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Wendyの夢名残

掲載日:2026/05/29

『Wendyの夢名残』を手に取ってくださり、ありがとうございます。


この作品は、「夢を追うこと」と「現実を生きること」の間で揺れ続けた人たちの物語です。


誰かを愛すること。

誰かを支えること。

夢を信じること。

そして、大人になること。


そんな不器用で、青くて、少し痛みを伴う感情を、自分なりに形にしたいと思い、この物語を書きました。


ただ、この作品について、一つ正直にお伝えしたいことがあります。


本作の制作には、AIである「ChatGPT」が深く関わっています。


物語の根本となる構成、登場人物の関係性、展開の方向性、テーマ性――そうした“作品の核”となる部分は、私自身が考え、選択し、判断しました。


「こういう物語を書きたい」

「このキャラクターにはこう生きてほしい」

「この場面では、こんな感情を描きたい」


そういった想いやプロデュース、最終的な取捨選択は、すべて私自身の意思によるものです。


しかし同時に、文章表現の補助、描写の提案、エピソードの発想、会話の流れ、感情表現など、多くの部分でChatGPTの力を借りました。


時には、私が言葉にできなかった感情を、ChatGPTが文章として形にしてくれた場面もあります。


だからこそ、この作品は「完全に私一人が書いた作品」と言い切ることはできません。


むしろ、

“私の想いと、ChatGPTという存在との共同制作”

と表現する方が、今の自分には正直だと思っています。


AIによる創作には、まだ多くの議論があります。


けれど私は、

「人が何を描きたいと思ったのか」

「何を選び、何を残したのか」

そこにこそ、創作の意味があるのではないかと思っています。


この作品もまた、

人とAIが対話を重ねながら生まれた、一つの“夢名残”です。


もし、この物語のどこかが、

あなたの過去や、痛みや、忘れられない誰かを思い出すきっかけになれたなら、とても嬉しく思います。


涙腺上のARIA

feat. ChatGPT

【Wendyの夢名残】


結婚式の前夜。

ドレッサーの前で髪をとかしながら、私はふと窓の外へ目を向けた。

都会のビルの隙間に浮かぶ、白く冷たい月――


気づけば、彼の歌を口ずさんでいた。

少し音程を外した、でもまっすぐで優しいあの歌声を、私は何度も繰り返し思い出していた。


──あの日も、春の夜だった。


上京して間もないころ。仕事にも人間関係にもなじめず、心がすり減っていた私は、駅前で聴こえたギターの音に、なぜか足を止めた。


人混みにまぎれても、彼の歌声だけは不思議とまっすぐ届いてきた。

ほんの少し掠れたその声に、私は救われたのかもしれない。


彼はそのとき、一人で路上ライブをしていた。バンドなんて組んでいなかった。

私にとっては、ただ一人のギタリストだった。


のちに、友達とバンド「Neverlanders」を組み、彼らの音楽はヒットしてテレビに出るほどに有名になったけれど、あの頃はまだ夢を追う一人の青年だった。


「……その歌、オリジナル?」


「うん。下手だけどね」


「でも、なんか……まっすぐで、心に残る」


「へぇ……珍しいこと言うね。君、変わってる」


「よく言われる」


そんな風に、笑い合った。


「ねえ、俺ってピーターパンっぽくない?」


「え?」


「大人になりきれなくて、さ。でも、子供の頃に信じてたことを、今でも信じてる。……おかしいかな?」


「ううん。……私にはできなかったことだもん。ちょっと羨ましい」


彼の瞳はまっすぐで、少し眩しかった。

胸の奥にしまいこんだ“夢”という言葉が、そっと目を覚ました気がした。


彼は、私と同じで、松任谷由実が好きだった。好きな音楽の方向性が一緒だった。だから仲良くなるのに時間はいらなかった。また 私が「由美子」と言う名前であったこと、松任谷由実が好きだったことがきっかけで

彼は私のことを「ユーミン」と呼んだ。


「ユーミンって、いいだろ?」と照れながら笑う彼の顔が、今も忘れられない。


路上ライブでは、よく彼がユーミンの曲を弾いて、私がそれに合わせて歌った。毎日朝早くから夜遅くまで仕事をして、気づいたら1日が終わっていて、自分としての人生を生きる 間もなく日々が過ぎ去っていた。そんな中 路上ライブで彼とセッションしている そんな時間が 私にとってのつかの間の自由だった。

