第五話 ハンターの村
今更ながら小説の書き方のエッセイを拝見して、プロットをちゃんと書いて進めた方がいいと知りました! やばいw だから読み返すたびに何十回も修正や書き直しが起こるのか!
グダグダな感じの筆者ですが、ゆるーく見守って下さるとありがたいです!
あと、こんな拙い文章をお気に入りに登録して下さった方がいるなんて感激です! ありがとうございます!
◆◇◆ 第五話 ハンターの村 ◆◇◆
村に近づくと思いのほか大きいことがわかった。
周囲をしっかりとした防御柵に囲まれており、ちょっとした城塞だ。興味深そうに見ている俺にクリムさんがくるっと振り返って言う。
「ここが私達の住んでいるワンダル村です。もともとは魔獣ハンターの拠点として作られた村なんですよ」
「魔獣ハンター……」
やっべ! なんか俺の中二心を刺激する単語が出てきた! 『魔獣ハンター』って響きがカッコイイ、俺でもなれるかな? その前に『魔獣』のことを聞くべきか。
「そもそも『魔獣』って何なんですか?」
「えっと、『魔獣』は正式には『変異体』と呼ばれるもので、普通の生き物の輪から外れた存在なんです。正常な生物と比べてとても凶暴で、何でも食べ尽くして際限なく大きくなっていくんです」
昨日の黒い狼……魔獣ガルウルフだっけ? は普通の狼より遥かに大きかったなもんな、確かに。
「魔獣が現れると周囲のものを食い荒らして、みるみる土地が荒廃していきます。そうして荒廃が進むと、また新たな魔獣が発生しやすくなって被害がどんどん大きくなっていってしまうんです」
なんか想像以上に『魔獣』は危険な存在みたいだ。見つけたらすぐ討伐しないと、日に日に厄介なことになっていくってことだ。さっきの飛竜も野放しにしておくのはまずいんじゃないか?
「なるほど、それは危険ですね……」
俺は神妙な顔で頷く。浮かれている場合じゃないかも。なぜなら俺はたった一日ほどの間に黒狼と飛竜、二匹の魔獣に遭遇しているのだ。思いのほか、事態は深刻なのかもしれない。
「はい、そういう訳で、『魔獣ハンター』はとっても重要な存在です。それになんといっても皆の尊敬と憧れの対象なんです! 実は、うちには姉がもう一人いるのですが結構有名なハンターなんですよ? 今は魔獣の討伐遠征に出ているんですが」
「へぇ、そうなんですか! お姉さん凄いんですね~」
「はい! さっきの飛竜だって、お姉ちゃんがきっと退治してくれます!」
「くれます!」とメルちゃん。
姉妹二人して尻尾ふりふりで嬉しそうに言う。よっぽどお姉さんのことを信頼しているんだろう。
魔獣ハンターのお姉さんか……どんな人だろう。
村の門のところへ来ると、門番の犬亜人のおじさんがクリムさんの姿を見つけて声を掛けてくる。
「おかえりなさい、帰りが遅いので心配していましたよ。最近は村の近くでも物騒になってきているので……。そちらの方は?」
「ただいま、ブルータさん。実は薬草を採っている最中に飛竜に襲われて……」
「えぇっ! 飛竜っ!?」
「はい、危ないところをこちらのユーキさん達に助けて頂いたんです」
「そうだったんですか! 飛竜に遭遇してよく無事で……っ! いや、ユーキ殿ありがとうございました! 村の者を助けて頂き!」
そう言ってブルータさんは俺の手をガッシリ握っててブンブン振る。ブルドック系のかなりの強面で見た目はすっごい迫力なのだけど、実は結構いい人っぽい。ぬこにゃんは完全に俺の後ろに隠れているw 俺だってクリムさんと一緒じゃなきゃ絶対近づかなかっただろう。門番としてはこれ以上ない人材(犬材?)だ。
「おっと、こうしちゃいられない! 飛竜が付近に現れていることを通知して、警戒を厳重にしないといけませんな! ハンターギルドに討伐依頼を出してもらいましょう! クリムさん達が襲われたと聞けば、お姉さんが自ら討伐にでるかもしれませんしね!」
ブルータさんはクリムさんから飛龍と遭遇した状況を聞き取り、俺の入村許可を快く発行すると、慌ただしく詰所に戻っていった。
どうやら飛竜の討伐クエストが手配されるみたいで安心した。
……あ、ブルータさんの顔の恐さに圧倒されて黒狼に遭遇したこと言うの忘れちゃった。まあ、やっつけたし大丈夫か。
クリムさんに案内されて村の中へ入る。平屋建ての家が並ぶ夕暮れ時の村の様子は、どこか田舎のお爺ちゃんとお婆ちゃんの家を思い出させる。……なんかノスタルジック。
すれ違う人は、人間族は本当にごく少数で、犬亜人が四割、猫亜人が三割、残り三割はキツネ亜人、ウサギ亜人などその他の様々な亜人さんという感じだ。みんな人間ベースの姿に種族特有の耳や尻尾などがついている。ついつい目がいってしまう……ファンタジー万歳!
