16、ライラのお相手
いつも読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
食堂ひだまりの猫で働き出してから早1か月。
自分で言うのもなんだが、結構仕事に慣れてきたのではないだろうか。
初日こそライラに起こされていた私だったが、長年の習慣とは恐ろしいもので、鍛錬をしないと調子が出ない事がわかった。
なので、毎朝起きると、髪を一つに結び、ピッタリとしたTシャツとパンツ姿で深く帽子を被りランニング10キロ、街の郊外で剣の練習、そして10キロランニングして帰る事にしている。
ロングソードは処分してきたので短剣を使っているが、もしかして短剣の方が私にはあっていたのかもしれないと思うほどぐんぐん上達している。
そして帰ってシャワーを浴び着替えると、軽く食事をとってからお化粧だ。
トントン。
「アニー、用意できてる?」
「はーい、今行くわ」
お化粧が終わると、ちょうどライラが呼びにきてくれる。
今日もいい1日になりますように。
店について、昼の仕込みをしている時だった。
「え?デートの誘いをOKした!?」
「ちょっと!声が大きい!」
なんと!ライラはお客さんからのデートの誘いを受けたらしい。
ライラは可愛くて皆の人気者なので、何度かデートに誘われることはあったが、軽くかわしていることがほとんどだ。
「い、いつの間に…。一体誰なの?その相手は!」
私はライラの肩を両手で掴んで揺さぶった。
「ちょ、ちょっと!苦しい!言うから。待って」
あ、揺さぶりすぎた。
目が回りそうなライラを落ち着かせ、話の続きをねだる。
「で、その幸運な男は誰なの?」
「えっと…いつも夜に一人で来ている冒険者のライオネルさん」
ライオネル…。
いたっけ?そんな人?
私のはてな顔にライラが焦ったように説明する。
「目立たないけどいつもカウンターに一人でいる人、ブラウンの髪で、前髪が長くて顔があんまり見えないけど」
記憶を振り絞ってみると、確かにいつもカウンターに一人でいる地味目な男を思い出した。
「ああ、あの全身茶色の地味な人」
「ちょっと!地味じゃなくて目立たないって言ってくれる?」
「ライラとそんなに話していた印象ないけど。確かD級の冒険者ってディルックが言ってた人でしょ?」
ディルックとは常連のC級の冒険者の2人組の1人だ。
最初はかっこいいなと思ったけど、冒険者は懲り懲りだ。
何度か私をデートに誘ってくるけど、冒険者はお断りだ。
それに私より弱いし。
彼は友達としては楽しいが、恋人には向かない。
どうせなら真面目な地に足ついた職業の人がいい。
「冒険者なんてロクなやついないよ」
「ちょっと!アニーが辛い目にあったのはわかるけど、冒険者が皆碌な男じゃないわけじゃないでしょ」
確かに。
前のパーティのモーリスは真面目で、今やユーリのいい夫だ。
「まあ、そうだね。冒険者でもちゃんとした人もいるな」
「でしょ。実はこの前の休みの日、ひとりで買い物に出かけてたんだけど、風が強くて帽子が飛ばされちゃって…。それを彼が捕まえてくれたのよ」
うんうん、よくある乙女展開だな。
「まさか、それでデートを受けたの?」
「いや、それだけじゃなくて。私、ライオネルさんにお礼を言って帽子を受け取って帰ろうとしたんだけど」
「うん、地味だしね」
「目立たない、よ」
訂正が早い、恋の始まりなのか。
「その時、また強めの風が吹いてライオネルさんの前髪が靡いて笑顔が見えたわけ。そしたら…」
「そしたら?」
「超絶イケメン」
なんと!
「嘘でしょ。あのライオネルさんが?オーラ全くないけど」
「うん、破壊力やばかった。だから今度の店の休みに食事に誘われて、ゆっくり会ってみたいなって思ったんだ」
それは確かにゆっくり会ってみたいと思うな…。
しかし相手は冒険者、どんな奴かもわからないのにか弱いライラをひとりで行かせるのも心配だ。
「ねえ、ひとりで大丈夫?私も一緒に行こうか?」
私なら大抵の相手よりは強い。
何があってもライラを守ることができる。
「やだ、何言ってるのよ。誰か来たらデートじゃないじゃない。それに知ってる人ばかりの街中で変なことなんてされないわよ」
ライラはそう言って笑ったけど心配だ…。
読んでいただきましてありがとうございました。
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