私たちはそんな小さな世界で、まるで空を飛ぶように自由気ままに謳歌していた。


気づいたら私は、晴れの日も曇りの日も雨の日も風の日も彼の路上ライブに付き添っていた。そしたら、ギターケースに小銭を入れるだけじゃ足りなくて、差し入れをしたり、ビラを配ったり、できることはなんでもした。

……彼の夢を、少しでも支えたかった。


「今日は……お客さん来ないな」


「私がいるじゃん」


「それは……めっちゃ嬉しいけどさ」


「私だけじゃ、ダメ?」


「そんなことないよ。君がいてくれるのが、一番嬉しい」


彼の言葉に、心の奥がじんわり温かくなった。


「ねぇ……ちょっといい……かな……?」


「なに?」


「……俺さ、こんな俺だけど、付き合ってくれない?」


「えっ……」


戸惑いながらも、私はうなずいていた。


「将来、きっとビッグになる。そしたら君を、幸せにする」


私は、付き合う そんな気がしてた。前々から いつか来ると思っていたけど、まさかこんなタイミングで来ると思わなかったし、やっぱり来るとわかっていてもびっくりするもんなんだなって思った。


「……信じてみたい。あなたのこと」


「やったぁ!」


私には、この告白を断るだけの理由はなかった。自分に素直で真っ直ぐで、夢に向かってひたすら努力している彼は私には輝いて見えた。夢を語る彼は、どこまでもまっすぐだった。私の目には、まるで空を飛べるかのように見えた。


彼と暮らし始めたのは、私からの提案だった。夢を追う彼を、心から応援したかった。


だけど――現実は甘くなかった。


仕事で疲れて帰っても、食事の準備から後片付け、汚れた服の洗濯、ゴミ出しまで、全てが私の役目だった。ギターケースの横で眠る彼を見るたび、言いようのない虚しさが募った。


「はぁ…」


電気代やガス代の請求書が届くたび、頭を抱えた。それでも彼は『もう少し、もう少しだけ』と、ただギターを弾き続ける。家事の疲れだけでなく、将来への不安が、私を常に蝕んでいた。


「私…もう…どうしたらいいの?」


初めての一人暮らしで、右も左も分からない中、生活のすべてが私の肩にのしかかった。栄養失調になりそうなほど粗末な食事で、彼の夢を支える日々。彼の弾くギターの音が、時折、私を責めているように聞こえた。