「俺と同じ人間族は少ないんですね」
「そうですね、人間族の方はどちらかと言うと研究者とか内にこもっている人が多いですね。亜人のように身体的能力が高くないので、ハンターのような荒事には向かないんだと思います。人間族でハンターをやっている人を私は見たことがないです。だから、ユーキさんを見た時はちょっっとびっくりしてしまいました」
「あ~、そうだったんですね。あれ? そういえば、ぬこにゃんと同じ種族の人も見かけないですね? 猫亜人さんは結構いるみたいですけど……」
「ぬこにゃんさんは『猫妖精』っていう珍しい種族なんです! 人見知りで滅多に人里には降りてこないんですけど、たまーに好奇心の強い子が遊びにくるそうです」
「へ~、ぬこにゃんは珍しい種族なんだって」俺はぬこにゃんの頭を撫でつつ呟く。
「レア物にゃ♪」
ふんすっ♪と胸を張るぬこにゃんw
「お帰り~クリムちゃん、メルちゃん。」
井戸のある小さな広場を通りかかると、いかにも近所のおばちゃんといった感じの女性達が集まっていて声をかけてきた。
「あら、可愛い! ネコ妖精さんも一緒なのね!」
「あらほんと! そうだ、これあげる♪」
おばちゃんがメルちゃんとぬこにゃんにカゴから焼き菓子を差し出してくる。
ぬこにゃんは俺のほうを見上げてきたので、「ちゃんとお礼を言うんだよ」と頷いてやる。
「ありがとう~☆」
二人がペコリとお礼を言って嬉しそうに受け取ると、その姿におばちゃん達はメロメロだった。
そういう事が二、三回続いたので、お菓子を両手にメルちゃんとぬこにゃんはご機嫌だ。
なんでも猫妖精は福を招くと信じられていて、彼等に親切にした者には必ず幸運が訪れると言われているのだとか……。どうりで、さっきからおばちゃん達がメルちゃんとぬこにゃんを見つけるとお菓子やら何やらをくれるのか。
……いや、それがなくても声掛けたくなるな! 可愛いは正義だ!
そうこうするうちにクリムさんの家に着いた。結構大きなお宅だ。表通り側は回復薬やハンター用雑貨等を売っている店舗になっていて、『テレサ薬師店』という緑の葉をモチーフにした看板がかかっている。
「お婆ちゃんはとっても腕のいい調合師なんですよ。回復薬や解毒薬などが良く効くと評判で、ハンターや衛兵の人達に贔屓にしてもらっているんです。今日はその大事な材料の調達だったので、助けて頂いて本当に助かりました」
クリムさんが店の裏口へ案内しながらそう説明する。
「お婆ちゃんを呼んできますので、ちょっと待ってて下さいね」
「ただいまー、お婆ちゃ~ん」とクリムさんとメルちゃんが家の中に入っていく。
今日はこちらに泊めてもらえるということだけど、長居はできないだろう。どこか宿を探さないといけないかな……。『ハンターズクエスト』のお金って使えるんだろうか? 使えるなら大金持ち決定なんだけどな~。後でこちらの通貨を聞いてみないと。
場合によっては、自分で調合した回復薬をクリムさんのお店で売ってもらって、お金を稼ぐというのも有りかもしれない。『ハンターズクエスト』にも調合のコマンドがあって回復アイテム等を作成することができる。こちらの世界でどのくらい通用するのか調べたほうがいいだろう。あと実際の調合がどんなものか、ちょっと見てみたいし。
ぼんやりそんなことを考えながらぬこにゃんの肉球をプニプニしていると、クリムさんが出てきて中に入れてくれる。
「さあ、どうぞ遠慮なさらず入ってください。」
居間へ通されると、そこには背中の丸まった犬亜人の小さなお婆ちゃんが座っていた。いかにも田舎のお婆ちゃんという感じだ。
「まあまあ、いらっしゃい。今日は孫達の危ないところを助けて頂いたそうで、本当にありがとうね。狭いところだけど、どうぞゆっくりしていってくださいね」
あぁ、なんかホッとする感じだ。うちのお婆ちゃんを思い出す。
ぬこにゃんは早速人見知りを発動して、俺の陰から様子を見ている。でも、ぬこにゃんはお婆ちゃんが大好きだから、きっとすぐ慣れるだろう。
「お邪魔します」
ぬこにゃんと一緒に挨拶をする。
「おんや、可愛い猫妖精さんも一緒なのね。これはますます御もてなししないとねぇ。お魚あったかしら?」
『お魚』という言葉にぬこにゃんの耳がピクンっとハネる。
「猫妖精さんはチーズも好きだったはずよね」
『チーズ』というフレーズにぬこにゃんのヒゲがピクピクと反応する。
「そうそう、マタタビのお漬物も用意しなくちゃね」というお婆ちゃんの言葉でダメ押し。
「お婆ちゃん大好き~」
お婆ちゃんにひしっと抱きつくぬこにゃん。
「あらあら、喜んでもらえて嬉しいわ」
出会って1分でぬこにゃんのハートをがっちりキャッチだ。お婆ちゃん恐るべし!