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24.元英雄、子どもたちに試練を与える

 あれからマオともずくは喧嘩することなく、さらに仲良くなった。

 それに訓練方法は変えて、パーティーの動きを意識させることで戦い方だけではなく、仲間を尊重することが増えた。


「オラが腱を切る!」


 もずくはゴーレムに近づくとアキレス腱の部分を狙って斬りかかる。

 ゴーレムももずくに気づいたのか、拳を振おうとするが、それをひじきとマオが受け止めた。


「あと少しだよ!」


 何度ももずくは剣を振るうと、ゴーレムはその場で崩れるように倒れた。

 ちゃんとまとまったパーティーになってきたが、俺はその成長の早さに驚きを隠せない。


「オーガがモチーフなのに、子ども三人で姿勢を崩すところまでできるとはな……」


 オーガって冒険者の中ではBランク相当になる。

 ゲームの中だと中盤から終盤にかけて、出てくる魔物だ。

 それにオーガがモチーフになっているだけで、元は俺の土属性魔法でできているゴーレムだから、普通のオーガよりも硬さがあるはず。

 そんなゴーレムを追い込むところまでできるとは、さすがに我が子は強いな。


――パチン!


 俺が魔法を解くと、ゴーレムはすぐに崩れていく。


「とーちゃん見てた?」

「マオもがんばった!」


 二人は勢いよく走ってくる。

 お互いにどっちが俺のところに早く着くか競っているが、どうやら喧嘩しているわけではないようだ。


「だいぶ連携も取れてきたな」

「「へへへ!」」


 一緒に仲良く笑っている姿を見ると、本当に姉弟って感じだな。


「そろそろ実戦をしてみようかと思うが、ひじきはどう思う?」

「んー、ボスが近くにいるんだよね?」

「もちろん!」

「なら大丈夫かな……?」


 ひじきも少し不安そうにしているが、この三人なら下級魔物の相手なら問題ないだろう。

 町に行くついでに魔物を探してみることにした。


「とーちゃん、オラ大丈夫かな……?」

「マオがいりゅよ!」


 マオはもずくの手を引いて歩いて行く。

 こういう時ってもずくよりも、マオの方がずっと頼もしく感じる。

 それにどこかお姉ちゃんとしての気持ちがあるのだろう。


「ボス、魔物はいる?」

「この先、ゴブリンが五体いる」

 