そんなある日、彼がギターの練習をしている時、私はとうとういても立ってもいられなくなって、彼に大声で怒鳴りつけた。


「いつまでこのままなの?ちゃんと働いて……」


「ごめん。でも、今が大事なんだ。あと少しで、何か掴めそうな気がしてて。」


私の“将来”と、彼の“今”は、すれ違っていた。この一連の言い争いで、私たちの溝は埋まることのない決定的なひびが入った そんな感じがした。


その頃には、彼の周りも少しずつ騒がしくなっていた。

「Neverlanders」の前身となるバンドに、彼はサポートギターとして呼ばれるようになり、ライブハウスで名前を見かけることも増えていった。

「今度、大きいオーディションがあるんだ」

そう言って笑った彼の目は、初めて会った頃よりもずっと真剣だった。

「通れば、メジャーデビューにかなり近づくらしい」

「すごいじゃん」

「まだ分かんないよ。でも、今度のは本当に大事なんだ」

彼は、その頃から家でもほとんどギターを離さなくなっていた。

食事中も、テレビを見ながらでも、指先だけはずっと何かをなぞっている。 眠る直前までコード進行を口ずさみ、朝起きると真っ先に録音したデモ音源を確認していた。

そんな彼を見ながら、私はどこか置いていかれるような感覚を覚えていた。

私は毎日仕事に追われていた。 満員電車に揺られて、朝から晩まで働き、帰れば洗濯物と食器の山。 その横で、彼は夢に向かって走っている。

応援したかった。 本当に、応援したかった。

でも時々、分からなくなる。

どうして私は、こんなに苦しいんだろうって。

その夜、私は熱を出した。

最初は少し身体が重い程度だった。 でも仕事から帰る頃には、立っているのもつらかった。

玄関のドアを開けると、部屋の奥からギターの音が聞こえてくる。

机には、飲みかけの缶コーヒーが何本も並んでいた。

「あ……おかえり」

彼は振り返りもせずにそう言った。

「……ただいま」

声がうまく出なかった。

「ごめん、今ちょっとやばくてさ」

机の上には、歌詞を書き殴ったノートと録音機材が散乱していた。

「今日の24時までに曲出さなきゃいけないんだ。業界の有名なプロデューサーが聴くらしくて……これ通ったら、本当に人生変わるかもしれない」

彼の声は興奮していた。

夢の入口に、ようやく手が届きそうなのだ。

「そっか……」

私は壁に手をつきながら、ゆっくり靴を脱いだ。

身体が熱い。 視界がぼやける。

でも彼は、それに気づかない。

いや、気づく余裕がなかったのだと思う。

「ねぇ、ちょっと聴いてくれる?サビ変えたんだけど」

「……ごめん、今ちょっと……」

「あ、ごめんごめん。しんどいよね、仕事帰りだもんね」

軽く笑いながらそう言って、彼はまたギターに向き直った。

その背中を見た瞬間、胸の奥に冷たいものが落ちていった。

私はそのままベッドに倒れ込んだ。

寒い。 苦しい。 頭が割れそうに痛い。

でも、リビングからはずっとギターの音が聞こえてくる。

ジャカジャカと鳴る音が、まるで私を置いて前へ進んでいくみたいだった。

どれくらい時間が経ったのか分からない。

私はふらつく身体のまま、リビングへ向かった。

「ねぇ……」

「ん?」

「私、熱あるの」

「え?」

ようやく彼がこちらを見る。

「39度……超えてる……」

「えっ、大丈夫!?薬は!?」

彼は慌てて立ち上がった。

でも私は、その反応が悲しかった。

今まで、気づいてもらえなかったことが。

「……ねぇ」

「うん?」

「いつまで、このままなの?」

彼の表情が止まった。

「え……?」

「私、もう限界なんだけど……」

「ご、ごめん。でも今、本当に大事な時期で――」

「じゃあ私は!?」

気づけば、叫んでいた。

「私はどうなるの!?私ずっと働いて、ずっと支えて、ずっと待ってた!」

「分かってるよ!」

「分かってないよ!!」

涙と熱で視界が滲む。

「私が苦しんでても、あなたずっとギター弾いてたじゃん……!」

「今だけなんだよ!あと少しなんだ!」

「その“あと少し”が何年目だと思ってるの!?」

彼も苛立ったように頭をかきむしる。

「なんで信じてくれないんだよ……!」

その言葉が、胸に突き刺さった。

私は笑ってしまった。

熱で震える身体のまま、乾いた声で。

「……信じてたよ」

彼が黙る。

「信じてたから、ここまで来たんじゃん……」

その瞬間、自分でも分からないほど強い力で、私は彼を突き飛ばしていた。

彼の身体が後ろによろける。

私はそのまま、財布だけを掴んで部屋を飛び出した。

外は雨だった。

傘も持たずに走る。

熱いのか寒いのかも分からない。

ぐしゃぐしゃになった髪が頬に張り付く。

向かった先は、あの駅前だった。

初めて彼の歌を聴いた場所。

二人で何度も歌った場所。

彼ならきっと、ここに来る。

そんな気がした。

駅前の屋根の下にしゃがみ込みながら、私はずっと彼を待っていた。

