美少年
七夜(作者)は世界の女装男子、男装女子を応援します。
執事とメイドが消えるとベランダにでた。
普通のマンションのように隣同士は見える。
雨戸のように区切れるが、別にまずいこともないので開けておこう。
片方のお隣さんはしめていて、片方はあいている。
ガラガラ。
人がでてきた。
それは、あの美少年だった。
「こんにちは。」
彼は爽やかにほほ笑む。
俺は無反応にお辞儀をした。
「お名前は?」はn
優しくて甘くて透き通った声が静かに響く
「世浪 麗輝といいます。」
また、彼はほほ笑んで
「世浪さんか。」
聞きづらいながらも、思い切って名前も聞いてみた。
「あの・・・お名前・・・は?」
「あぁ、俺は羽雪羅音。1年B組の。」
B組といえば、俺のクラスか。
「あ!お・・・私もそうです!」
やべ、俺というとこだった。
「別に、ため口でいいよ。ですとか使わないで。」
爽やかに笑うなよ。夕日にお前がぴったりなんだよ。その笑顔。
というより、俺はこいつに惚れてもない。だって、男だぜ?
「うん。」
緊張するな。そういやぁ、|United Kingdomの意味を聞くかな。
「あのさ、United Kingdomってどこの国?」
また、ほほ笑む。
「イギリスのことだよ。ちなみに、この制服、イギリス産だから。」
そうだよ。だから聞いたんだ。
「すごいね。ヨーロッパ産。」
おもわず口にだしてしまった。
「え?ふつうじゃない?」
あ~あ。事情を話すしかないか。
そんでもって、俺は・・・私はいままでの事情を全部言った。
男ということは言っていないが。
「へ~。」
「誰にも言わないでよ?」
「大丈夫。さて、お風呂でもはいってくるか。俺はだいたいここの仕切りをあけてるから、結構ここにはいるんだ。」
「じゃ、私もはいってくるね。」
ニコっと笑ってやった。
風呂・・・か。
一人部屋に選んだ理由はこれだね。
女子が一緒で、片方の女子が風呂に入ってるとき、俺はトイレをどうすりゃいい。
別々だと思ってたからさ。その辺は考えなかったけど。
バスタブに湯をはって待つ。
あっという間に張れるんだよな、こういうの。
だいたい10分くらいでお湯をとめた。
さっぱりしたところで、外の空気を吸いに、ベランダってか庭?ベランダにでる。
別に、パジャマまで金を費やしたくないからかわなかった。
男物だっていいだろ?
羽雪君の部屋のドアの音がした。
出てきたのは、濡れた羽雪君と似たような色のウェーブした髪でネグリジェといったらいいのか、お嬢様のパジャマを着て、タオルで髪の水分を吸い取るしぐさをしながらでてきた。
その顔は・・・
ん?
んん?
思わず、声を出してしまった。
「羽・・・ゆ・・・き・・・く・・・・・・ん?」
羽雪にそっくりだよ!双子?!でも、一人部屋だよね?!
その子はこちらをむいた。
「っ!」
大きく目を開いた。
「世浪さん?てか、君?!」
なぜ、ばれた!
あ・・・カツラを忘れた・・・
「なんで?!男なの!?」
と、仕切りまで迫ってくる。
俺はうなずいた。
「てか、女ぁぁぁぁ?」
地声がでてしまうっても、俺はそこまで低くない。
羽雪の声はやっぱり透き通っていて、音域でいうと、アルトみたいな声だ。
「・・・っていうか、世浪も男じゃん。」
「うっ。」
「丁度いいよ。これ、秘密にすれば、なんとかなる。そんで、このしきりを、うちとあんたのとこだけあけて、お互い、別のほうを開けとくの。」
右手の人差し指を立てていう。
「わぁったよ。」
面倒くさそうに了解した。
「でさ、なんで?俺の理由は言わなくてもわかるだろ。」
むすっとした感じでいった。
「男子嫌いを克服するため。」
は?
「あたしさ~男子、大っっっっ嫌いなの。」
ためたな、大のあと。
「そんで、もうそろそろ許嫁となんかあるみたいだから、それに備えて。」
「親、何やってんの?」
「バニカっていう洋服のブランドのオーナーとかいろいろ。」
いろいろってなに?そんだけ金持ちなの?
「へぇ・・・」
「その服、めずらしいね!なんていうの?!」
キラキラさせるな、その目を。
「スウェット・・・」
恥ずかしいな、いろんな意味で。
「動きやすそう!」
あぁ、悪かったな!
「さっきさ、自分で貧乏っつってたじゃん?」
「あぁ。」
手を後ろにして聞いてきた。
「女物の私服、あるの?」
微妙だ。一応かったが。
「2,3着・・・かな。」
俺は頭をかきながら言う。
「んじゃ~、あたしのあげる!今度の休み、大丈夫?」
なんだよ、お嬢様め。
「悪いからいいよ。」
「もっと感謝しろよ。」
ぶすっとかえされた。
「遠慮しないで。」
にこっと男だとおもっていたころの羽雪スマイルと同じだ。
違うわけはないんだが。
「んじゃあ、今度の土曜ね。」
お嬢様ってこんなしゃべり方なのか?
ですわとか使われても困るがこっちのほうが、いいんだが。
疑問ですね。
「悪いな。」
「あ、たぶんさぁ。てか絶対、『ご両親、何をやってらっしゃいますの?』とかいわれるぜ?」
『ぜ』ってお嬢様が使っていい言葉なのか?
