をここで襲撃しようと思っていたのか。


後者の可能性が少しでもあるなら、警戒は解けない。



ふっ



自分のすぐ上を、何かが通り抜けた気がした。

何だろう、疑問に思い上を見ると、『難攻不落の城塞』の屋根の上に一人の男が座っている。


とても神々しくて。

とても輝かしくて。

とても近寄りがたい、

高嶺の花の様な。


そんな印象を受けた。


その男から溢れる威圧感は、自分が指一本動かせず冷や汗をかかせる程のもの。

だけど、普段からそういった事に慣れている自分だからこそ分かるのだ。


この男は、これでも威圧感を最大まで抑えている。


それでも、それでも自分は屈してしまう。


ああ、自分はなんて小さな存在なんだろうか。


そう思い知らされていた。



「やぁ。来てくれたんだね。嬉しいよ。」



ぞわっ


男の声を聞いた瞬間、鳥肌が立つ。

別に怖い訳ではない。むしろその逆。


その男の声は優しすぎるのだ。


「うーん、これでも最大限に抑えてるんだけどな。まぁいい。」


男は語り始める。

優しすぎる声で。



「──この世界には神様がいるだろう?

神様はある日、人間に力を与えた。


ある者にはあらゆる物を侵食する、毒の力を与え、

ある者には命じた物を破壊する、破壊の力を与え、

ある者にはどんな手段によっても死なない、不滅の力を与え、


ある者には人の心を読み、操る洗脳の力を与え、

ある者には電脳世界を駆け、機械を操る力を与え、

ある者には物を産みだし、それを使える力を与え、


ある者には身体を変え、化け物となりて世界を壊す力を与え、

ある者には誓約書によって縛り付け、自分の意のままに他者を縛る力を与え、

ある者にはどんな場所からも当てられる、究極の狩人の力を与え、


ある者にはどんな怪我からも回復する聖女の回復能力を与え、

ある者にはどんな攻撃も受け付けない、無敵の盾の力を与え、

ある者には水中を自在に行き来し、水を自由自在に操る水流操作の力を与え、


ある者には炎を生み出し、全てを焼き尽くす力を与え、

ある者には雷を生み出し、操る力を与え、

ある者には身体を強化し、怪力を出せる力を与えた。


だけど神様は失敗した。


人間に力を不用意に与えてしまい、人間は舞い上がる。

舞い上がってしまった人間達は、誰の力が一番強いかと争いを始め、挙句の果てに神様に一矢報いてやろうと、反逆を起こそうとした。


もちろん、人間が神様に敵う筈ないけどね。


そしてつい最近、神様は『世界の事情』を作った。

『世界の事情』。簡単に言うと、これは一人の子供の為だけに作られたんだけどね。


近いうちに、『世界の事情』により、大きな何かが起こる。

だからそれを覚悟しておいて。


君にも大きな影響がある筈だから。」


『世界の事情』


それは一体何なのだろうか。

それに、自分にも影響があるということは、理想を叶えるうえで大切な情報が手に入れられるかもしれない。それは期待しておこう。


10年前の、楽しかったあの日々の事を思い描く。


──あれ、何が楽しかったんだっけ。

確かに楽しかったって事は覚えてるんだ。なのに、何が楽しかったかが思い出せない。というより、アイツって誰だっけ?男だっけ、女だっけ。どんな顔だっけ。どんな声だっけ。

あれ?

なんで思い出せないんだよ?


ここで考え込んでしまうと、もう止まらなくなりそうで、一旦思考を中断する。

もう一度男の方を見てみる。

男は優しすぎる程の微笑みを浮かべていた。


自分の口が、勝手に動く。


「なぁ……、あなたは、なんて名前なんですか……?」


その瞬間、男の姿はどこかへ消えていた。




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