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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
3.結婚しよう

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ふたりで教会に行こう。僕らの結婚式に出るために


 ひとしきり笑ったあとで、ナイト辺境伯が口を開いた。


「――ねぇ、オーブリー」


「何よ?」


「本来はね、共感覚体が『見える』なら、『聞こえる』こともセットである場合が多いんだよ。共感覚体は言語が視覚化した存在だから、受け取り手が『見て』そして『聞き取る』のは、実は本質的に同じことを、別ルートで処理しているにすぎない」


 そんなことがあるのだろうか? 頭が混乱してくる。


「『見える』のに、彼らは同時に『音』でもあるの?」


「『見える』のと『聞こえる』のは、どちらが正解ということはない。――ただこれは両方を実際に体験した僕の見解だが、視覚から取り込んだほうが、行使する魔力は強い。それも比較にならないほどに」


「だけど私は視覚からは取り込めても、それを言語化できないわ」


 おそらく言語化できていれば、魔法が使えたのだろう。


「そうだ。君の場合はものすごく特殊」


 千年にひとりのレアケースで『見えて、聞こえる』人が出る。――ただしオーブリーの場合はもっとレアで、『見える限定』だから、一万年にひとりとかの変種ということ?


 なんかそれって、『馬鹿と天才は紙一重』という言葉を思い出すわね。


 現状オーブリーはなんの結果も出せていない。だから魔法という分野では、やはり落ちこぼれなのには変わりない。


 ただ、オーブリー自身は落ちこぼれであることを、なんとも思っていなかった。それは十歳の時、『無感知(NF)』と判定された時からそうなのだ。


 だってオーブリーは『人間、そんなことより、もっと大事なことがある』という考えを持っているのだから。


 ――とはいえ、魔法の才能がある人を軽視しているわけでもない。


 能力が突き抜けているナイト辺境伯に対しては、やはり敬意は覚える。……その歪んだ性癖はともかくとして。


 考えを巡らせているオーブリーの凛とした居住まいを眺め、ナイト辺境伯の瞳が物柔らかになった。


「――特殊なのは悪いことじゃないよ」


「え?」


「僕より君のほうが劣っているというわけじゃない。君が聞く能力を持っていないのは、何か意味があるのかもね」


「意味……」


「それでね、先ほどとは状況が変わった」


 彼の声はどこか悪戯に響いた。


 状況が変わった?


 オーブリーの心臓がドキリと跳ねる。


 それは……良いこと?


 問うように、彼の端正な顔を見返す。


 期待してしまいそうになる――でも、違ったら?


 もう帰れと言われたら、私、とてもつらいわ。


 だからお願い――……私が必要だと言って。


 祈るように見つめる先で、彼が立ち上がった。


 オーブリーもそれにならう。


 ふたり、向き合って佇む。


 ナイト辺境伯が改まった口調で告げた。


「君は現状、とても危険な状況にあるのが分かった。そうなると、僕が引き取って、みっちり鍛えたほうがよさそうだ」


「それじゃあ……」


「ふたりで教会に行こう。僕らの結婚式に出るために」


 オーブリーの視界がじわりと滲む。


 私は生涯、この時のことを忘れない。


「……もう私を突き放さない?」


「約束する」


 昼下がり。


 場所はカラマツの並木道沿いで、よく晴れた日だった。


 彼がこちらに手を差し伸べてきた。


「死がふたりを分かつまで、ともにいよう」


 オーブリーは彼の手にそっと自身の手を重ねた。


 途端にグイと引き寄せられる。


 オーブリーは悲鳴を上げる間もなく、彼の懐に抱き寄せられていた。


 耳もとに、彼の囁きが落ちる。


「さらにもうひとつ誓おう――君に僕の命を捧げる」


 オーブリーの薄青の瞳からポロリと涙が零れた。


「私より早く死んだら、絶対許さないから」


 オーブリーは涙声になり、彼の首に腕を回してギュッと抱き着いた。




 3.結婚しよう(終)



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― 新着の感想 ―
[一言] おお、気づいてないうちに進んでいた。 そして仲間が増えた。わーい。 いよいよ結婚ですね。愉快な家庭になりそうです。
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