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31.元英雄、詰めの甘さを感じる

「パパ、おきりゅ!」

「とーちゃん!」

「ボス!」


 大きく体を揺さぶられるが、今日は眠気が一段と強い。

 昨日、大量に魔力を使ったから、その影響が出ているのだろう。

 再生魔法って思ったよりも脳に負荷がかかるからな。


「マシュ!」


 なぜかさっきまで朝日が差していたのに、急に暗くなった。


「このたわわな雄っぱいの――」


 目を開けると大きな雄っぱいが押し寄せてきていた。


「出番はないぞ!」


 俺はマシュマロを退かす。

 こいつは何をする気だったのだろう。


「パパ、しょとにでる!」

「とーちゃん、はやく!」


 子どもたちは俺の手を掴んで起こそうとする。


「そんなに急いでどうしたんだ?」


 朝から外で何かするのだろうか。

 子どもたちに引っ張られながら、外に出ると隣にある畑に連れて来られた。


「ボス、トマトができてるよ!」

「トマト……うぇ!?」


 ひじきが指を差した先には、赤く染まったトマトが実っていた。

 実ができたことはわかっていたが、まさか赤く染まるとは思いもしなかった。


「うっ……やっと……できた」


 ここまで来るのに10年はかかった。

 初めは種すら発芽しなかった。

 少しずつ芽が出るようになっても、全て腐って実すらできず。

 マシュマロから支柱のことを聞くまで、長いこと燻っていたからな。


「他のやつはどうだ?」

「もうしゅこし!」


 他のトマトもまだ食べられないが、少しずつ色は変わりつつある。

 他の野菜もこのまま成長していけば、いつか食べられる日が来るだろう。


「また今度、収穫祭でもしようか」

「「「うん!」」」


 俺が作った野菜を子どもたちに食べさせてあげたい。

 たくさん収穫できなくても、できたばかりの野菜を使って美味しい料理をみんなで作れば思い出になるだろう。


「そういえば、マシュマロは出かけなくてもいいのか?」

「今日はゆっくり休息日にするつもりだ」


 いつもは朝からいないマシュマロがいたから、気になっていたが、どうやら休みらしい。

 今まで何をやっていたのかはわからないが、休むことも大事だからな。


「おやびゅんはどこいちゃの?」

「親分……あっ、黒竜か。あいつならお米を持ってくるって言ってたぞ」


 あれから黒竜は帰るかと思ったが、あまりにもオムライスが美味しかったのかお米を探しに行った。

 あの話し方だと、また帰ってくるつもりだろう。

 本当にドタバタしたやつだ。


「さぁ、朝飯でも作ろう――」

「ヴォルフガング様……」


 突然、聞こえてきた声で振り返る。

 そこには冒険者ギルドのギルドマスターが立っていた。

 どこか表情も暗いため、町で何かあったのだろうか。


「俺が不甲斐ないばかりに申し訳ありません」


 ギルドマスターはその場で頭を下げると、全身が震えていた。


「どうしたんだ?」

「領主様より不敬罪に当たるということで、貴族裁判をされることが決まりました」


 一瞬、ギルドマスターが何を言っているのかわからなかった。

 SSSランク冒険者の俺は貴族法のルールでは罰することができない。

 それはギルドマスターも知っているはずだ。


「俺がSSSランクって伝えていないのか?」

「いえ、領主様にも伝えましたが、そんなものは存在しないと……」

「あー」


 俺は頭を抱える。

 きっと領主がただ単にバカなんだろう。


「それでこれが王都へ移送させるための書状です」


 そこには長々と回りくどい文章が書かれていた。

 単純に言えば、貴族のやり方に歯向いたからグリード男爵の名において、正々堂々と戦うってことだ。

 力で戦わないところはある意味頭を使っているのだろう。


「わかった。王都に向かう」


 俺は優しくギルドマスターの肩を叩くと、目から大粒の涙が溢れ出ていた。

 きっとここまで来るまでに色々と悩んでいたのだろう。


「パパ、ギュッだよ?」


 マオが俺にギルドマスターを慰めろと言うが、俺にそんな趣味はないからな。

 まだ、マシュマロの方が、あのマシュマロちゃんだと思えばできるかもしれないが、俺とそこまで年齢が変わらない親父に抱きつく趣味はない。


 俺は一人で家に入っていくと、急いで子どもたちの昼飯まで準備をする。

 マシュマロは何も作れないし、町に行かせるにはどこか心配だからな。


「やっぱり息の根を止めるべきだったのか……」


 まさか昨日の今日で貴族裁判をするとも思っていなかったし、ここの領主がそこまでバカだとは思わなかった。

 そこまで想定できなかったのは、俺の詰めの甘さが原因だな。


「じゃあ、王都に行ってくる。夜には帰ってくるからな」

「パパ、ちゃんときゃえってきてね?」

「とーちゃんが帰ってくるまで、お家はオラが守る!」

「マオともずくはオレに任せて!」


 初めて長い時間離れることになるため、どこかマオは寂しそうだ。

 俺は子どもたちに優しく抱きしめていく。

 途中でマシュマロも両手を広げていたが、そんなのは無視だ。

 マオたちが来てから、毎日が忙しい日々だ。

 ただ、これはこれで刺激があって良いのだろう。

 何かあれば冒険者ギルドを頼るように伝えて、俺は王都に転移魔法で移動した。

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