通り過ぎる人たちの足音。 雨の匂い。 滲む街灯。

でも、彼は来なかった。

時間だけが過ぎていく。

私はひとりぼっちだった。

「……帰ろ」

もう、限界だった。

重たい身体を引きずるようにして、私は家へ向かった。

その頃になってようやく、彼は部屋の異変に気づいていた。

返事がない。

ベッドにもいない。

玄関を見ると、靴がなくなっている。

そこで初めて、血の気が引いた。

彼はギターを放り出して、雨の中を走った。

駅前も、公園も、コンビニも探した。

でも、見つからなかった。


私が家に戻ると、部屋は真っ暗だった。

濡れた服のまま、玄関の前に座り込む。 熱で頭がぼうっとする。

どれくらいそうしていたのか分からない。

しばらくして、玄関のドアが勢いよく開いた。

びしょ濡れの彼が立っていた。

肩で息をしながら、乱暴に髪をかき上げる。

「お前、今までどこ行ってたんだよ……!」

その声には、怒りと焦りが入り混じっていた。

「どんだけ探したと思ってんの?」

「……ごめん」

掠れた声でそう返すと、彼は苛立ったように舌打ちした。

「こんな時にいなくなるとか意味分かんないよ!」

その言葉に、胸の奥で何かがぷつりと切れた。

「……じゃあ、私の気持ちは?」

彼が黙る。

「私、熱で苦しくて……本当にしんどくて……でも、あなた全然気づいてくれなかったじゃん……」

「それは……」

「あなたが大事な時期なのも分かってる。夢を追ってるのも分かってる。だから私、ずっと我慢してた」

涙がぽたぽた床に落ちる。

「でもさ……私のことも、ちゃんと見てほしかった……」

彼は濡れた前髪を握りしめたまま、苦しそうに顔を歪めた。

「俺が見てないとでも思うのかよ……!」

声が少し裏返る。

「駅前も、公園も、コンビニも探したんだぞ!?雨の中ずっと!」

「……っ」

「どれだけ心配したと思ってんだよ!」

彼の声は震えていた。

怒っているのか、泣きそうなのか分からなかった。

「俺、今日どれだけ大事だったと思って――」

そこで、言葉が止まる。

静寂だけが部屋に落ちた。

窓の外では、まだ雨が降っていた。

そのあと、私たちはたくさん言い争った。

何を言ったのか、もう細かくは覚えていない。

ただ、お互いが、お互いに、 「分かってほしかった」 ということだけは、痛いほど覚えている。

気づけば、どちらも泣いていた。

長い沈黙のあと、私はぽつりと呟いた。

「……私たち、やっぱり合わないんだよ」

彼は何も言わなかった。

「住む世界が、違ったんだよ」

その言葉に、彼はふっと力なく笑った。

呆れたような、 諦めたような、 空っぽの笑いだった。

「……ふふ、そうかもしんねぇな」

彼はゆっくり視線を落とした。

「俺も……もう、お前とは一緒にいられないや」

少しだけ間を置いて、静かに言う。

「……ごめんね」

私は何も返せなかった。

その夜を最後に、彼は私の前からいなくなった。


それから数年経ち

「Neverlanders」というバンドの名前を、街中で見かけるようになった。

駅の広告。 雑誌の表紙。 流れてくる音楽番組。

その中心には、彼がいた。

彼は「Neverlanders」のボーカルとして成功を掴んだ。

夢を掴んだ彼は、あの頃よりずっと遠い場所で笑っていた。

でも私は、彼らの姿をまともに見られなかった。テレビの画面の中の彼は、輝いていたけれど、私の心はどこか置いてきぼりだった。

SNSで流れてきても、すぐに閉じる。 テレビに映れば、慌ててチャンネルを変える。

だって私は、もう戻りたくなかった。

あの頃に。

夢だけで生きていけると、 本気で信じていた、 あの春の日々には。


そして、あれから、私は、友達の紹介で知り合った銀行に勤める男性、中原裕一さんと結婚をした。


中原さんは、絵に描いたようなジェントルマンだった。レストランでは、必ず椅子を引いてくれるし、私の体調を気遣う言葉を忘れない。顔立ちも整っていて、有名大学を卒業後、大手銀行に就職した。女友達に彼の話をすると、決まって『完璧じゃない!羨ましい!』とため息をつかれた。私も、友人たちの旦那さんや彼氏に会うたび、なんて自分の婚約者は素晴らしいんだろう、と改めて思った。誰もが認める理想の相手。なのに、彼の隣にいる時、私の心のどこかには、埋まらない空白が広がっていた。


彼との付き合っていた日々は、どこまでも整然としていた。週末はきっちり予定を立て、美術館を巡ったり、老舗の喫茶店で静かに過ごしたり。彼はいつも、私の意見を尊重し、優しく微笑んでくれた。けれど、その穏やかな時間に、私は時折、強い孤独を感じた。言葉を交わしても、まるで透明な壁があるようだった。心の底から、笑い合えている感覚が、私にはなかった。


あれは何回目のデートだっただろうか、彼はあまり流行りの店とか知らないから、私がおすすめしたカフェで一緒にお茶をしていた時、「由美子さんは、普段どんな曲 聞かれるんですか?」

