36.元英雄、領主にされる
「本当に広いな……」
子どもたちに案内されるまま、中に入ると魔王城の広さに驚いた。
本当に王都の王城と変わらないほどの大きさだ。
「ふふふ、ここが私たちの新居かしら?」
「俺たちもこっちに引っ越そうか」
なぜかハルトとアーシャは楽しそうにしているが、王城を放ったらかしにするつもりだろうか。
「あっ、ここにヴォルフ様の石像がありますわよ」
「さすが師匠だ!」
中央のエントランスには俺の銅像が立っていた。
そこには〝我らの父〟と書かれている。
まるで俺が魔王たちを育てたみたいだ。
いや、実際に育てているのは変わりはないか。
「あっ、おかえり!」
銅像を見ていると、階段からマシュマロが降りてきた。
――パチン!
一瞬、マシュマロの魔力が広がったのを感じた。
「おい……今何――」
「師匠、何なんですか!」
「あのハレンチな女性はどこの誰ですか!」
ハルトとアーシャが俺に詰め寄ってくる。
何が起きたのか疑問に思ったが、ハレンチという言葉で思い出した。
きっとさっき魔力を広げたのは、魅了魔法を使うためだろう。
きっと今のマシュマロはあのエッチな見た目で可愛らしいマシュマロちゃんに見えているはずだ。
「マシュマロだよ?」
マオが首を傾げていたから、俺たちにはいつものマシュマロにしか見えないようにコントロールしたのだろう。
本当にもったいないと思うほど魔法の才能を無駄遣いしているな。
「あなたのためにお家を作ったわ」
俺に近づいてくると、大きな雄っぱいを押し付けてくる。
「いくらなんでもデカすぎだろ」
俺はマシュマロを少し遠ざける。
城も大きいが雄っぱいも大きい。
たぶん他の人には女性に見えても、俺には巨体な男にしか見えてないからな。
「ヴォルフ様は大きな胸が好きだったのね……」
「師匠直伝の筋トレの回数を増やすしかないか」
どうやらマシュマロを俺の妻だと勘違いしてそうだ。
俺はそのまま訂正するわけでもなく、ハルトとアーシャに向かって微笑んでおいた。
これで俺と結婚したいって諦めるかもしれない。
「それでこの方たちは……?」
「ああ、この国の国王と王妃だな」
俺の言葉にマシュマロの顔は険しくなる。
国王と王妃って言ったら、貴族の親分みたいなものだ。
「あなたたちは何のために来たのかしら?」
マオたちがグリード男爵家にされたことを知ったマシュマロはかなり恐ろしかったからな。
きっと今もそれを思い出しているのだろう。
「俺の手違いで――」
「手違いってそもそもこの人たちがしっかり管理できていないのが問題ですよね?」
マシュマロはハルトに詰め寄る。
雄っぱいを押し当てられて、ハルトは鼻下を伸ばしているがそいつは男だからな。
「詳しい話を聞いてもよろしいですか?」
アーシャはハルトとマシュマロの間に手を入れる。
なんやかんやでアーシャはハルトのことを大切に思っているのだろう。
アーシャのハルトを見る目が鬼ように怖い。
ブラックドラゴンに睨まれた方が安心する勢いだ。
「子どもたちやヴォルフがどんな目に遭ったのか知っていてここに来ているのかしら?」
「それは……」
俺も二人には伝えていなかった。
そもそも悪いのはグリード男爵家だからな。
「俺から伝えるよ」
なぜ俺が不敬罪になったのか、少しばかり尾鰭背鰭を付けて話した。
子どもが傷つけられて、黙っている親はいないからな。
「うぅ……そんなことがあったなんて……」
「今すぐにグリード男爵家を死刑にしよう!」
「それがいいですわ。国民の前でヴォルフ様が偉大なことを知ってもらうチャンスだわ」
俺に好意を抱いているのもあり、言ってることが過激すぎる。
そんなことをしたら、俺が国王と王妃を操っているように見えるだろう。
それに過剰な罰は子どもたちに悪影響になる。
「いくら何でもやりすぎだ」
「くっ……師匠はやっぱり寛大な心をお持ちだ」
「さすがですわね」
なぜか俺の都合よく解釈され、ますます崇められてしまう。
何もしてないのに、本当に操っているみたいだ。
常識的な判断をしただけなのに、彼らの目には慈悲深い聖人にでも見えているらしい。
「師匠のご威光を国中に知らしめるべきです!」
「そうですわ。処刑でなくとも、せめて財産没収くらいは……!」
話を収めようとしているのに、火に油を注いでいる気がする。
「お前ら俺は――」
「それだ! この領地を師匠に託しましょう」
俺は額に手を当て、深くため息をついた。
ここまで暴走すると、こいつらは止められない。
何かを思いついたと思ったら、俺を領主にすると言ってきた。
今まで土地を与えられるのも断り、面倒なことを避けてきた。
さすがに今でも引き受けるつもりもない。
「それはいいですね!」
「パパかっこいい!」
「とーちょんなら似合うね!」
「ボスがボスになるのか……!」
俺とは反対に家族が受け入れていた。
それに子どもたちに褒められたら、少し心が動いてしまう。
「パパのかっこいいしゅがたみたいな」
「オラも!」
「オレも!」
いつの間にハルトとアーシャは子どもたちを手懐けたのだろう。
子どもにそんなこと言われたら、断る理由はない。
父は子どもにかっこいい姿を見せたいからな。
「わかった。お前たちがどうにかできたらな」
いくら何でもすぐにはグリード男爵家から俺に領主を変えることはできない。
決定権は国王にあるが、勝手なことをしたら派閥問題で貴族間の争いになるからな。
「よし、これで心置きなくグリード男爵家の爵位剥奪ができるぞ」
「貴族の情報は隅から隅まで探れって言ったのはヴォルフ様ですからね?」
どういうことだ?
俺は貴族の争いごとに巻き込まれるのが嫌だったため、情報で揺さぶって手を引かせるようにしてきた。
それをハルトやアーシャには教えていたけど……。
「まさか!?」
「ははは、ヴォルフ様は以前より優しくなりましたね。グリード男爵家なんて、いつでも爵位剥奪できる準備はしていますよ」
「領地を継げる人をずっと探していたんです」
俺はまんまとハメられてしまった。
元々何かしら功績を上げた人と領主を交代させるつもりだったのだろう。
男爵って成果がなければ、すぐに降爵できるからね。
俺なんて功績がありすぎて、他の貴族も断らないと思っていそうだ。
「あっ、ちなみに。他の領地もいくつか継ぎ――」
「ません!!」
これから俺は忙しくなるのだろう。
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