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25.元英雄、反抗期は胸が痛い

「とーちゃん、このゴブリンはどうするの?」


 もずくは倒れているゴブリンを指さして聞いてきた。

 ここで解体しても良いか迷ったが、イノシシの解体をマオは見ているため大丈夫だろう。


「ゴブリンは討伐証明部位の右耳と魔石を取る必要がある」


 俺はゴブリンに近づき、耳を切り落とした後に、心臓近くにある魔石をナイフを刺して取り出す。


「この二つをセットで冒険者ギルドに報告に行くと、お金に交換してもらえるんだ」

「おきゃね……?」


 マオは首を傾げていた。

 お金についてもマオには説明していなかったな。


「お金があればいくらでもお肉が買えるってことだよ!」


 お金の必要性を理解しているひじきはマオに優しく教えてあげると、マオは目を輝かせていた。

 きっとたくさんお肉を買ったことを想像しているのだろう。

 ただ、ゴブリンだとそこまで大量のお肉は買えないからな。


「がんばりゅ!」


 マオはすぐに足元にいるゴブリンの耳を切り落とし、魔石を取り出していた。

 ひじきともずくも特に抵抗感がないのか、すぐに集めて持ってきた。


「パパッ!」

「とーちゃん!」

「ボス!」


 血だらけでニコニコ笑う子どもたちに、少し不気味さを覚えるが、俺にとっては成長に感じる。

 魔法で綺麗にして、一つの袋に入れて預かることにした。

 ゴブリンはそのままにしておけないため、土属性魔法で地面に埋めた。


「じゃあ、町に行ってご飯の材料を買いに行く前に冒険者ギルドに行くか」

「「「うん!」」」


 子どもたちだけで働いたお金は良い思い出になるだろう。

 そんなことを思いながら、冒険者ギルドに向かった。


「えーっと、ギルドは……ひじきともずくは初めてだったよな?」


 俺の言葉に二人は頷く。

 この間、冒険者ギルドにマオと来たが、あの時は大変だった。

 ひじきともずくが嫌な思いをしないように、みんなで手を繋ぎながら入っていく。


「わははは、この間の――」


 俺たちが入った瞬間、冒険者たちの視線が集まってくる。

 さすがに子連れは俺たちぐらいだからな。

 奥からはマオとケンカする原因を作った受付嬢がやってきた。


「あっ、ちゃんと仲直りしたんですね!」

「ずっとなかよちだもん!」


 マオはギュッと俺の足に抱きついてきた。

 それを見てひじきともずくも俺に抱きついてくる。

 あまり大人と関わることがないから、少し怖いのか震えていた。

 優しく撫でると、ニコッと笑い、震えも収まった。


「くっ……可愛い」

「なんだあれは……」


 子どもたちを見て、冒険者ギルド内はざわざわとする。

 だが、余計に子どもたちはビビって俺に抱きついてきた。

 俺としては頼られて嬉しいが、今後は大人と関わっていくのは大事になってくる。


「ほら、練習した通りに言いなさい」

「うん……」


 ひじきを先頭に子どもたちだけで、受付嬢の前にいく。


「どうしたのかな?」

「これを持ってきました……」


 町に来るまで子どもたちに、ゴブリンの討伐証明部位の耳と魔石が入った袋を渡すように教えていた。

 誰か一人が言えたらいいと思っていたが、ひじきは緊張はしているようだ。


「おきゃねにしたいでしゅ!」


 代わりにマオがすぐに要件を話していた。


「もうダメ……」


 受付嬢はその場で崩れて動かなくなってしまった。

 それに周囲の冒険者も同じようにどこか息苦しそうだ。


「大丈夫――」

「もう買い取れないものでも買い取るわ!」


 俺が声をかけるとニョキッと立ち上がり、何か覚悟を決めたような顔をしていた。

 そこまで覚悟を決めることなのかと思ったが、子どもたちのことを思った行動なんだろう。

