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墮天使は男の娘  作者: 七夜 泰星
1年生春
3/5

美少年

七夜(作者)は世界の女装男子、男装女子を応援します。

執事とメイドが消えるとベランダにでた。

普通のマンションのように隣同士は見える。

雨戸のように区切れるが、別にまずいこともないので開けておこう。

片方のお隣さんはしめていて、片方はあいている。


ガラガラ。


人がでてきた。

それは、あの美少年だった。

「こんにちは。」

彼は爽やかにほほ笑む。

俺は無反応にお辞儀をした。

「お名前は?」はn

優しくて甘くて透き通った声が静かに響く

「世浪 麗輝といいます。」

また、彼はほほ笑んで

「世浪さんか。」

聞きづらいながらも、思い切って名前も聞いてみた。

「あの・・・お名前・・・は?」

「あぁ、俺は羽雪(はねゆき)羅音(らい)。1年B組の。」

B組といえば、俺のクラスか。

「あ!お・・・私もそうです!」

やべ、俺というとこだった。

「別に、ため口でいいよ。ですとか使わないで。」

爽やかに笑うなよ。夕日にお前がぴったりなんだよ。その笑顔。

というより、俺はこいつに惚れてもない。だって、男だぜ?

「うん。」

緊張するな。そういやぁ、|United Kingdom(ユナイテッドキングダム)の意味を聞くかな。

「あのさ、United Kingdomってどこの国?」

また、ほほ笑む。

「イギリスのことだよ。ちなみに、この制服、イギリス産だから。」

そうだよ。だから聞いたんだ。

「すごいね。ヨーロッパ産。」

おもわず口にだしてしまった。

「え?ふつうじゃない?」

あ~あ。事情を話すしかないか。

そんでもって、俺は・・・私はいままでの事情を全部言った。

男ということは言っていないが。

「へ~。」

「誰にも言わないでよ?」

「大丈夫。さて、お風呂でもはいってくるか。俺はだいたいここの仕切りをあけてるから、結構ここにはいるんだ。」

「じゃ、私もはいってくるね。」

ニコっと笑ってやった。


風呂・・・か。

一人部屋に選んだ理由はこれだね。

女子が一緒で、片方の女子が風呂に入ってるとき、俺はトイレをどうすりゃいい。

別々だと思ってたからさ。その辺は考えなかったけど。


バスタブに湯をはって待つ。

あっという間に張れるんだよな、こういうの。

だいたい10分くらいでお湯をとめた。


さっぱりしたところで、外の空気を吸いに、ベランダってか庭?ベランダにでる。

別に、パジャマまで金を費やしたくないからかわなかった。

男物だっていいだろ?

羽雪君の部屋のドアの音がした。

出てきたのは、濡れた羽雪君と似たような色のウェーブした髪でネグリジェといったらいいのか、お嬢様のパジャマを着て、タオルで髪の水分を吸い取るしぐさをしながらでてきた。

その顔は・・・


ん?

んん?


思わず、声を出してしまった。

「羽・・・ゆ・・・き・・・く・・・・・・ん?」

羽雪にそっくりだよ!双子?!でも、一人部屋だよね?!

その子はこちらをむいた。

「っ!」

大きく目を開いた。

「世浪さん?てか、君?!」

なぜ、ばれた!

あ・・・カツラを忘れた・・・

「なんで?!男なの!?」

と、仕切りまで迫ってくる。

俺はうなずいた。

「てか、女ぁぁぁぁ?」

地声がでてしまうっても、俺はそこまで低くない。

羽雪の声はやっぱり透き通っていて、音域でいうと、アルトみたいな声だ。

「・・・っていうか、世浪も男じゃん。」

「うっ。」

「丁度いいよ。これ、秘密にすれば、なんとかなる。そんで、このしきりを、うちとあんたのとこだけあけて、お互い、別のほうを開けとくの。」

右手の人差し指を立てていう。

「わぁったよ。」

面倒くさそうに了解した。

「でさ、なんで?俺の理由は言わなくてもわかるだろ。」

むすっとした感じでいった。

「男子嫌いを克服するため。」

は?

「あたしさ~男子、大っっっっ嫌いなの。」

ためたな、大のあと。

「そんで、もうそろそろ許嫁となんかあるみたいだから、それに備えて。」

「親、何やってんの?」

「バニカっていう洋服のブランドのオーナーとかいろいろ。」

いろいろってなに?そんだけ金持ちなの?

「へぇ・・・」

「その服、めずらしいね!なんていうの?!」

キラキラさせるな、その目を。

「スウェット・・・」

恥ずかしいな、いろんな意味で。

「動きやすそう!」

あぁ、悪かったな!

「さっきさ、自分で貧乏っつってたじゃん?」

「あぁ。」

手を後ろにして聞いてきた。

「女物の私服、あるの?」

微妙だ。一応かったが。

「2,3着・・・かな。」

俺は頭をかきながら言う。

「んじゃ~、あたしのあげる!今度の休み、大丈夫?」

なんだよ、お嬢様め。

「悪いからいいよ。」

「もっと感謝しろよ。」

ぶすっとかえされた。

「遠慮しないで。」

にこっと男だとおもっていたころの羽雪スマイルと同じだ。

違うわけはないんだが。

「んじゃあ、今度の土曜ね。」

お嬢様ってこんなしゃべり方なのか?

ですわとか使われても困るがこっちのほうが、いいんだが。

疑問ですね。

「悪いな。」

「あ、たぶんさぁ。てか絶対、『ご両親、何をやってらっしゃいますの?』とかいわれるぜ?」

『ぜ』ってお嬢様が使っていい言葉なのか?

