28、夏祭り①
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回少し長くなってしまいました。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
今作も楽しんでいただけると嬉しいです。
いよいよ夏祭りの当日がやってきた。
店は昼、夜とも営業はなしで、夕方から屋台の営業を始める。
夕方といっても真昼のように明るいのだから不思議だ。
私達、ひだまりの猫スタッフは朝からずっとフルーツ飴を作っていた。
そこへディルックも昼頃にやってきた。
「アニー、約束通り手伝いに来たぞ」
「え、ほんとに来たんだ。お祭りに行かなくていいの?」
私がディルックに聞くと、ディルックは少し照れたように答えた。
「やっぱり夏祭りの日には好きな女といたいからな…」
「じゃあ、この苺を3個ずつ串に刺していってくれる?」
「おい、せめて聞いてくれ」
ディルックが悲しそうに言った。
「何?何か言ってたの?」
私が聞き返すとマスターがやってきてディルックの肩に手を置いた。
「手伝いありがとな…。俺はお前の気持ちしっかり聞いたから」
「マスターに聞かれてもな…」
「とにかくせっかく来てくれたなら、どんどん串に刺していってくれる?」
「ああ、任せとけ」
気を取り直したディルックにとともに苺などのフルーツを串に刺していく。
それをマスターがスーパーテクニックで飴を薄くまとわせる。
飴を潜らせたフルーツはマリーさんとライラが箱に刺して、店の冷蔵庫で保管だ。
飴が溶けないように少しずつ出して、屋台で売れたら冷蔵庫から出していく。
他の色んなフルーツで試した結果、苺の他にぶどうと小さめのりんごの3種類を屋台に出すことにした。
「これで準備は終わりだ。さあ、俺たちの屋台を始めよう」
「はい!マスター!」
「いくぞ!」
よくわからないテンションで私達は屋台をオープンした。
祭りはすでに昼過ぎから始まっており、街は活気に満ちていた。
陽気な音楽に乗せて、あちらこちらでダンスをしている人も見かける。
すでに組み立てある屋台に飴を立てていく台を設置して、フルーツごとに飴を並べていく。
売り子は最初は私とライラだ。
「かわいい女の子たちから売り始めた方がいいだろう」
とマスターは言ったが果たして売れるのか?
「いらっしゃいませ!フルーツ飴はいかがですか?」
「苺にりんごぶどうの美味しいフルーツ飴です!」
「冷たくて美味しいですよ!」
物珍しさに一瞬足を止めるも、なかなか買ってくれない。
食べてもらえたら絶対美味しいのに。
「おっ、アニーにライラ、頑張ってるね」
「あっ、ガイアス!」
ディルックの友達冒険者ガイアスが、綺麗な女性の肩を抱いてニコニコと立っていた。
「ガイアスも彼女とお祭りに来たの?」
私の問いにガイアスと彼女はくすくすと笑った。
「違うよ、アニー。彼女はお友達」
腰を引き寄せてお友達とはそう言う意味か…。
これだから冒険者は。
「とにかく、お一ついかがですか?」
屋台の後ろからディルックがガイアスに気がついてやってきた。
「ガイアスじゃねえか。何しにきたんだ」
「ははっ、ほんとにお前が屋台手伝ってるのを冷やかしにきたんだよ」
「うるせえ!買わないんなら帰れ!」
ガイアスはにっこり笑って言った。
「もちろん買うよ。どれがいい?」
甘い声で連れの女性に聞く。
「えーと、苺にしようかな。美味しそう」
「じゃあ苺とりんごひとつずつくださいな」
初めてのお客さんだ!
「ありがとう!2つで銅貨4枚です」
「はいはい」
ライラが女性に苺飴を渡す。
私はガイアスにりんご飴を渡した。
「ガイアス、ありがとう」
「どうしまして。へえ〜、うまそうじゃん」
ガイアスと連れの女性はその場で齧り付いた。
パキンといい音がして、果実の香りが広がる。
「え?何これ?おいしーい」
「初めての食感だな。かなり美味い」
ディルックがそれを聞いて何故か得意げだ。
「そうだろう、そうだろう、美味いだろう」
それを見ていた親子連れが屋台を指差した。
「おとーさん、おかーさん、あれ何?あれ食べたい!」
「何かしら?美味しそうね」
私はチャンスとばかりに声を張り上げた。
「フルーツを飴でくるんだフルーツ飴です。とってもおいしいですよ。お一ついかがですか?」
「…買ってみるか」
「私、苺、苺がいい」
小さな女の子が苺の飴を選ぶ。
「じゃあ私はぶどうにしようかしら」
「俺はりんごにしよう」
家族で買ってくれた一家もその場で食べ始める。
カリッ。
「あら?美味しいわ」
「うん、美味いな」
「お父さん、お母さん、美味しいね」
美味しそうに食べる一家を見ていた、通りかかった人達も飴を買ってくれ、みるみるうちに私達の屋台に列が並び始めた。
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。
返事が返せないこともありますが、感想必ず読んでます。ありがとうございます。
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