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35.元英雄、娘を取られる

「師匠、やっぱり自宅はここだったんですね」

「立派な禍々しいお城ですわね」

「ああ……そうだな」


 周囲は黒鉄色の防壁に囲まれ、中央には黒を基調とした城が建っている。

 俺はその城を知っていた。


「魔王城がなんであるんだ……」


 ゲームで見ていた魔王城と作りがそっくりだ。

 俺たちは少しずつ近づく。

 石造りの城門は重々しく閉ざされており、その両脇には大きな犬の彫刻が皿を咥えてお座りしている。

 アンバランスな石像に俺は笑いが止まらない。


「くくく、ひじきともずくか」


 普通は悪魔の石像やガーゴイルが入り口にいるのが当たり前だが、ひじきともずくの犬姿の石像なら、ここは確実に俺たちの家だろう。

 まさに看板犬ってことだろう。

 どうやって中に入ろうか迷っていると、城の方から声が聞こえてきた。


「パパー!」

「とーちゃん!」

「ボス!」


 走ってきたのは我が子たちだ。

 自動で扉が開くと、勢いよく抱きついてきた。


「お留守番できたか?」

「「「うん!」」」


 どうやら心配していた留守番もどうにかなったようだ。


「師匠……この方たちは……」

「ああ、俺の娘と息子だな」


 俺は我が子を紹介する。

 ただ、ハルトとアーシャはその場で震えて反応がない。


「どうし――」

「師匠の子ども!?」

「ヴォルフ様に子どもですって!?」


 思った通りの反応が返ってきた。

 やっぱりそういう反応になるのは仕方ない。

 今まで誰かと付き合っているって話したことがなかったからな。

 二人から見ても、急に子どもがいるって感覚だろう。

 そもそもこの二人に言ったら、何をしでかすかわからない。


「俺と結婚する約束はどうなったんですか!」

「ヴォルフ様……それは裏切り行為ですわ!」


 ほら、また始まった。

 俺が冒険者を指導した時も似たような感じだったからな。


「いや、俺は約束した覚えはないぞ」


 ここははっきり言っておかないと、また変な誤解をするかもしれない。

 子どもがいるとわかれば、こいつらも俺に対して変な憧れもなくなるだろう。


「いや、まだ夫の枠は空いてるのか」

「まだ、側室は募集しているわよね?」


 ん? なぜそういう考えになるんだ?

 これでもこの国の王と王妃なんだよな……。

 呆れてため息が出てくる。


「ほら、自己紹介するんだぞ」


 抱きついている子どもたちの背中をそっと押す。


「マオ!」

「ひじき!」

「もずく!」


 マオが真ん中で手を腰に当て、両隣にいるオルトロスのひじきともずくは片腕を斜め上に出してポーズを決めていた。

 いつのまに練習していたのだろうか。

 まるで戦隊モノの決めポーズだ。


「練習したのか?」

「「「うん!」」」


 我が子は本当に可愛いな。

 俺は優しく頭を撫でると、嬉しそうにニコニコと笑っていた。


「俺たちも負けてられないな。俺は国王のハルト!」

「私は王妃のアーシャよ!」


 ハルトとアーシャも負け時と決めポーズをする。

 やはりここでも負けず嫌いが発動している。

 いや、俺をチラチラと見ているから、何か意図があるのだろう。

 俺は見て見ぬふりをする。


「くっ……俺も撫でられたかったぞ」

「相変わらず私たちには冷たいわね。まぁ、それも好みよ」


 昔は素直で可愛かったのに、大人になったら何でここまで変わるのだろう。

 子どもたちには、元気にこのまま大きくなってもらいたい。


「あっ……あの……」


 一方、ヴォルトはモジモジとしながら、マオに近づいた。

 ヴォルトは思ったよりも緊張しやすいのかもしれない。

 周りにいる貴族の子どもたちは、厳しく教育されているから、マオたちみたいな子はいないからな。

 ハルトとアーシャに出会った時も、こんな感じだった。


「よろちく!」


 そんなヴォルトとは正反対にマオは手を出した。


「あっ……」

「ほりゃ!」


 マオはヴォルトの手を掴むと、強く握っていた。

 力の調整ができているのか気になったが、ヴォルトは痛がった顔をしていないから問題ないだろう。

 むしろ少し恥ずかしそうに視線を逸らしていた。


「あっ、落ちたな」

「私がヴォルフ様に助けられた時と同じ顔をしてますわね」


 ハルトとアーシャはヴォルトの顔を見てニヤニヤとしていた。

 落ちたってどういうことだ……?

 俺は再びヴォルトの顔を見ると、顔を赤く染め一心に見つめていた。

 まさかマオに惚れたってことか……。


「あー、複雑だな」


 娘に男を紹介される父ってこんな気持ちなんだろう。

 何というのか……喜んであげたいけど、霧がかかっているようなモヤモヤした感覚だ。

 幸いなのはマオが特に気にしていなさそうなところだな。


「パパいこ!」


 そんなことを知らないマオはすぐに手を離すと、俺の手を引いていく。


 ああ、ヴォルトよ。

 まだマオの隣は俺の特等席だからな。

お読み頂き、ありがとうございます。

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