23.元英雄、久しぶりに揚げ物をする
マオとともに家に帰ると、外でひじきともずくが待っていた。
だが、もずくは地面を見て浮かない顔をしていた。
それは俺の腕で抱きかかえられているマオも同じだ。
「ちゃんと謝るんだぞ」
「うん……」
ここにくるまでちゃんともずくがどう思っているのかは説明した。
俺ができるのは多分これぐらいだからな。
「二人ともただいま」
「ボス、おかえり!」
「おかえり……」
やはりもずくは元気がないようだ。
俺はマオを下ろすと、二人の頭を優しく撫でる。
マオばかり構っていたら、今度は二人に怒られちゃうからな。
「とりあえず、中に入ろうか」
俺とひじきが家の中に入るが、もずくとマオは外にいたままだ。
そんな二人を俺とひじきは見守る。
「もじゅく……」
話し始めたのはマオの方だ。
マオの言葉にもずくは視線を上げる。
「ごめんなしゃい!」
「ごめんなさい!」
お互いに頭を下げた。
まだ考えがまとまっておらず、整理ができていないのかもしれない。
だが、相手に悪いことをした、傷つけたのかもしれない、そう思ったなら謝るべきだろう。
俺は子どもたちにそうやって教えている。
「ボスも大変だね」
「ひじきもだろ?」
「オレは兄ちゃんだもん」
「ははは、それなら俺はお前たちの父親だからな。よくやったな!」
俺はひじきの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
家にも入らず、ずっと外でもずくと待っていた。
きっと、あれからもずくのそばを離れなかったのだろう。
「ボス、痛いよ!」
口ではそう言いながらも、照れくさそうに笑う。
やっぱり、我が家のお兄ちゃんだな。
「マオ、もずく! 今日は何が食べたい?」
謝ってスッキリした二人に声をかけると、すぐに俺の方に視線を向けた。
「おにきゅ!」
「お肉!」
返ってきた言葉は同じだった。
マオともずくはお互いに目を合わせると、ニコニコとしていた。
どうやら仲直りはできたようだ。
だが、これから戦闘訓練のやり方も変えないといけないな。
毎回喧嘩されていたら、俺もたまったもんじゃない。
「ボス、オレも肉がいい!」
子どもたちは全員肉が食べたいらしい。
「相変わらず肉好きばかりだな……」
俺はすぐにキッチンに向かった。
肉好きの三人が喜びそうなメニューを考える。
「そういえば、唐揚げを作ったことなかったな」
基本的に肉は焼くことが多いし、揚げ物をする機会はなかった。
子どもは揚げ物が好きってイメージがあるし、ちょうど良いだろう。
俺は空間魔法から材料をいくつか取り出していく。
「肉は小ぶりに……いや、大きい方がかぶりつけるか」
鶏肉を大きめに切って、ボウルに醤油、すりおろしたしょうがやにんにくを入れて漬けておく。
その間に簡単な付け合わせとサラダの準備だ。
サラダはキャベツを千切りにして、トマトやきゅうりを載せれば完成する。
早く我が家の野菜を食べたいが、収穫できるのはもう少し後だろう。
そして、付け合わせは子どももきっと大好きな――。
「フライドポテトもあるとワクワクするよな」
唐揚げの付け合わせにフライドポテトを作ることにした。
両方とも揚げ物だが、唐揚げとフライドポテトがあればパーティーみたいな感じがする。
ただ、それだけの理由だ。
フライドポテトはじゃがいもの皮を剥いて、スティック状に切っていく。
それを水にさらして、デンプンを落としてから水分を拭いて準備は完了。
「パパ、おにゃかぺこぺこ」
「とーちゃん、オラも!」
マオともずくが近くに寄ってきた。
ただ、これからするのは子どもには危険だ。
「今から揚げ物をするから、離れていないと危ないぞ?」
「あげもにょ?」
「揚げ物?」
聞いたことない言葉に二人は目を輝かせていた。
二人にとっては逆効果になってしまったようだ。
「んー、保護魔法をかければいいか?」
離れる気がない二人に保護魔法をかけて、早速揚げていく。