 ゴブリンといえば、俺が初めてマオと会った時に戦った魔物だ。


「五体……」


 ひじきはゴブリンが五体もいると言われて、尻込んでいた。


「よし! 行ってくる!」


 だが、気合いを入れ直すと、マオともずくのところまで駆け寄っていく。

 何やら話をすると、ゆっくりとゴブリンに近づく。

 気づかれる前に倒そうという魂胆だろう。

 そんな子どもたちを俺は追いかける。


「まずは一体ずつ狙おう。一度で倒しきれなければ、下がって集まるんだぞ。倒せても近くにいるゴブリンは倒さずに集まるんだ」


 ひじきがマオともずくに指示を出していく。

 二人ともちゃんと聞いて頷いていた。

 子どもたちは一気にゴブリンの元は走り出した。


『ゴフッ!?』


 だが、ゴブリンも子どもたちに気づいていた。

 俺は警戒を強めるが、マオとひじきは後ろから突き刺すように各々一体ずつゴブリンを倒していた。


「ごめん、倒しきれなかった」


 もずくは緊張して傷が浅かったのだろう。

 ゴブリンは倒れずに、もずくに遅いかかろうとする。


「マオがやりゅ!」


 すぐにマオがもずくの声に反応して、ゴブリンにトドメを刺す。

 しっかり連携は取れているようだ。


「もずくはゴブリンの動きを止めるんだ!」

「わかった!」


 もずくは持ち前の素早さを生かして、残り二体のゴブリンの足元を斬りつけていく。

 まずは機動力を減らす目的なんだろう。

 もずくもそっちの方が慣れているのもあり、正確にゴブリンの動きを止めた。


「マオいくよ!」

「うん!」


 マオとひじきはゴブリンに向かって、剣を勢いよく差し込む。

 ゴブリンはそのまま力を失い倒れていく。

 血が剣を伝っていくが、どうやら子どもたちは怯えることもなく、問題ないようだ。

 今も三人で喜んで笑っている。

 だが、安心していられるのも今のうちだ。

 ひじきには伝えてないが、五体のゴブリンの近くには他のゴブリンも潜んでいた。


「ゴボオオオオオ!」

「ヒィ!?」


 どこからか聞こえる声にもずくは驚いている。

 すぐにひじきがもずくより一歩前に出て、周囲を警戒する。

 マオもキョロキョロと周りを見ている。

 あっ、ちなみにさっきの声は俺がゴブリンのマネをして声を出している。

 いきなり出てきたらびっくりするだろうし、ゴブリンも逃げていく可能性がある。

 声に気づいたのかゴブリンも子どもたちに近づいてきた。


『ゴブォー!』


 うん、俺の声マネって結構下手くそだったな。

 そんなことを思いながらも、子どもたちを見守る。

 今度は何体出てくるのかわからないため、気が抜けない。

 それは子どもたちも気づいているのだろう。

 獅子の子落としみたいだが、良い経験にはなるはずだ。

 何匹もゴブリンが近づいてくる。


「全部で八体か……」


 思ったよりも数が多くて驚いたが、すぐにマオが動き出した。


「もじゅくはあし!」


 きっと足止めをしてくれたら、マオが倒すと言いたいのだろう。

 言葉足らずの舌足らずだが、もずくもすぐに動き出した。


「倒せなくても、そのまま進め!」


 ひじきはマオに指示を出す。

 マオが先陣を切ってゴブリンを倒して、打ち逃したものをひじきが倒していく。

 思ったよりもいつもの訓練が身についているようだ。

 しばらくすると、ゴブリンの死体で周囲は溢れていた。


「「「はぁ……はぁ……」」」


 息も荒れて、立っているのもやっとなんだろう。

 今回はちょっとやりすぎたな。


――ガサッ!


「はああああああ!」


 俺が近づくとマオが剣を突き出して飛び込んできた。

 とっさに横へ身をかわし、そのままマオの体を掴む。


「よく頑張ったな!」

「パパッ!?」


 まさか俺だとは思わなかったのだろう。

 自分が俺に剣を向けてしまったことに気づき、マオはあたふたと取り乱していた。


「ひじきともずくもよく頑張ったな! ゴブリンはもういないぞ!」

「「はぁー」」


 大きなため息をついてひじきともずくはその場で座り込む。

 俺が来たことで安心したのだろう。


「パパ、みてた?」

「ああ、頑張ってたな!」

「うん!」


 今回改めて思ったのは、マオが一番戦闘には向いている。

 ほとんど特攻隊長みたいなものだからな。

 それにひじきは兄らしく全体を把握して、的確に指示を出していた。

 それでマオも動きやすかったのもあるだろう。


「オラはダメだった……」


 もずくはその場で落ち込んでいた。

 機動力は発揮されていたが、ゴブリンにビビっていたのが一番の問題だろう。

 だが、それがこのパーティーの中では必要となってくる。


「もずくも頑張ってたぞ。真っ先に突っ込むのは必ず良いとは思わない。敵わない相手なら逃げるのも大事だからな」

「うん……」

「それにひじきが大丈夫だと判断してから動いていた。それは良いことだ」


 俺はもずくの頭を撫でる。

 するとひじきも寄ってきて頭を差し出してきた。

 きっと褒めて欲しいのだろう。


「ひじきは相変わらずよく見えている」

「お兄ちゃんだからな!」


 恥ずかしそうにしている姿は、ひじきが一番甘えたがりなのかもしれない。

 子どもにしては、ゴブリンを何匹も相手することはかなりの難しい。

 低ランクの冒険者ですら、ここまで力が発揮できないのが当たり前だ。

 それなのに子どもたちは、ビビることもなく自分の力を出し切って、冷静に判断していた。

 それだけでもすごいことだ。


「本当にお前らはよくやった!」


 俺は撫でまわしても足りないぐらい子どもたちを褒めまくる。

 本当に優秀な子たちだ。

 これで少しずつ目標もできて、自信がつけば問題ない。


「パパッ、いたいよー」

「とーちゃん! もういいよ!」

「ボス、やめてくれー!」


 みんなに拒否されて、俺はやっと手を止めた。

 本当に成長した子どもの姿を見て胸が熱くなる。

 みんなよく頑張ったな。

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