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33.元英雄、捕まった理由を知る

 俺はそのまま騎士に連れて行かれると、気づいた時には鉄格子の牢屋に入れられていた。

 まるで本当に犯罪者になったようだ。


「おじさん、何か悪いことしたの?」

「いや、そんなつもりはないんだけどな」


 鉄格子の前でヴォルトは座り、俺をジーッと見つめている。

 騎士に見張っているようにって言われたらしい。

 貴族の子どもに見張りを任せるなんて、あの騎士にはちゃんとした教育が必要だな。


「僕がお父様に言って、釈放してもらいましょうか?」

「それは貴族としてやってはいけない判断だぞ。もし俺が極悪人だったらどうするんだ?」

「すみません」


 きっと俺が悪い人には見えないから言った言葉だろうが、ヴォルトは自分なりに考えて謝っていた。

 見た目はただのおっさんだしな。


――ガチャ!


「ここにヴォルフガング様がいるんだな?」

「はい!」


 扉が開く音が聞こえてると、誰かが話している声が聞こえてくる。

 懐かしく感じるとともに、身の危険を思い出した。


「ヴォルフさまぁー!」

「おい、俺が先だぞ!」

「なによ! ここは妊婦の私に譲りなさい!」


 言い争った声に俺はため息をつく。

 やっぱりあいつらで間違いはないだろう。


「おい、ハルトとアーシャはいつまで喧嘩してるんだ?」


 俺は少しずつ近づいてきているあいつらに声をかける。


「師匠!」

「ヴォルフ様!」


 俺を呼ぶ声とともに、急いで走ってくるのがわかった。

 相変わらず尻尾を振っている犬みたいだな。


「そういえば……おい、アーシャ! お前、妊婦って言ってただろ!」

「そんなこと気にしていられないわよ!」


 すぐ走るのをやめさせるが、俺の言うことを聞く気がないようだ。

 俺がいなくなってから10年は経っているからな。

 ただ、妊婦が全力で走ってくるって、明らかに子どもに対して良くない気がする。

 親となった今だからこそ、この世界の妊婦に対しての認識の低さに驚きだ


「おじさんはお父様(・・・)お母様(・・・)を知ってるの?」


 ヴォルトの言葉に、俺は気づいた。

 ハルトとアーシャ、そしてヴォルトが親子だってこと。


「まさか教え子の子どもだったとはな……」


 そう、ハルトとアーシャは俺の教え子だ。

 それもただの教え子ではない。

 あいつらは――。


「はぁ……はぁ……俺の愛しの師匠だ……」

「ヴォルフ様、もう離しませんよ!!」


 俺に対しての怖いぐらい熱狂的なファンだ。

 容赦なく鉄格子の中に手を突き出して、俺に触れてこようとする。

 俺はすぐに後ろに下がったが、牢屋に入れられた理由がわかった。


「師匠、なんで逃げるんですか! 王になったから、早く結婚式を挙げましょう!」

「何言ってるのよ! ヴォルフ様は私と結婚するに決まってるわ! なんだって初めてを捧げた人なのよ!」

「それを言ったら、俺だって初めてを捧げたぞ!」


 言い争いをしている二人に俺は眉間にシワを寄せる。

 良い大人になっても相変わらず成長を感じないな。

 それに誤解を招くことばかり言う口を魔法で封じないといけない。


「まず、変な言い方はやめろ。俺はお前たちに魔法を教えただけだ」

「いや、俺の初恋は師匠です!」

「私もです!」


 こいつらは昔から俺への憧れを初恋だと言っていた。

 何度婚約破棄したのを俺が止めたのか忘れたのだろうか。

 国王と公爵家当主も話に乗ってくるから、さらにタチが悪い。

 俺をハルトの正室にして、アーシャも正室にすれば良いとか……。

 アーシャはアーシャでハルトはいらないから、俺とだけ結婚するとか……。

 元の世界よりもぶっ飛んだ……寛大な考えすぎて、俺は付いていけなかったな。

 田舎でスローライフをすると誓ったのも、これが関係している。


「そもそも王族と公爵家の令嬢だろ! 息子の前で何をやってるんだ!」


 ハルトはこの国の王族、アーシャは代々続く有名な公爵家の令嬢だ。

 昔から厳しく教育されたはずなのに、いつから変わってしまったのだろう。

 俺のことを尊敬の眼差しで見ていたヴォルトも、今では軽蔑の眼差しで睨んでいる。


「はぁー、俺は帰るからな」

「ふふふ、ヴォルフ様は何を言っているのかしら」

「その手についているのは、師匠を見つけた時に逃がさないように用意した最高級のものです」


 きっと俺の手に着いている魔法封じの手錠のことを言っているのだろう。

 二人とも嬉しそうに笑っているが、俺がSSSランクの冒険者だと忘れているのか?


