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17.元英雄、才能の使い方を知る

「はぁー、お前がマシュマロちゃんか」

「いや、だから俺はマシュメルだ!」


 あのキュートで可愛いマシュマロちゃんが、ただの雄っぱい淫魔野郎だとは思いもしなかった。

 俺もマシュマロちゃんのキャラクターデザインは好きだったからな。

 きっとみんなが魅了魔法で見えている淫魔の姿は、俺知っているあのマシュマロちゃんなんだろう。


「くっ……なぜ俺には魅了魔法が効かないんだ」

「魔法抵抗力が強いのが原因だろ!」


 俺が強すぎたのがいけなかった。

 転生したのがゲーム世界だと気づいた時から、ひょっとしたら会えるかもしれないと夢見ていた。

 だが、まさかあのマシュマロちゃんがただの雄っぱい淫魔野郎だと知るとは誰も思わないだろう。


「マシュマロちゃんにはお姉さんか妹ちゃんはいるのか?」

「俺は一人っ子だ」


 その言葉を聞いて俺は喪失感に襲われた。

 この世界に来て希望は消えてしまった。


「マオー! マシュマロちゃんがいじめてくる!」

「……お前、めんどくさいな」


 やっぱりこのたまに出てくるツン感がマシュマロちゃんだな。

 いつもデレデレしてるのに、たまに突き放してくるから、男性ユーザーは見事に魅了されていた。

 ははは、俺もその一人だった。


「パパにはマオがいりゅ!」


 マオの優しい言葉に心が温かくなる。

 俺には可愛い子どもたちがいるからな。

 俺は子育てに専念することにした。


「おい、マシュマロ野郎!」

「急に態度が変わったな。それに俺はマシュメルだからな!」


 マシュマロちゃんが男だと分かったら容赦はしない。

 元々の目的は有効的に大人の手として使わせてもらうだけだからな。

 相手が淫魔だからといって変な妄想はするんじゃないぞ?


「肉を薄く切れ!」


 俺は包丁と塊肉を渡した。

 バーベキューで使うお肉は塊肉で買っている。

 時間があれば本場のバーベキューのように、下味やスパイスで仕込んでじっくりグリルするが今日は日本方式だ。

 簡単に言えば、外で食べる焼肉なんだけどな。


「俺の力を見ていろよ!」


 マシュマロは大きな腕を上げると、勢いよく手を振り下ろす。

 明らかに肉を薄く切る動きじゃない。


――ドオオオオオオン!


 斬撃が家の壁を突き抜けて、その痕跡から畑が見える。

 畑で他の野菜のツルを支柱に結びつけているひじきともずくの姿が目に入った。


「このマシュマロ野郎め!」


 俺の声が外まで響く。

 みんなの視線が俺に集まる。

 まるで俺がやったみたいな雰囲気が出ているが、やったのは隣のマシュマロだからな。


「俺はちゃんと言った通りに――」

「お前みたいな脳筋野郎は出てけえぇぇぇ!」


 肉を薄く切れと言ったのに、家を破壊するとは思わなかった。

 やはりあの筋肉は見せかけではないようだ。

 きっと鍛えすぎて脳筋になったことで、魔法の才能を無駄遣いしているのだろう。

 魔法も使えて力もあれば、四天王じゃなくてこいつが魔王になっていただろう。

 うちのマオは可愛いからな。


 マシュマロはそのまま壊れた壁を通り抜け、畑の方へ歩いていく。

 チラチラとこっちを見ては、ため息をついている。


「パパ、かわいしょうだよ?」


 さすが魔王の側付きだ。

 ここぞとばかりにマオを味方につけている。


「また夫婦喧嘩でもしたのかのう?」

「とーちゃん、謝った?」

「雄っぱいがいないと、畑終わりだよ?」


 畑にいたみんなまで壊れた家の隙間から覗いて声をかけてくる。

 明らかに俺が原因みたいになってるぞ。

 ひょっとして知らぬ間に魅了魔法でも使ったかと感じてしまうほどだ。


「おい、マシュマロ野郎戻ってこい!」

「えっ、いいんですか!?」


 家から畑の縁まで軽く50メートルはあるのに、気づいた時には目の前には大きな山が二つある。

 俺はそれを手で払いのける。


「変なことをしたらすぐに追い出すからな」

「えっ……それって同棲してもいいってことだよな?」


 ん? 今のどこに一緒に住む話があったんだ?


「よかったね!」

「これで一緒だね!」


 マオともずくは嬉しそうにマシュマロとクルクル回っていた。

 あまりにも子どもたちの態度が気になる。

 本当に魅了魔法をかけていそうだな……。


――パチン!


 俺は指を鳴らして、膨大な魔力を一気に広げた。

 元ある魔力よりさらに大きな魔力をぶつけると、魔法って弾き返せるからな。


――パリンッ!


 やはり俺の読みは当たっていた。

 明らかに俺の魔力が、何か魔法を大きく弾いた。

 マシュマロと一緒にクルクルと回っていたマオともずくは足を止めた。

 近くにいるひじきやハタジイも首を傾げている。


「あれ? パパ、お腹しゅいたよ?」

「ごはんはー?」


 お腹が空いたことを思い出したのか、マオともずくが寄ってきた。

 あんなに空腹音が聞こえていたのに、あれっきりお腹が減ったって二人とも口にしなかったからな。


「チッ! やはりダメだったか」

「俺がいる限り魅了魔法は効かないからな」


 マシュマロは悔しそうな顔をしていた。

 魅了魔法をかけるぐらいなら、俺にあのキュートでセクシーなマシュマロちゃんに見えるようにして欲しい。

 そうしたら、俺も一緒にクルクルと回ってあげた。


「さぁ、次変なことをしたら――」

「いや、魅了魔法はその前にかけていたからな」

「はぁー」


 マシュマロの屁理屈についため息をついてしまう。

 ただ、本当に才能の無駄遣いすぎて、もったいない。

 俺が操ることができれば一番便利なんだけどな。

 例えば奴隷とか……いや、あいつにとったらご褒美になりそうだ。

 このまま泳がせておくほうが良いのだろう。

 それに――。


「ほら家の壁もすぐに補修できるから便利だぞ」


 包丁の斬撃で壊れた壁の上には綺麗に新しい木が杭で打たれていた。

 よほど一緒にいたいのか、ここぞとばかりに自分の必要性をプレゼンしてくる。

 才能って正しい方向に使えば役に立つ。

 やっぱり子どもたちの才能は、ちゃんと見極めてやらないとダメだなと改めて思った。

 目の前にこれ以上ない反面教師がいるからな。

 とりあえず、俺は今後もマシュマロに包丁を持たせないことにした。

お読み頂き、ありがとうございます。

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よろしくお願いします(*´꒳`*)

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