「だからさ~。うちの養子ってことでいいよ。親には確認済み。」
ウィンクしてきた。
「ここに入った理由いったらどうなる。」
「たぶん、君、ここにいれなくなると思う。」
どういう意味だ。
「権力ってやつは、こわいよ。」
ボソッと言う彼女だった。
「お互いのことは秘密ね。あたしは男だしあんたは女。携帯もってるの?」
当たり前のように聞いてくるな。
当たり前に庶民でも持っているものを持っていないんだから。
「ねーよ。」
「そっか。じゃあ服をあげるときに、携帯も買いにいこ?」
なんで、そんなによくしてくれるんだ。
天使かよ。
「なんで、俺にそんなによくしてくれるの?」
「堕天使だから。」
「堕天使?」
「翼が途中でやぶれて落ちた天使。」
なんで、俺が。
「高校にたまたま受かって、はいったようなもんじゃん。」
そうだが。
「あたし兄妹いないから、兄妹になってほしいみたいなね。」
「兄?弟?」
「え~。どっちだろ。」
かわいくほほ笑む。
「・・・兄でいてほしいな・・・」
と聞こえたが明らかではない。
「え?」
「いや、なんでもない。弟かな。でもな~意外と頼れそうだし。」
にっと歯を見せてわらう。
「そのうち、わかるんじゃない?」
何か長い睫の下の輝いた瞳に何か隠されているような気がした。
「カツラをかぶると、美少女なんだからさ」
ベランダの仕切りにもたれかかって彼女は言う。
「男子たちを落とせよ?」
は?
「落とすってなんだよ。」
ふふっと笑って口を開いた。
「騙そうよ。せっかくお互い異性になりきってるんだから。男子が女子からされてキュンっとなるしぐさとかわかるでしょ、男子なんだから。」
わりぃ、まったくわからん。
「わからないって顔してるなぁ。上目使いとかあるでしょ。」
「自分が言うからには、お前もやれよ。本当に入学式のときにはみとれたぜ。」
ちょっと引いたような顔をして、
「ホモ・・・か?」
そういやぁ、中学時代そんなこといわれたな。
違うけど。
クラスの女子たちが、『抱き合ってる~』とかキャーキャーいっていたが。
「違う!てか、美少女がいたら振り向かない!?」
「う~ん。みとれないよ~。」
横目で見るな!
「あたしの周りの人、あんたのこといってたよ。」
「なんてさ。」
「あの、『おろしにツインの茶髪、かわいい』って。」
そうなのか。俺のまわりはお前のことでいっぱいだったが。
「中学時代、モテたっしょ?」
どこの域からモテるってのかがわからんね。
「どこの域からがモテるんだ。」
「わからん」
即答・・・か。
「月はきれいだね。」
夜空を見上げて彼女は言う。
「この仕切りなら、飛び越えられるっしょ。カギ、あけとくから好きな時にはいってね~。女ってばれちゃったし、困ることはないっしょ。」
でもね?女の部屋にはいるってことどういう意味かわかってるの?
「俺も、開けとくから。勝手にはいっていいぞ。」
笑ながらうなずいてくれた。
別に、変なことは考えてない。
「そういや、お前。」
俺は一つ、大事なことに気が付いた。
「へ?」
首をかしげる。
「男嫌いなんだろ?」
「君は・・・大丈夫・・・」
は?なんで。
さっき、大嫌いの大でためただろう。
「なんでよ。」
「いや、仲良かった男の子とどこか似てるからさ。」
それから、ちょっと不安げな顔をして
「・・・・・・は、いな・けど。」
一部しか聞き取れなかったが、彼女の目の奥に悲しみがうつっていたから何も聞き返さなかった。
「あと、この学校は言葉、厳しいからね。あいさつは『ごきげんよう』。これは絶対。口調は別になんでもいいけど、みんな、『~ですこと。』とか『~でして。』とかが多い。」
「お前も大変な環境で暮らしてきたな。」
「でも、中学までは公立だよ?」
見えね~。
「このことは秘密だったけど。あ~もうこんな時間か。じゃあ、お休みね~。」
「あぁ、また明日。この学園の構造がいまいちだから、朝、よろしく頼むわ。」
「はいはい。」
手のひらをこちらに向けて部屋に入っていった。
俺は約束どうり、カギをかけずに部屋に入る。
あぁ。夕飯食ってなかったな。
リビングの机には何かおいてある。
気づかなかったが。
これは・・・
ナビじゃね。
この学園のナビ?!
まじか。
とりあえず、タッチ式のナビを操作する。
レストランとかあんのか。
もう、学園ってか商店街だな。
お高いんだろうな。
買えねーよって思ったが。
俺にはこれがあるじゃないか。
制服のポケットの中に入れておいたカード。
これはこの学園内ならこの3年間食糧に関しては使えるというものだ。
俺は、一応庶民だからな。
制服と一緒に送られてきたんだ。
それを持って学園内のレストランへ。
やば、カツラ・・・
とりあえず、どんな服でいこう・・・
買ったやつでいいかな。
私服でいいよね。
そうして、俺は着替えた。
コーディネートやらなんやらは俺にはまったくわからんから、マネキンのやつを買った。
花柄のひざより上の丈で白、赤、ピンクが主だ。
レースとかがついていて、春らしい服装。
靴は茶色のヒールがついたもの。
パンプスとか言ってたかな。
俺が今から行こうとしているのは、パン屋だ。
結構夜遅くまで、やっていないのだが。
今は9時だ。
11時までその店はやっているという。
俺はとりあえず、パン屋へ向かう。