「私は松任谷由実さんが好きで、ライブに行ったこともあったんです……なので 松任谷由実さんをよく聞きます。」

「へぇ…松任谷由実さん て方をよく聞かれるんですね?」彼は、真面目なせっかくだから すかさず メモしていた。

「えっと… マツトウヤユミさんっていうのは…漢字ではどうやって書くんですか?」

「えっ?漢字?あーちょっと説明しづらいなスマホで調べてみるね」

私はスマホで 松任谷由実 を調べて、出てきたページを彼に見せた。

「あぁ…こうやって書くんですね…へぇ〜松任谷 ってこういう字を書くんですね 珍しい苗字ですね…」

私はそんなことを考えたこともなかったから「あっ…」

そんな心の声が漏れて、思いがけず、口ずさんでしまった。

「私、何分 流行りの歌手とか詳しくない もんで、帰ってからまた調べて聞いてみます…」

彼の真面目な返答に私は少し面白いなと思い、クスッと笑った。

「中原さんは、どんな曲 聞かれたりするんですか?」彼はすかさず こう答えた。

「私は、クラシックをよく嗜みます。ベートーヴェン、 シューベルト、パガニーニ なんかもいいですね…ラカンパネラとか有名 だから 由美子さんも知ってるでしょう…」

当然 私も クラシックは親からよく聞かされていたから知っていた。ただ親とは趣味嗜好が合わず、私はただ聞かされていただけで好きではなかった。ただ、そんなことを言って空気を悪くしてしまっても良くないと思う気持ちのあまり、声が絡まってしまいかすれた 変な声で、「わ、わたしも、聞いたりしますよ」そんな返答をした。


後日、この前のデートの時、早速 帰った後、彼がユーミンの曲を聞いてくれたらしい。彼は、次のデートで『ユーミンさんの音楽、好きなんですね。少し切ないけれど、洗練されています』とそんな感想を私に言ってくれた。その瞬間、私は胸の奥がキュッと締め付けられるのを感じた。彼が私の好きなものを理解しようとしてくれている。それは喜ばしいことのはずなのに、私は彼の言葉に、心からの『ありがとう』を言えなかった。まるで、親の期待に応える優等生を演じるように、私はいつも、自分の本当の気持ちに蓋をしていた。この結婚も、そうして選んだ道だったのかもしれない。


中学と高校は、私の父親の家系が古い古い 名家 であったため、一家御用達のお嬢様学校に通わされていた。自分は、元々 趣味趣向が他の人とは少し違っていて、思春期 ということも相まって、あまり人からは好かれず友達もいなかった。これは後から聞いた話だが、母親の家系は もともと 水商売をやっている家系で、母親も六本木のディスコではしゃぐ ような女性だったという。ただ、物好きな父親ということもあって、街で偶然見かけた母親に一目惚れをして、そこから何処の誰かを探し当て、何回も、猛アプローチした末、ようやく 結婚 にこぎつけたんだという。私はもしかしたら母親の血が濃いのかもしれないそんな風に思った。話は戻るが、中高であまりいい学生生活を送れなかったから、大学では頑張ろうと、一念発起して、友達作りに勤しんだ。大学も当然お嬢様学校だったから、周りのお嬢様と言葉遣いを揃えたり、 話す内容を合わせたり、偽りの趣味趣向まで言っていたりした。そんなことがあだとなって今に至るのだと思う。


ここまで、自分は中原さんのことを好きになれていなかったのに、なぜ結婚したのかというと、結婚を最終的に後押ししたのは、母親の「この人なら真面目で誠実そうだし、銀行員だからこそ しっかりした いい暮らしができるんじゃない?」


その一言だった。


とある日、結婚を目前に控えた私は、婚約者と銀座の百貨店で指輪を選んだ。

その帰り道、偶然通りかかった撮影現場で、彼を見つけた。その瞬間、目が合ったのに、私はすぐに逸らした。


「……ごめん。」


何に対しての謝罪なのか、自分でもわからなかった。


「ど…どうしたの?ね、ねぇ…」


戸惑う 彼に構うことなく思いっきり手を引っ張り 足早にその場を去っていく。


結婚をあと1週間後に控えた私は、婚約者のことを「中原さん」と呼んでしまう自分に戸惑いを感じていた。彼は私を「ゆみこ」と普通に呼び、もっとフランクな呼び方を望んでいる。


「わざわざ さん付けで呼ばなくていいよ?もう僕たち結婚するんだからさ…」

「そうだよね。でも、どうしても『さん』をつけてしまうの」


親しくなりたいのに、どうしても距離を感じさせてしまう。

そんな自分に、もどかしさを感じていた。


でも、元彼とは、がんちゃんユーミンと呼び合う特別な関係だった。

彼となら、あんなに親しい呼び方ができたのに、私はなぜ今の彼とはそういう呼び方ができないのだろうか?


