6、ひだまりの猫
いつも読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
今作も楽しんでいただけると嬉しいです。
「帰ったぞ!マリー、どこだい?」
モルドーさんは店の裏に荷馬車を停めると私を連れて店の裏口から厨房へと入って行った。
「お帰りなさい。あら?お客さんかしら?」
厨房の奥の店の方からマリーと呼ばれた女性が現れた。
「街に戻る途中で、道に迷ってるこの子を拾ったんだ。お腹が空いているから食事をご馳走してあげようと思って」
まるで猫を拾ったかのような言い方だ。
「まあまあ、それは大変だったわね。さあこっちにいらっしゃい」
私はマリーさんに肩を抱かれ、厨房から店のフロアに入った。
「ここに座って待ってて。何か苦手な食べ物はあるかしら?」
「いえ、とくにはないです」
キョロキョロ店内を見渡す。
シンプルな白い壁の店内に濃い木目のテーブルが落ち着いた印象だ。
所々に飾ってある猫の置物がかわいいアクセントになっている。
誰もいない店内で1人座っていると、厨房の方で女の子の声がした。
「おはようございまーす」
「ライラちゃんおはよう。今日もよろしくね」
「おはよう」
スタッフさんだろうか?
そこにマリーさんがお皿に乗ったオムライスを持ってきてくれた。
「お待たせ。お腹いっぱい食べてね」
大きめのオムライスにはケチャップで猫のイラストが描いてあってかわいい。
「いただきます…」
ぱく。
もぐもぐ。
…。
「おいしい…」
ぱく、もぐもぐ。
側で見守っていたマリーさんがモルドーさんに合図を送る。
カウンターからモルドーさんも出てきていた。
「美味しいかい?」
モルドーさんの問いかけに、私はスプーンを持つ手を止めて何度も頷いた。
「おいしい、ですっ」
オムライスを食べながら涙が出てきて止まらない。
こんなふうに落ち着いて食事をするのはいつぶりだろう。
温かくて、体の中に栄養が染み渡っていくようだ。
ぐすんぐすんと鼻を鳴らしながらオムライスを食べていると、厨房の方からさっきやってきた少女の元気な声が聞こえてきた。
「マスター、そろそろ新しいウェイトレス雇いましょうよ。私一人じゃさすがにきついですって。あれ?マスター?」
「こっちだ」
私のところにいたモルダーさんが返事をした。
「だから、募集の張り紙をした方がいいと思うんですよ」
エプロンをしながらホールに現れた彼女はとても可愛かった。
髪はピンクブロンドのボブヘア。
少しタレ目な幼い印象の顔だちは思わず守ってあげたくなる。
「あ、かわいい…」
私が思わず呟くと、彼女は照れたように笑った。
「あ、ありがとう。ってか、誰?お客さん?」
「いや、彼女は訳あって食事をしているんだ」
モルドーさんがざっくり説明する。
「ふーん、あなたも充分かわいいけど。まあ、いいわ。そろそろ開店じゃないんですか?」
ピンクブロンドの彼女がそういうと、モルドーさんと、マリーさんは慌てて厨房に戻って行った。
「よし、開店しよう。ライラ、店を開けてくれ。君はゆっくり食べて行ってくれ。もしよかったら午前の営業が終わってから話を聞かせてくれ」
ライラさんが店の表のドアの鍵を開け、ドアのプレートをオープンにした。
私は慌ててハンカチで顔を拭った。
ライラさんが元気よく言った。
「レストランひだまりの猫、オープンします」
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。
返事が返せないこともありますが、感想必ず読んでます。ありがとうございます。
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