「俺が誰だったのか忘れたのか?」

「「まさか!?」」


 俺は魔法封じの手錠に魔力を込める。

 こういう魔導具は付与された魔力を超える量の魔力で塗り替えれば、効果はなくなる。

 それに追加で「破壊」を付与すれば、簡単に壊れるからな。


「なっ……さすが師匠です!」


 初めは悔しそうな顔をしていたハルトだが、本当に外すと目をキラキラと輝かせていた。

 大人になっても変わらないな。


「本当にあなたは使えないわね」


 そして、相変わらずアーシャはハルトへの扱いが酷いな。


「そういえば、誰だっけな……グリード男爵だったけ?」

「あの辺境地にいるバカな男爵ですよね?」


 どうやら二人ともバカな男爵として認識はしているようだ。


「あいつから不敬罪として貴族裁判をするって言われたから、取り消してくれ」

「はぁー、ヴォルフ様に迷惑をかけたのですね。今すぐに痕跡なく殺してきましょうか?」


 アーシャは周囲に真っ黒な火の玉をいくつか発動させる。

 見ない合間に魔法の質も上がっているようだ。


「アーシャはまだ努力しているんだな」

「ポッ……」


 少しずつアーシャの顔が赤く染まると、火の玉はゆらゆらと揺れていた。

 コントロールは相変わらず苦手そうだな。


「師匠、俺の魔法も――」

「ハルトのは派手すぎるから遠慮しておく」

「なっ!?」


 ハルトは雷属性の魔法を得意としている。

 いつも稲光を見せつけては、目がチカチカとして痛かったからな。

 たまにスーパー〇〇〇人かよってツッコミたくなるほど、全身を輝かせていたのも懐かしい。


「じゃあ……ヴォルトだったかな?」

「なんですか……」


 さっきまで甘えたで優しい子だったはずなのに、急に冷たくなっていた。

 まぁ、あんな乱れた両親の姿は見たくないだろうからな。


「せっかくだからプレゼントをあげよう」


 俺はヴォルトに近づき、額に指を添える。


「メモリア・リンク」

「うわああああああ!」


 ヴォルトはその場で声を上げて叫び出す。

 さすがに息子に何かあればいくら憧れているからって――。


「師匠、その魔法はなんですか!? 俺にもやってくださいよ!」

「私もツンツンされたいです!」


 うん……。

 親になってもこいつらは変わらないようだ。

 しばらくすると、ヴォルトは俺の顔と自分の手を何度も見比べる。


「やってごらん」

「うん……」


 ヴォルトはジーッと自分の手を眺める。


「ファイヤーボール」


 呪文を唱えると、ヴォルトの手のひらから火の玉が現れた。


「うわぁ……」


 まさか本当に魔法が発現するとは思っていなかったのだろう。

 ヴォルトは驚きながらも、目から涙をポタポタと流していた。

 歩いて魔法書を読むぐらいだから、魔法の発現ができないことに気づいていた。

 どうしても初めはコツがいるし、ヴォルトは魔力があまり多くなさそうだと、一瞬で感じたからな。


「俺の想像を共有しておいた。あとはたくさん魔法を思い浮かべて使うと良い」

「はい!」


 魔法を使えば、自然と魔力量は上がっていく。

 楽しいとわかれば、自然と魔法は上達するだろう。


「君は立派な王になれる。だから、両親……みたいにはならないようにな」


 俺はキッとハルトとアーシャを睨みつけるが、二人とも目が合って嬉しそうにしていた。

 しっかり両親はおかしいとわからせることが必要だが、それはまた今度になるだろう。

 そろそろ転移魔法の準備が終わるからな。


「じゃあ――」


 俺は転移魔法を発動させた。


「ヴォルト、捕まえるんだ!」


 ハルトの声が聞こえたと思ったら、何かに引っ張られる気がした。

 そこにはぎゅーと鉄格子の外から手を伸ばして、俺の服を掴むヴォルトがいた。

 なんか、マオが俺の服を掴んでいた時を思い出す。

 可愛い姿で見つめられると、手を振り払うことなんてできないな。

 このままだと一緒に転移することになるだろう。

 まぁ、後で送り届けたらいいか。

 俺は子どもたちが待つ家に帰ることにした。


「俺たちから逃げれるなんて思わないでくださいよ!」

「今すぐにでも結婚するんですからね!」

「お前ら……」


 ハルトとアーシャはヴォルトの体を掴んだ。

 俺の転移魔法は接触していたら、一緒に移動するのを弟子の二人は知っている。


「ああ……めんどくさいな……」


 俺はヴォルトと迷惑な弟子を二人連れて帰ることになった。

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