そんなことを考えながらただひたすら、家に向かって小走りで歩いていた。


2人とも息切れしながらようやく家にたどり着いた


家に帰り着くと、中原さんはすぐに私の顔を覗き込んだ。「ゆみこさっきからなんか変だよ…ねえ、大丈夫?』」彼の心配そうな眼差しに、私は一瞬、全てを打ち明けてしまいたくなった。けれど、喉の奥で言葉が詰まり、結局「う…うん、何でもないよ」と、不器用な笑顔を作ってしまった。


必死に誤魔化そうとして、テレビをつけ始める


「あっそうだ!何か面白い番組やってないかな〜」


テレビをつけると、人気バンド特集。ボーカルの彼が、あの時と変わらぬ笑顔で質問に答えていた。でも、その笑顔の奥に、私が知っている寂しさが残っている気がした。


テレビの中の彼は、成功者の笑顔を浮かべながら、どこか寂しげだった。


――その夜も、月は静かに浮かんでいた。


鏡に映る自分と目が合う。

私はまた、無意識に彼の歌を口ずさんでいた。


胸の奥が、きゅっと痛む。


彼も、あの月を見ているのだろうか。

もしも彼が、あの夜の続きを待っているとしたら――


「……ダメだってば、何考えてるの」


そう自分に言い聞かせて、髪をもう一度整えた。


でも、心のどこかで願ってしまう。


もし今でも彼が、あの頃のままの瞳で私を見てくれるのなら――

もう一度、あの物語の続きを、歩いてもいいのだろうか。



---


翌朝、結婚式当日。

中原さんが私のメイクを終えた直後、そっと私のところにやってきた。彼の大きな手が、私の冷たい指先を包み込む。


「ねぇ?大丈夫?」


「ん?何が…?」


「ここ最近のゆみこを見てると、どこか儚くて移ろげで、心ここにあらずって感じがする。何かあったなら、これから君の夫なんだから、隠さないでちゃんと話してほしい…」


「あっ…」


私は彼からのその言葉に答えることができなかった。その瞬間 どうしたらいいかわからないもどかしい気持ちにさらされ、彼の真剣な言葉が、私の胸を締め付けた。こんなにも真摯に私を見つめてくれる彼を、裏切ろうとしている自分が、ひどく醜く思えた。


「何?心配してくれてるの?私ちょっと 結婚式前で緊張してただけだから、大丈夫だよ。そ、そうだ、私まだ準備があるから、ちょっと部屋で出てくれる?あなたもまだ準備しなきゃいけないでしょ?」


