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18.元英雄、仲良くバーベキューをする ※一部マシュマロ視点

「切ったから運んでくれー!」

「「「はーい!」」」


 肉を素早く切り終えて、子どもたちを呼ぶ。

 待ってましたと言わんばかり駆け寄り、外に肉を運んでいく。

 外には魔法で作ったグリルの上に、買ったばかりの鉄板が載っている。


「炭はこんなもんでいいか?」

「マシュマロのくせにちゃんと火の管理はできたんだな」

「まぁ、俺は何でもできるからな」


 少し顔が赤く染まっている気がするが、火の管理をしていたからだろう。

 炭をグリルの中に入れて、準備は完了だ。


「よし、お前ら肉を焼くぞー!」


 俺は意気揚々と肉を掴んで、鉄板の上に置いていく。


「「「……」」」


 だが、なぜか子どもたちの反応は薄い。

 バーベキューって普通は楽しくなるものじゃなかったっけ?

 さっきは嬉しそうに運んでいたのに、思っていたものと違っていたのだろうか。

 

「パパ……おにくちっちゃい……」

「とーちゃん足りないよ!」

「ボス、さすがにオレたちの食欲舐めてない?」


 今まで大きな肉の塊をかぶりつくことが多かったため、お肉が薄いことに不満を抱いていた。

 俺は焼けた肉や野菜をどんどん子どもたちの皿の上に置いていく。


「これはこれでうまいんだぞ」


 簡易的に作った焼肉のタレをその上からかける。

 焼肉のタレってしょうゆに甘味、香味、酸味、油でできる。

 今回ははちみつ、ネギ、レモンを使って、さっぱり味で、たくさん食べられるようにした。

 子どもたちは疑いながらも、口に運んでいく。


「うまうま!」

「「うんまぁー!」」


 普通はこういう反応が当たり前だ。

 ニコニコしながら、食べている姿を見ると俺も嬉しくなる。


「ハタジイは柔らかいやつの方がいいかな」

「それは助かる」


 歯が弱くなったハタジイには柔らかい赤身のお肉がちょうど良い。

 口の中で溶けていくお肉にハタジイは驚きながらも、たくさん食べていた。

 さっぱりしたタレになっているから、油も多少は気にならなくなるだろう。


「パパ、きえちゃうよ!」


 炭を見ていたマオは火加減が弱いのが気になったのだろう。

 俺は追加で炭を入れていく。


「マシュマロ、風を送ってくれないか?」


 近くでボーッとしていたマシュマロに声をかける。


「風か?」

「あっ、弱めでいいからな!」


 マシュマロは力の加減ができない。

 下手をすれば台風クラスの突風で吹き飛ばされる。

 案の定、今にも全身を捻り上げて、嵐を呼びそうな体勢を取っていた。


「フンッ!」


 その瞬間、マシュマロはそのままクイッと体を捻ると、大きな雄っぱいがぶるんと揺れ、勢いで風を起こした。

 胸にそんな使い方があるのか……。

 ただ、グリルの火はちゃんと強くなっていく。

 何度もグリルの前で雄っぱいを揺らしている姿はシュールだが、飛ばされるよりはいいのだろう。

 次第に火は大きくなり、火力が戻れば、子供たちの食欲も戻っていく。

 

