41、商人ロッソ③
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
「やあ、こんばんわ」
今日もまた、ロッソさんが食堂にやってきた。
「いらっしゃい、ロッソさん」
ロッソさんは今日も素敵だ。
そう言えばロッソさんは旅商人だが、いつまでここにいるんだろう。
「そう言えば、ロッソさんは各地を旅して商売をしてるんですよね?ここには商品の仕入れで来たんですか?」
ここ、ランベルの街の特産は革製品だ。
さらに郊外では上質なフルーツが取れる。
フルーツは日持ちしないものが多いので近隣の街しかしか運べないだろうが、ランベルのフルーツは有名だ。
「そうだよ。仕入れもあと少しで終わりそうだから、終わったら次の目的地に移動するのさ」
私とロッソさんの会話を聞いていた女性達がざわめく。
「え?ロッソさんもうすぐ旅に出ちゃうんですか?」
「ロッソさんがいなくなったら寂しい」
ロッソさんは女性達に笑顔で答える。
「僕も君たちに会えなくなるのは寂しいよ。でも人生には出会いと別れがつきものだからね。またどこかで会えるといいね」
「ロッソさん…」
キザなセリフもロッソさんなら許されるのだ。
「けっ、早く他所に行けよ」
男性達にはそうでもないが…。
ガイアスがディルックに話してるのが聞こえる。
「おい、アイツもうすぐ居なくなるって。良かったな」
「おう!やっと居なくなるのか。ここもいつも通りになるな」
2人共、本人に聞こえてるから。
「すいません、ロッソさん…」
私が小声で謝ると、ロッソさんは首を振った。
「全く気にしてないよ。ところで、今日店が終わった後少しだけ会えないかな?アニーちゃんに渡したいものがあって…」
「渡したいものですか?今じゃダメですか?」
「うん、アニーちゃんにはよくしてもらったから、お別れの品をあげたいんだ。アニーちゃんの分しかないし、他の女性に見られたくないから一人の時にこっそり渡したいんだ」
「そんな…私は特に何もしてないですから。お気持ちだけで十分ですよ」
特に何かしたわけでもないのに、私だけもらうとか申し訳ない。
「僕が勝手にあげたいだけだから、もらってくれると嬉しいな。大したものじゃないし。僕は旅ばっかりしてるから、友達とか少ないんだ。だからお世話になった人にプレゼントとかしたいんだよね」
「では、今日、店が終わってからでよければ」
「うん、店の外で待ってるね」
意外なロッソさんの申し出になんだかソワソワしてしまう。
いつこの街を出発するんだろう。
私もお返しに何か贈りたいな。
明日お昼休みに買いに行っても間に合うだろうか。
そんな事を考えながら店が終わった。
「アニー、送って行かなくて本当にいいのか?」
ライオネルさんが声をかけてくれる。
「うん、今日はちょっと寄りたいところがあるから」
私がそういうと、ライオネルさんは心配して言った。
「なんならディルックに送らせるが…」
「そんなに時間もかからないし大丈夫だよ」
ライラがライオネルさんの腕を引っ張った。
「アニーにも色々予定があるのよ。邪魔しちゃダメよ」
ライラは営業中に私がロッソさんと話しているのを聞いて、察してくれているようだ。
「ライラ、明日話すね」
「ええ。絶対教えてね。また明日」
ライラは手を振ってライオネルさんを引っ張って帰って行った。
彼らが角を曲がって見えなくなると、ロッソさんが現れた。
「やれやれ、ライラちゃんには気づかれちゃったかな?」
「ロッソさん!もういたんですね。お待たせしました」
「いや、そんなに待ってないよ」
「ロッソさん、いつこの街を立つ予定なんですか?」
「それが予定が少し早まって、明日の朝には立つつもりなんだ」
「え!?そんな急に」
ロッソさんはポケットから箱を取り出した。
「アリーちゃん、これ、もらってくれるかい?」
「え?本当に私がもらっていいんですか?」
「うん、アニーちゃんにもらって欲しいんだ。開けてみて」
もらった箱をパカリと開けると、素敵な猫のブローチが現れた。
「わあ、かわいい!」
「これを見つけて、アニーちゃんの顔が浮かんだんだ。つけていいかい?」
「はい!お願いします」
猫のブローチを持ったロッソさんが私に近づいて、突然、ハンカチのようなもので鼻と口を塞がれた。
「!!」
「悪いね、アニーちゃん。君を口説くのをもう少し楽しみたかったんだけど、時間がなくなってね。ゆっくりおやすみ」
ロッソさん…何を…。
そこで私の意識は途切れた。
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