「鍋は二ついるの?」
一人だけ置いてかれていたひじきもやってきた。
「せっかくだから美味しい方がいいからね!」
鍋に油を入れて、温度が違う二種類の油を用意する。
今回は二度揚げする予定だ。
低温で一度揚げて、その後にカラッと高温で揚げれば外はカリッと、中はジューシーな唐揚げができる。
それに肉は大きめに切っているから、初めから高温で揚げてしまうと焦げる可能性がある。
だから、一度低温で揚げてから、余熱で火を通せば安全面は問題ない。
生の鶏肉って当たったら、大変なことになるし、子どもには命取りになる。
それに異世界の病気って元の世界よりも強そうだしな。
「はじめにフライドポテトを揚げて……やってみるか?」
ジーッと俺を見ているから気になるのだろう。
油が飛んできても、保護魔法で弾き返していたから問題はない。
本当に魔法って戦いよりも、生活する場面において便利だ。
「やりゅ!」
「「やる!」」
俺は子どもたちを順番に並ばせると、背後に回って手を持つ。
「油が跳ねるから、ゆっくり入れるんだぞ!」
「うん!」
ひじきともずくはいうことを聞いてくれそうだが、マオは何となく油に放り投げそうなイメージがした。
だから、背後に回ったがそれが正解だった。
パチパチする音にびっくりして、本当に油が飛び散る勢いで鍋に投げ入れた。
「ウィンドウォール!」
すぐに鍋の周りに風の盾を発動させて、飛び散る油を鍋に戻すように操作する。
「火傷しなかったか?」
「うん!」
マオは楽しそうな顔をしていたが、揚げ物を手伝ってもらうのはやめた方が良さそうだ。
「魔法はこういう時に便利だから、しっかり勉強するんだぞ!」
「「「……はーい」」」
魔法は好きでも、あまり勉強は好きじゃないもんね。
学べば学ぶほど魔法は楽しくなるし、実戦や日常で使えるとかなり考えが変わってくるが、そう思う日はだいぶ後のようだ。
ひじきともずくに手伝ってもらいながら、フライドポテトと唐揚げの一度目を揚げる。
マオには、邪魔にならないよう場所を動かしてもらった。
「そういえば、さいきんマシュマロ見たか?」
「マシュ? 見てないよ!」
「オラも!」
「マオも!」
マシュマロに家の相談をしたが、あれから家で見ることがなくなった。
ご飯を用意して置いておくが、翌日にはなくなっているため、帰ってはきているのだろう。
ただ、夜寝る時や朝起きた時にはすでにいない。
あいつは一体何をしているんだろうか。
まぁ、家にいなければ、狭さも感じにくいから、家の建て直しはしなくても大丈夫だろう。
「パパ、おにゃかへった!」
「ああ、ごめんごめん!」
子どもたちの空腹音が聞こえ、俺はすぐにひじきともずくの隣で二度揚げをしていく。
二度揚げは表面をカリッと仕上げるために行う。
だから、揚げる時間も短く素早く作業をこなす。
大量に唐揚げとフライドポテトができているが、子どもたちは食べられるのだろうか。
「よし、これで最後だな」
「かんしぇい!」
「「完成!」」
テーブルの上に運んだら、本当に誕生日会かと思うほど積まれていた。
いまにもよだれが垂れそうな子どもたちとすぐに手を合わせる。
「「「いただきます!」」」
「いただきましゅ!」
そこからは子どもたちの食欲は爆発して、取り合いになっていた。
外はカリッとして、中はジューシーな唐揚げは全身に力がみなぎるほど美味しい。
フライドポテトもいくらでも食べられるだろう。
マヨネーズとかケチャップがあれば、もう少し楽しめたかな。
今度試しに作ってみるのもいいかもしれない。
「パパ、かりゃあげしゃいこう!」
「オラ、もっと食べれるよ!」
「ボス、オレこれが一番好き!」
にぎやかな声が響く食卓で、俺は小さく笑った。
一緒に料理をして、ご飯も食べて、前よりも一段と家族仲が深まったような気がした。
やっぱり俺たちはもう立派な家族なんだな。
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