32、警備隊オリバー①
読んでいただいてありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
私とライラでおばあさんを助け起こしていると、がっしりした男性はひったくりの男を引っ張ってこちらにやってきた。
「おばあさん、大丈夫か?おばあさんの鞄はこれかい?」
男性は男から取り上げた鞄をおばあさんに見せた。
「これだよ、これ。私の大切な鞄だ。ひったくりを捕まえてくれて本当にありがとう。お嬢さんたちもありがとね」
「いえ、鞄が戻って良かったです。おばあさん大丈夫ですか?家まで送りますよ」
私はおばあさんを心配して言った。
「ありがとう。実は足を挫いたみたいでね。家まで連れて行ってもらえると助かるよ」
男性は私に向かって言った。
「君は…この前の…。偶然だな。今日は非番で制服を着ていないが、俺は街の警備隊のオリバーだ」
よく見れば、男性はこの前ジャガイモを拾ってくれた人じゃないか。
偶然だ。
「あっ、この前はありがとうございました。私はアニーです。こっちはライラ」
「何?アニー。知り合い?」
ライラが私にこっそり尋ねる。
「ほらこの前、道で野菜を拾ってもらった人」
私も小声で返す。
「俺はコイツを警備の詰め所に連れて行かなきゃならないんだ。アニー、ライラ、おばあさんを送ってもらえると助かる」
「はい、それくらい全然大丈夫ですよ」
「ありがとう。後で君たちにお礼がしたいんだが、どこに行ったら会える?」
お礼なんていいのに。
「たいしたことではないのでお礼なんていらないですよ。それじゃあ、あとはよろしくお願いします」
私はおばあさんをひょいとおんぶするとスタスタ歩き出した。
「お嬢ちゃん、悪いね。せっかくのいい男の誘いを断らせちゃって」
おばあさんが背中からからかう。
「何言ってるんですか?そんなことより足は大丈夫ですか?」
ライラも私とおばあさんの荷物を持ってついてきてくれる。
「ねえ、話に聞いてたよりイケメンじゃない。それに警備隊なら身元もしっかりしてそうじゃない」
「うん。確かにそうかも」
「2度も会うなんてすごい偶然。3度目は運命かもよ」
ライラがニヤニヤと言う。
「もう、からかわないでよ」
次の日、ひだまりの猫ではライラがマスター達に昨日の出来事を話していた。
「で、そのオリバーって言う警備隊の人がアニーに興味津々で、どこに行ったら会えるか聞いているのに、アニーったら教えなかったのよ」
「ちょっとライラ、私だけじゃなくて君たちって言ってたじゃない。それにお礼だって」
マリーさんはカウンターから身を乗り出すように言った。
「そんなにイケメンだったの?警備隊なら変な人でもないだろうし、私も会ってみたいわ」
「もう、マリーさんまで。さすがにそう何度も会うこともないですよ」
「そうなの?残念ね」
マリーさんは本当に残念そうに言った。
それを聞いたディルックがテーブル席を立ってカウンターにやってきた。
「えらいぞ、アニー。そんな得体の知れないやつに仕事先を教えるもんじゃない」
「ディルックには関係ないけどね」
「そんな事言うなよ…そのうち関係あるようになるかも知れないだろ」
「そんな日は多分来ない」
「そんな!まだわかんないだろ」
こんなやりとりも実は結構気に入っている。
素敵な彼も欲しいが、穏やかな毎日を過ごせればそれでいいのかも知れない。
読んでいただきましてありがとうございました。
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