絶望していた彼は。
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子供時代に絶望していた彼は、もう立派な青年になっていた。
元から魔法の才能があった事もあり、今は魔法使いという職業についているものの、置かれている環境は決していいものではない。
人殺し。
罪を犯した人間を地獄に葬り、生きていた痕跡を無くす。
罪を犯した人間。
それは自分からしたらただの建前だ。
自分が気に入らない人間がいれば殺す。
それだけ。
そんな最低な暮らしをしているうちに、もう自分の心の行き場はなくなっていった。
でももう今更新しく行き場を作ろうとは思わない。
だって。
自分には追い求めている理想の現実があるのだから。
もう10年前のあの日から理想を追い求めているものの、一向に叶いそうにない。
理想を叶えるうえで、絶対に欠かせない人物がいるが、その人物については全くもって行方が分からなくなっている。
「どこにいるんだろうなぁ…アイツ…」
もしかしたら、同業者に殺されたり、普通に、もう生きていない可能性もある。
何せ、行方が分からなくなってからもう10年は経った。
「何してるんだろ、生きてるといいけど。……会いたいなあ」
果たして会ってくれるのだろうか。
何の躊躇いもなく人を殺せるようになった自分と、
他人の血で染まった自分の手を感じても、
会ってくれるのだろうか。
話してくれるのだろうか。
自分を恐れて近づいてこないかもしれない。
最低だ、と罵られるかもしれない。
でも、それでも会いたい。
だって、大切な友達だから。
人見知りだった自分に、積極的に声を掛けてくれて、以来ずっと仲良くしてくれている。
数少ない、自分の大切な友達。
だからこそ、会いたいのだ。
自分の友達が一人でも欠けるなんて、それは最早自分の人生じゃない。
どうしても見つからないというのなら、自分の人生を自分の手で終わらせよう。
そこまで。
そこまで思う程、自分は理想を追い求めている。
そんな思考の海に浸かっていると、突如携帯のベルが鳴り響いた。
画面を見ると、知らない番号から。
「もしもし……?」
「おーおー。その声色じゃ警戒してるか。まぁ無理もないな。……用件は手短に済ませる。今すぐ、『難攻不落の城塞』の前に来い。それだけだ。」
それだけ言うと、電話は切れてしまった。
相手は男。聞きなれない声。
そして『難攻不落の城塞』。
──どんな事をしても絶対に壊れない、あらゆる干渉を完全的に遮断する。
中に誰がいるのか、中には何があるのか、誰も分からない。
謎に包まれた城。
その城の前で何をするというのか。
軽率な行動は避けたいが、とにかく行ってみるしかないだろう。
「めんどくせ……」
そう文句を流しながらも、部屋の扉に手を掛けて外に出る。
『難攻不落の城塞』は、ここから3キロ程しか離れていない為、すぐに着くだろう。
彼は、踏み出していく。
悲劇へと。