 受付嬢は袋を受け取ると、思わず眉をひそめ、口元を引きつらせた。

 まるで気持ち悪いものを目にしたかのような顔だ。


「ん? 花とか石じゃないのか?」


 近くの冒険者も袋の中を見ながら、子どもと交互に見比べて俺に声をかけてきた。


「さすがに子どもを使わせて買い取らせるのはどうかと思うぜ?」


 俺が倒した魔物をあたかも子どもたちが仕留めたように演出して、手柄を立てさせようとしていると思っているのか。


「……ダメなの?」


 悲しそうな顔をしてもずくが見つめる。


「うっ……さすがに魔石は買い取れるけど、討伐証明部位があったとしても……くそっ!」


 もずくのウルッとした瞳に冒険者もやられたようだ。

 実際に俺が倒したわけでもないからな。


「せめて子どもたちのためにも、魔石だけでも買い取ってもらえると助かる」

「討伐依頼としては認められないから、その分は俺が出してやる」

「俺も!」

「いくら足りないんだ?」


 冒険者がわらわらと集まってきて、気づいたら俺たちは屈強な男たちに囲まれていた。

 子どもたちもびっくりして、俺に抱きついて離れようとしない。

 ただ、その姿を見て、冒険者たちはさらにニヤニヤとしていた。


「ほらほら、子どもを怖がらせないの! 討伐部位と魔石があるから、今回は特別に討伐依頼としても引き取ってあげるわ」


 受付嬢はすぐに処理すると、銀貨を数枚持ってきた。

 子どもたちに配っていくが、明らかに枚数としては多い気がする。


「あのー、多くない――」

「何言ってるの! 子どもたちには平等に配らないといけないわよ!」


 どうやら少しおまけをしてくれたのだろう。

 普通なら銀貨四枚程度なのに、一人二枚ずつもらい、子どもたちは嬉しそうな顔をしていた。

 自分で稼いだお金は特別だからな。


「ちゃんとお礼を言うんだぞ」


 俺の言葉に子どもたちは、横に一列に並んだ。


「ありあと!」

「ねーちゃん、ありがとう!」

「ありがとうございます!」


 様々なお礼の言葉が聞こえてきたが、子どもたちの笑みに受付嬢は再び崩れ落ちていった。

 我が家の子どもたちは可愛いからな。


「じゃあ、買い物にでもいくか!」


 せっかく手に入れたお金を有意義に使った方が、思い出になるだろう。


「……んっ? お前たちどうしたんだ?」


 冒険者ギルドから出ようとしたら、子どもたちはコソコソと何かを話していた。

 もらったばかりのお金を何に使おうか話し合っているのだろうか。


「肉屋にいき――」

「パパ、こにゃいで!」

「ふぇ!?」


 マオの言葉に俺は唖然とする。

 まさかイヤイヤ期だと思っていたが、反抗期だったのか……?

 すぐにひじきともずくの顔を見るが、二人ともそっぽ向いている。


「とーちゃんには内緒!」

「ボスはお留守番!」


 どうやら俺には何に使うのか教えてくれないらしい。

 まさか三人揃って反抗期が一気にきたのだろう。

 子どもたちの反抗期に俺は今後耐えられるのか心配だ。

 ドラゴンに噛まれた時よりも心が痛いからな。


「わかった……。ただ、変な大人と貴族には気をつけるんだぞ。何かあったらすぐに帰ってこいよ!」

「「「はーい!」」」


 子どもたちは嬉しそうな声で返事をして、冒険者ギルドから去っていく。

 ああ、子どもの旅立ちは嬉しいことだが、もう少し心の準備が欲しかった。

 どこか胸の中にぽっかりと穴が空いたような気持ちだ。

 知らない間に俺の方が子離れできていなかったんだと知ることになった。


「お父さん、これも子育てですよ」

「ああ、今日はお祝いだ」


 受付嬢と冒険者から慰めてもらい、俺は子どもたちが帰ってくるのを冒険者ギルドで待つことになった。

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