39、商人ロッソ①
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
人は学習する生き物ではなかったのか?
ひと月ほどで、私はすっかり失恋の痛手を忘れてしまったのかもしれない。
本格的に恋していたわけではなかったからと自分に言い訳して、更にはオリバーのことは失恋と言えないのでは無いかとすら思い始めている。
私が何故そんなふうに思っているかと言えば、最近店に来る彼が原因だ。
「やあ、アニーちゃん。今日もかわいいね」
「こんにちは、ロッソさん。いらっしゃい」
旅商人であるロッソさんは、仕入れの為各地を旅して回っている。
「ここの食事は何を食べても美味しいな。アニーちゃんもライラちゃんもかわいいし、マリーさんも綺麗だし」
マリーさんもすっかりご機嫌だ。
「いやだわ、ロッソさん。こんなおばさんまでからかって」
「そんな若くて美人なおばさんなんていませんよ」
「もう、ロッソさんたら…」
女性陣はイケメンで物腰柔らかなロッソさんをアイドルのように扱っている。
ただステラは違うが。
「ステラちゃんは今日は何食べてるのかな?」
「あなたには関係ないです」
ステラがロッソさんに冷たく返すと、男性陣が沸いた。
「いいぞ、ステラ。これも食え」
「マスター、ステラにエールを。俺の奢りだ!」
「おう、すぐ持ってく」
ステラは手で制する。
「いや、いらないから」
ステラはオリバーさんに騙されたことで、彼はしばらくいらないと頑なな態度だが、街の女性達は、この辺りではあまり見かけない中性的な美しい顔立ちと甘い言葉にすっかりときめいている。
私もライラもファンの一人としてロッソさんを推している。
「ロッソさん、本当に綺麗。見ていて飽きないよね」
ライラの呟きにライオネルさんが慌てた。
「ライラ!?」
「大丈夫よ、ライオネル。ロッソさんは見てたいだけ。愛してるのはあなただけだから」
「そうか…俺も愛してる」
こっちは相変わらずラブラブだ。
羨ましいが、友達が幸せなのはとても嬉しい。
ライオネルさんもいい人だし。
「それにしてもステラはロッソさんを見てかっこいいなって思わないの?」
私がたずねると、ステラはシーラさん達に囲まれているロッソさんを遠巻きに見て言った。
「ロッソさんは、顔が整ってるなって思うけど、それだけかな。私は鍛えられた筋肉の人が好きみたい。どっちかって言うと、ディルックやガイアスの方が好みかな」
何故かステラからディルックの名前が出たことにドキリとする。
「そ、そうなんだ。確かにディルック達は鍛えた筋肉だもんね」
少し声が上擦ったかも。
「心配しなくても例え話で、実際に好きとかでは全然ないから安心してね」
ステラがニコニコしながら言う。
「別に、そんなんじゃないから」
私がステラと話しているところにディルックとガイアスが入ってきた。
「あー、腹減った。アニー席空いてるか?」
「いらっしゃい。ディルック、ガイアス」
私は慌てて2人を席に案内する。
「チッ、アイツ今日も来てるのか?」
「アイツってロッソさんのこと?」
「そう、ほんといけすかない奴だぜ」
ディルックはあからさまにロッソさんを嫌っている。
「そう?ちょっと口が上手いけど悪い人では無さそうだけど」
「ディルックはヤキモチを焼いてるんだよ。アニー」
ガイアスが面白そうに私に言う。
「そんなこと知らないんだから」
わたしは2人のテーブルに水の入ったグラスを置くと、少し顔を赤くして厨房へと向かった。
最近ガイアスのからかいに上手く対応できない。
なんか恥ずかしくなってしまう。
「これは…少しは進展したと言えるんだろうか?」
ガイアスの呟きは誰にもきこえない。
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