「パパッ、あーん!」

「ありがとう!」


 ただ、俺がずっと食べていないことに気づいたマオはお肉を食べさせてくれた。

 思ったよりもさっぱりしたタレが絡まって美味しい。

 それに子どもに食べさせてもらえると、格段に美味しく感じる。


「オラもやる!」


 もずくも負けじと俺の口に肉を入れてくる。

 気づいたらマオともずくが、どっちが先に詰められるかの争いになっていた。


「ゲフッ! 俺はもう食べられないから、自分たちで食べなさい」


 さすがにずっと食べさせられたら、俺もすぐに満腹になってしまう。

 だが、マオともずくに隠れて、ひじきがフォークに肉を刺して待っていた。


「ボス……お腹いっぱいだもんな……」


 寂しそうな表情で見られると、さすがに食べないわけにはいかない。


「あー、ひじきは俺に食べさせてくれないのかなー」


 チラッとひじきを見ると、嬉しそうに肉を突き出してきた。


「仕方ないなー。ボスは今手が使えないもんね!」


 子どものためにも、親はこれぐらい我慢しないといけないからな。

 俺は腹が弾けそうになるまで、ひじきに肉を食べさせてもらった。

 その後もみんながたくさん食べている中で、やはり縁で一人だけジーッと見ているやつがいた。


「そういえば、お前は食べないのか?」


 それは淫魔のマシュマロだ。

 体が大きいため、肉はタンパク源になるが一向に肉を食べようとしなかった。

 そもそも肉が嫌いなのか、減量中なんだろうか。


「俺、飯を食べたことない」

「はぁん!?」


 聞こえた言葉に俺は驚いた。

 魔王のマオやオルトロスのひじきともずくすら食べている。

 やはり淫魔だから、食事はせずに精気を吸収しているのだろうか。

 食事をしたことがないなら、包丁の使い方もわからずに斬撃を飛ばした理由に納得できる。


「よし、今すぐに食え! どんどん食え!」


 俺が皿に肉を置いていくと、戸惑いながらもマシュマロは口に肉を入れていく。

 初めて食べる肉に少し不思議そうな顔をしていた。

 ただ、時折見せる優しい笑みが物語っていた。

 食事ってみんなと食べるから楽しいし、バーベキューなら尚更だ。


「……こんなに温かいもの……知らないな」

「んっ? 何か言ったか?」


まだ食べ足りないのか、俺は焼いた肉を皿に載せ続けた。

 途中困った顔をしていたが、俺は見て見ぬ振りをした。


 ♦︎ ♦︎ ♦︎


「マシュ、おいちかった?」


 ゆっくりと近づいてくる魔王様に俺は頷いた。


「はい。とても美味しかったです」


 魔王様は私といた頃よりも、ここに来てからの方が表情が明るくなった。

 俺がお世話係をした時はこんなに笑う姿を見たことがない。


 それに初めてご飯を食べたが、こんなに美味しい物だとは思わなかった。

 淫魔は元々魔力を吸収して生きていく悪魔だ。

 だから、最悪食事をする必要はない。

 魔王様に何か食べさせればいいと思い、その辺で捕まえた動物や魔物をそのまま出していたから、俺の前から逃げられたのだろう。


「魔王様、もう戻るつもりはありませんか?」

「マオはずっとパパといる」


 俺の言葉に魔王様は嬉しそうに頷いた。

 その言葉に胸が締め付けられる思いだ。

 だが、あの男を見ていて納得はできる。

 魔王様に好かれているし、気難しいと言われるオルトロスにも懐かれている。

 オルトロスは力で制御するのが当たり前だからな。

 それだけここは居心地が良いのだろう。


「俺もしばらくここにいたいな……」

「パパにいってくる!」


 俺の呟きを魔王様は聞き逃さなかった。

 魔王様があの男に話しかけると、頭をガシガシと掻きながら、ジーッと俺を見ていた。

 きっと俺は追い出されるに違いない。

 今まで散々嫌がっていたし、今だって名前も覚えてもらえない。

 俺の居場所なんて元々ないようなものだ。

 淫魔は本来、女の姿で生まれる。

 けれど俺は違った。生まれた瞬間から、周りの視線は冷たかった。


「雄っぱいなんて、気味が悪い」

「魔力も吸えない欠陥だ」


 耳に残るのは、笑い声と嘲りばかりだ。

 食卓に座らせてもらえたこともなければ、同じベッドで眠ったこともない。

 いつも一人きりで、冷たい石の床に転がされていた。

 だからこそ俺は必死に強くなろうとした。

 魅了魔法も、鍛え抜いたこの肉体も。

 全部、俺が生きていくために必要だった。


「おい、マシュマロ聞いてるのか?」


 少しだけぼーっとしていたら、いつの間にか男は俺の目の前にいた。

 相変わらず俺のことをマシュマロと呼ぶ。


「なんですか?」


 だから、少し機嫌悪そうに返事するが、男は特に嫌な顔もしない。

 普通なら魔法の撃ち合いになってもおかしくないレベルだ。


「いや、お前は別の布団になるけどいいかって聞いたんだ」


 その言葉に俺は首を傾げる。

 帰るしか選択肢がない俺に、なぜそんなことを聞いてくるのだろうか。


「マオに聞いたけど、お前もこれからここにいるんだろ? さすがにお前と同じベッドは――」


 俺はその言葉に嬉しくなり、男を抱きしめた。


「うわあああ、やめろおおお!」


 相変わらず俺の胸を押して遠ざけようとするが、それでも俺は離さない。

 だって、初めて俺を男の淫魔だからって罵ることをしなかったからな。

 それに口では嫌がっても、本当に嫌がっている気がしない。


「パパッ!? マシュあっち!」


 魔王様に押されて俺は気づいた。

 そっと男に目を向けると、その場で気絶するように眠っていた。

 どうやら強く抱きしめすぎたようだ。

 人間って貧弱で脆い存在なのに、不思議とこの男は安心できる。

 胸の奥にこびりついていた孤独が、少しずつ溶けていく気がした。

 ああ、俺にもようやく居場所ができたのかと。


「パパ、ちんだ?」

「きっと眠いだけですよ」


 これで死なれたら、俺は魔王様に殺されそうだ。

 俺は男を抱きかかえて、そっとベッドの上に寝かせた。

 すぐに回復魔法をかけると、スヤスヤと寝息をかいていた。


「少しぐらいならいいよな?」


 魔力を使いすぎて、体が重だるく感じる。

 せっかくの機会だし、魔力を吸収してもバレないだろう。

 俺は男の顔にそっと胸を押し当てると、温かな流れが俺の中に広がっていく。

 人間のくせに魔力は上質で量も多い。

 それは今まで感じたことのない幸福感。

 気づけば、俺の目からは涙が溢れ出ていた。

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