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美希。  作者: 翠月瑞希
1/2

美希。  1





――――




「美希、好きだよー」

「…………」


こんな甘い言葉にも、全く無視の俺の彼女。

もう一回、俺はそいつに向かって笑顔で続けてみる。


「可愛いなぁ」

「…………」


……ひどいなー。泣いちゃうよ、俺。


それでも美希は、ツンとしたままだ。

俺って結構ガラスのハートなんだよね、と思いながら、その手をとってぎゅっと握る。


小さくて、細くて、白い手だ。


「あったかいね」


そう言ってやると、一瞬だけ握り返してきた気がした。

まぁ、気のせいだろうけど。


俺の彼女は……そう。 

一言で言うと、


“ツンデレ”


だと思う。




――――




「おはよーっ」


俺は朝イチで、彼女のもとへ行ってあいさつ。

でも、美希は眉ひとつ動かさない。口もツン、と結ばれたっきり。


――全く、俺がいることも気づいてないのかよ。


そんなことを思いながら、頬を指でつついてみる。


「……やわらけぇな」

「…………」


すねちゃったかな。子どもみたいな扱いしたから。

まあ、いつものことだ。


お互い好きだから、いいんだけど。




――――




俺が高校に入ったときの最初のクラスで、隣の席だった美希。

はっきり言って、超ドストライクだった。


背はちょっと低くて、華奢な手足は細くて、

声が可愛くて、笑顔が素敵で。


まぁ、いわゆる一目惚れってやつかな。

出逢って1ヶ月しないうちだった。

周りの友人たちは、みんな「玉砕だ」って冷やかしたけど、

当たって砕けろ的な感じで、俺は彼女にコクった。


そのとき俺はOKの返事に、失神寸前だったと、あとから聞かされた。


「好き」って美希に言われたのも、恥ずかしながら、あんまよく覚えてないんだよね。



……あ、そうだ。

勘違いしないでもらいたいんだけど、美希ははじめからツンデレだったワケじゃない。


『ともくん、海行こっ』


って、眩しいくらいの笑みで腕組んできたり、


『雪、降ってきたね。寒いよ……』


って、2人で1つのマフラーにくるまったり。

とにかく、ラブラブでベタベタで、幸せそのものだった。




――――




それが一変したのは、最近――半年くらい前かな――だ。



『……へ?』

『だーかーらっ! ともくん、1回も美希に言ってくれたこと、ない』


びっくりして、思わずコーヒーをむせそうになる。


『ねぇ、言ってよぉ、ともくん』


美希は頬をふくらませながら続ける。


『……んなの、言わなくても分かってんでしょ?』

『それでも……今、言ってほしいの』


――地元の駅前の喫茶店。

ケンカの発端は、美希のささやかなおねだりだった。


うん、まあ、俺が単に恥ずかしかっただけだけど。


みるみるうちに、彼女の目に涙がたまってゆく。


すぐにでも謝りたかった。

すぐにでも抱きしめて、頭をポンポンってしてあげたかった。


でも、よく分かんないけど、なんかその時は、変に意地張っちゃってて。


『もう、いいよ……

 ともくんのばかっ! 大っ嫌いっ!』


涙をボロボロこぼしながら、美希は走って行ってしまった。

俺は感情の折り合いもつかずに、黙って座ったままだったけど。




――――



でも、それからやっぱり美希に謝りたくて……。

まあ、数時間後に会えたからいいんだけど。


でも、そんときからだよ、美希がずっとツンツンなの。

いくら俺が謝っても、無視。


あまりの態度の変わりように、呆然としてしまった。



――――



俺は、君に、笑いかけてみる。


「まだ、あんときのこと、怒ってる?」

「…………」


恥ずかしかったんだ、想いが強すぎて。

その言葉、軽いものにしたくなかった。




美希、今じゃ、俺のこと完全にスルーだけど。



「美希……ゴメンな」



ほら、今日も。


目も合わせてくれない。











……ってか、その目にさえ、映してくれないから。













小さくて、華奢な体につながれた、いくつもの管やコード。

2人きりの部屋で、ピッ、ピッ、という、無機質で規則的な音だけが響く。









美希の手をとり、その手のひらで俺は自分の頬を包む。


「まだ……許してくれない?」


その手は、とても暖かい。





――ちゃんと、好き。

今も、ちゃんと好き。

世界で、いちばん。


なんにも返してくれなくても、いっつも無視するくせに、俺にぬくもりだけは与えてくれる、ツンデレでもさ。





「好き」


もう一方の手で、ウソみたいに白くてやわらかい頬を包む。




――じゃあ、美希、俺は?




「俺のこと……好き?」

『大っ嫌い』



それでも良いよ。



それでも良い。だから――。

だから……。











「頼むよ、美希……。

 目、開けてくれよ……」











この声――届く?




すでに枯れ果てたと思ってた涙が、こぼれ落ちた。







美希が望んでた、“答え”。



いつか言うんだ、絶対。



その目を見て、必ず。



馬鹿みたいに。



呆れるほど。



何度でも言う。
















愛してる














と。












.1  Fin







ご読了ありがとうございましたっ☆=

……たぶん私の小説史上、最も切なくて悲しいお話、かと。。。

ふと頭に浮かんできた大切なアイデアを紆余曲折の上文章に仕立てたものですが、とりあえず、完全にフィクションではないんです、と言っておきます、はい。←

2話完結、もうひとつお話があります。

そちらも、お楽しみに。

(コメント、評価、感想、お気軽にっ)

では、また。


翠。


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