17、ディルックを誘います
いつも読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
今作も楽しんでいただけると嬉しいです。
その日の夜営業。
私はいつものようにカウンターに座ったライオネルさんのことを注意深く観察した。
カウンターの隅でひっそりと食事をとっている姿は地味でほとんど目立たない。
冒険者らしく引き締まった程よい筋肉は見られるが、どちらかと言うと細マッチョ系だ。
長めの前髪で顔も隠れて全く見えない。
ライオネルさんを気にしていると、2人組の冒険者の常連さんのうちの一人であるディルックが声をかけてきた。
「アニー、今日も可愛いね。いつならデートしてくれるの?」
ここ1か月、ディルックはほぼ毎日私に声をかける。
冒険者は本当にこんな奴ばかりだ。
ディルックもブロンドに緑の目で顔が良いのでかなりモテるらしい。
軽そうな相手はお断りだ。
「アニーちゃん、こいつ軽そうに見えるけど結構真面目なんだよ。そろそろデートしてあげてよ」
黒髪のガイアスさんもなかなかのイケメンだ。
そうだ!冒険者ならライオネルさんの評判とか聞けるかも。
「ねえ、ディルック」
「え?何何?アニー」
私はディルックのそばに行って小声で聞いた。
「あそこのカウンターの端にいるライオネルさんって冒険者でしょ?」
「え?ライオネル?ま、まさかアニーちゃんあいつに興味があるのか?」
ディルックが声を大きくして騒ぎ出したので私は慌ててディルックの口を手で塞いだ。
「ちょっと!声が大きい!聞こえちゃうでしょ。私じゃないから」
ほっとした様子のディルックの口から手を離すと、さらに聞いた。
「あの人ってどんな人?評判いい?」
ディルックは腕を組みうーんと唸った。
「あいつ、いつもひとりでいるし、ソロで活動してるし、全然悪い噂もいい噂も聞かないんだよな」
「何何?なんの話?」
ガイアスさんも話に加わる。
「確かに。あいつのことはソロでD級ってくらいしか知らないな。仲良さそうなやつも知らないし」
だんだん心配になってきた。
「ねえ、ディルック。アンタ今度の店の休みの日って暇?」
「え?何?ついにデートしてくれる気になったの?もちろん暇だよ。仮に暇じゃなくてもアニーの為なら絶対暇にする」
ディルックがキラキラした目で食い気味に答えた。
「じゃあちょっと私の用事に付き合ってくれない?」
「え?本当に?俺を誘ってくれたの?」
「うん、そうだけど、無理ならいいわ」
ディルックはブンブンと頭を張った。
「無理じゃない!無理じゃないに決まってるじゃないか。絶対行くよ」
「だから、声が大きいって。まあいいわ。じゃあ明後日噴水広場が見えるリグルドさんの武器屋に10時半ね」
「ああ、楽しみにしてる」
「あ、その日は帽子かぶってきてね」
「え?う、うん、帽子だな」
ウキウキしたデイルックを放置して私は仕事に戻った。
「うーん、なんか違うんだよな」
ガイアスさんの声がする。
ごめん、ディルック。
これも全部ライラのためだから。
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。
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