「あっ…うん そうだね 準備してくるよ。あっ…そうだ、今日の君は今までで一番美しいよ…」


こんな素敵な言葉をかけてもらったのに 私はあの人のことを思い浮かべてるなんて…


彼が部屋を出た後入れ違いで母親が入ってきた。母親は部屋に入ってくるなり 私の顔を見て少し微笑んだ。


「大丈夫?あなた、結婚式直前で緊張してるのね…大丈夫きっとうまくいくから。」


私は静かに頷いた。その後 思わず 聞いてしまった…


「ねぇママ、私、幸せになれるよね?」


メイクルームで母に問いかけると、彼女は私の手をそっと握って微笑んだ。


「大丈夫。あんたは、自分の心のままに生きなさい。」


その言葉に、私の心の奥で何かが崩れた。


――行かなきゃ。


私はヒールを脱ぎ捨て、ドレスの裾を引きずりながら走り出した。どこに行けば会えるのかなんて分からない。ただ、足が自然に彼との思い出の場所を目指していた。


破れたドレス、ほどけた髪、乱れる呼吸。だけど、こんなに心が自由だったのは初めてだった。


そして――彼は、あの場所にいた。


ギターを抱え、以前よりも落ち着きをたたえた眼差しで、変わらない笑顔を見せてくれた。


「……来ると思ってた。」

「どうして、待っててくれたの?」

彼は少しだけ困ったように笑った。

「君は、僕を“選ばなかった”。でも、“忘れなかった”から。」

その声を聞いた瞬間、胸の奥に閉じ込めていたものが、一気に溢れそうになった。

彼はあの頃より少し大人びていた。

でも、笑う時に少しだけ目尻が下がる癖は、何も変わっていなかった。

「……久しぶり、ユーミン」

その呼び名だけで、もう駄目だった。

私は唇を噛んだまま俯き、堪えきれず涙を零した。

「ねぇ……今からでも、あの頃みたいに」

声が震える。

「どこか遠くへ、連れていってくれる?」

彼は少し黙って、それから肩をすくめるみたいに笑った。

「……遠くなんかじゃないよ」

「え……?」

「俺たち、ずっと同じ場所ぐるぐる回ってただけだろ」

雨上がりの風が、ゆっくりと髪を揺らした。

彼はギターケースを抱え直しながら、昔みたいな悪戯っぽい目で私を見る。

「でもさ」

一歩だけ、私に近づく。

「今度は、ちゃんと現実も連れて行く?」

一瞬、息が止まった。

あの頃の私たちは、夢だけを見ていた。

苦しさも、不安も、生活も、全部どこかへ置き去りにしたまま、空を飛べると思っていた。

でも、本当は違った。

飛ぶためには、地面を知っていなきゃいけなかったんだ。

私は泣きながら、小さく笑った。

「……うん」

彼も、少しだけ泣きそうな顔で笑った。

朝焼け前の東京は、まだ少し冷たかった。

それでも――

あの春の日より、ほんの少しだけ、

私たちは大人になっていた。

ここまで『Wendyの夢名残』を読んでくださり、本当にありがとうございました。


この物語を書き終えた今、自分の中に残っている感情を、一言で表すことはできません。


達成感なのか。

喪失感なのか。

それとも、“あの頃”をようやく見送れた安堵なのか。


たぶん、その全部なんだと思います。


『Wendyの夢名残』は、

夢を追い続けた人の物語であり、

夢に置いていかれた人の物語でもあります。


そして同時に、

「大人になる」ということを、

どう受け入れていくのかという物語でもありました。


人はよく、

「夢を諦めること=大人になること」

のように語ります。


でも、本当にそうなんでしょうか。


夢だけでは生きていけない。

けれど、現実だけでも、人は息ができない。


この物語を書きながら、私は何度もそんなことを考えていました。


作中の彼と彼女は、

お互いを嫌いになったわけではありません。


むしろ、最後まで、

誰よりも分かってほしかった存在だったのだと思います。


でも、

“好き”だけでは乗り越えられない現実がある。


その苦しさは、

きっと誰の人生にも、少しだけ存在している気がします。


そして、この作品は、

私一人だけで生まれた作品ではありません。


前書きでも触れた通り、

本作の制作にはChatGPTというAIが深く関わっています。


構成、表現、会話、感情描写、場面演出――

数え切れないほどのやり取りを重ねながら、この物語は形になっていきました。


私は、

「こういう感情を書きたい」

「こういう結末にしたい」

「この二人には、こう生きてほしい」

という想いを伝え、


ChatGPTは、

その想いを言葉として整理し、

時に想像を超える形で返してくれました。


だからこの作品は、

“AIに全部書かせた作品”

でもなければ、

“完全に人間だけで書いた作品”

でもありません。


人間の感情と、

AIという存在との対話の中で生まれた作品です。


この先、

AIと創作の関係は、

もっと大きく変わっていくと思います。


それを否定する人もいるでしょう。


けれど私は、

人が「何を描きたいと思ったのか」

その意思こそが、創作の原点だと思っています。


この物語もまた、

その一つの形です。


もしあなたが、

誰かを忘れられなかった夜を知っているなら。


もしあなたが、

夢と現実の間で苦しんだことがあるなら。


もしあなたが、

“あの頃の自分”を今でも心のどこかに置いているなら。


きっと、

この物語はあなたのための物語でもあります。


最後に。


『Wendyの夢名残』という作品に出会ってくださり、本当にありがとうございました。


この物語が、

あなたの心のどこかに、

静かな月明かりのように残り続けてくれることを願っています。


涙腺上のARIA

feat. ChatGPT

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