「だからさ~。うちの養子ってことでいいよ。親には確認済み。」

ウィンクしてきた。

「ここに入った理由いったらどうなる。」

「たぶん、君、ここにいれなくなると思う。」

どういう意味だ。

「権力ってやつは、こわいよ。」

ボソッと言う彼女だった。

「お互いのことは秘密ね。あたしは男だしあんたは女。携帯もってるの?」

当たり前のように聞いてくるな。

当たり前に庶民でも持っているものを持っていないんだから。

「ねーよ。」

「そっか。じゃあ服をあげるときに、携帯も買いにいこ?」

なんで、そんなによくしてくれるんだ。

天使かよ。

「なんで、俺にそんなによくしてくれるの?」

「堕天使だから。」

「堕天使?」

「翼が途中でやぶれて落ちた天使。」

なんで、俺が。

「高校にたまたま受かって、はいったようなもんじゃん。」

そうだが。

「あたし兄妹いないから、兄妹になってほしいみたいなね。」

「兄?弟?」

「え~。どっちだろ。」

かわいくほほ笑む。

「・・・兄でいてほしいな・・・」

と聞こえたが明らかではない。

「え?」

「いや、なんでもない。弟かな。でもな~意外と頼れそうだし。」

にっと歯を見せてわらう。

「そのうち、わかるんじゃない?」

何か長い睫の下の輝いた瞳に何か隠されているような気がした。

「カツラをかぶると、美少女なんだからさ」

ベランダの仕切りにもたれかかって彼女は言う。

「男子たちを落とせよ?」

は?

「落とすってなんだよ。」

ふふっと笑って口を開いた。

「騙そうよ。せっかくお互い異性になりきってるんだから。男子が女子からされてキュンっとなるしぐさとかわかるでしょ、男子なんだから。」

わりぃ、まったくわからん。

「わからないって顔してるなぁ。上目使いとかあるでしょ。」

「自分が言うからには、お前もやれよ。本当に入学式のときにはみとれたぜ。」

ちょっと引いたような顔をして、

「ホモ・・・か?」

そういやぁ、中学時代そんなこといわれたな。

違うけど。

クラスの女子たちが、『抱き合ってる~』とかキャーキャーいっていたが。

「違う!てか、美少女がいたら振り向かない!?」

「う~ん。みとれないよ~。」

横目で見るな!

「あたしの周りの人、あんたのこといってたよ。」

「なんてさ。」

「あの、『おろしにツインの茶髪、かわいい』って。」

そうなのか。俺のまわりはお前のことでいっぱいだったが。

「中学時代、モテたっしょ?」

どこの域からモテるってのかがわからんね。

「どこの域からがモテるんだ。」

「わからん」

即答・・・か。

「月はきれいだね。」

夜空を見上げて彼女は言う。

「この仕切りなら、飛び越えられるっしょ。カギ、あけとくから好きな時にはいってね~。女ってばれちゃったし、困ることはないっしょ。」

でもね?女の部屋にはいるってことどういう意味かわかってるの?

「俺も、開けとくから。勝手にはいっていいぞ。」

笑ながらうなずいてくれた。

別に、変なことは考えてない。

「そういや、お前。」

俺は一つ、大事なことに気が付いた。

「へ?」

首をかしげる。

「男嫌いなんだろ?」

「君は・・・大丈夫・・・」

は?なんで。

さっき、大嫌いの大でためただろう。

「なんでよ。」

「いや、仲良かった男の子とどこか似てるからさ。」

それから、ちょっと不安げな顔をして

「・・・・・・は、いな・けど。」

一部しか聞き取れなかったが、彼女の目の奥に悲しみがうつっていたから何も聞き返さなかった。

「あと、この学校は言葉、厳しいからね。あいさつは『ごきげんよう』。これは絶対。口調は別になんでもいいけど、みんな、『~ですこと。』とか『~でして。』とかが多い。」

「お前も大変な環境で暮らしてきたな。」

「でも、中学までは公立だよ?」

見えね~。

「このことは秘密だったけど。あ~もうこんな時間か。じゃあ、お休みね~。」

「あぁ、また明日。この学園の構造がいまいちだから、朝、よろしく頼むわ。」

「はいはい。」

手のひらをこちらに向けて部屋に入っていった。

俺は約束どうり、カギをかけずに部屋に入る。


あぁ。夕飯食ってなかったな。

リビングの机には何かおいてある。

気づかなかったが。

これは・・・

ナビじゃね。

この学園のナビ?!

まじか。

とりあえず、タッチ式のナビを操作する。

レストランとかあんのか。

もう、学園ってか商店街だな。

お高いんだろうな。

買えねーよって思ったが。

俺にはこれがあるじゃないか。


制服のポケットの中に入れておいたカード。

これはこの学園内ならこの3年間食糧に関しては使えるというものだ。

俺は、一応庶民だからな。

制服と一緒に送られてきたんだ。

それを持って学園内のレストランへ。

やば、カツラ・・・

とりあえず、どんな服でいこう・・・

買ったやつでいいかな。

私服でいいよね。

そうして、俺は着替えた。

コーディネートやらなんやらは俺にはまったくわからんから、マネキンのやつを買った。

花柄のひざより上の丈で白、赤、ピンクが主だ。

レースとかがついていて、春らしい服装。

靴は茶色のヒールがついたもの。

パンプスとか言ってたかな。

俺が今から行こうとしているのは、パン屋だ。

結構夜遅くまで、やっていないのだが。

今は9時だ。

11時までその店はやっているという。

俺はとりあえず、パン屋へ向かう。

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