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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
3.結婚しよう

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夫婦喧嘩は犬も食わぬ


 黙って耳を傾けていたオーブリーは、『千年にひとり』の言葉にぎょっとしてしまった。


「え、そうなの?」


 ……あ、でも待って。『千年にひとり』と言っても、ポジティブな意味とは限らないのかも。オーブリーはそれに気づいた。


「それって、私のレベルが『無感知(NF)』であることが関係している? 上位言語を『聞き取れない』人は、その代わりに『見る』能力を授かるとか?」


「いいや、オーブリー、全然違う」


 ナイト辺境伯がきっぱりと否定する。


「僕は物心ついた時には、すでに共感覚体が『見えていた』し、さらに上位言語も『聞き取れていた』からね」


 物心ついた時って幼少期――つまり、三、四歳時ってこと? オーブリーは度肝を抜かれた。


「上位言語って、十歳で参加する『上位言語堅信式』で、神父様が祝福を与えてくださり、初めて聞き取れるものじゃないの?」


 少なくともオーブリーはそう習った。


「普通はそうだけれど、例外もいる」


「どういうこと?」


「教会で行う魔力レベル測定は、実力以上のものが出せるよう環境が整えられているから、あの場で初めて上位言語に触れるという人が多いんだよね。――たとえるなら、高く飛ぶ競技で、その際に踏み台を用意してもらえるか、もらえないかの違いというか。だけど元々高く飛べる人間なら、踏み台なんて必要ない。時も場所も選ばず、ただ自力で高く飛べばいい」


「なるほど」


 その説明は分かりやすいわ、とオーブリーは思った。


 教会には踏み台が常備してあるイメージなのね。


 たとえば、


 ――教会に常備されている踏み台が二十センチです。


 ――五十センチ飛べば、上位言語にアクセスできます。


 ――その子は三十センチしか飛ぶ能力がありません。


 このケースだと、普段は上位言語にアクセスする能力はないけれど、十歳で参加する特別な儀式ならば、踏み台が用意されているから、その力を借りることで初めて最低ラインに届くわけだ。


 そして飛べた高さによって、階層が変わる。


 ――五十センチ飛べば、『軽度 (L)』の階層に行けます。


 ――六十センチ飛べば、『中程度(M)』の階層に行けます。


 ――七十センチ飛べば、『強い(S)』の階層に行けます。


 ――八十センチ飛べば、『極度(X)』の階層に行けます。


 という具合に。


 だから元々八十センチ飛べる能力があるのなら、わざわざ教会に行かなくても、そしてまだ幼年期であろうとも、レベル『極度(X)』に届いてしまう。


「あなたは見える人でもあり、聞こえる人でもあったのね……羨ましいわ」


 オーブリーが素直にそう言うと、ナイト辺境伯が思いがけず優しい瞳でこちらを見つめてきた。


 ……な、何よ?


 オーブリーが眉根を寄せると、彼が吹き出す。


「そんなに警戒しなくても」


「だって」


「君は意地っ張りだけれど、根は素直だよね」


「何それ」


「だってさ――羨ましいわ、と口では言いながら、全然悔しそうじゃない」


「そうかしら? ……でも言われてみると、確かに悔しくはないかも」


「ほらね」


 そんなふうに『お見通しだ』感を出されると、正体のよく分からない恥ずかしさが込み上げてきて、顔がかぁと熱くなる。


 それで結局、可愛くない態度をとってしまうのだ。


「何よもう、私に負けを認めさせたいの?」


「さぁどうかな。もしかすると僕は君に負けたいのかもしれない」


「な……ど、ド変態!」


 オーブリーはキュッとドレスの布地を摘まみ、真っ赤になって怒鳴った。


 精一杯怒っているのに、ナイト辺境伯が楽しげなのはどうして?


「段々、君に罵られるのが快感になってきた」


「もう、馬鹿、黙ってよ!」


 それを眺めていた可愛い小鳥のアヴィスが、『やれやれ』と翼を動かした。


「夫婦喧嘩は犬も食わぬ、というのは本当だな」


 ――ところで輪に加わっているイケオジのインベルは、行儀よく背筋を伸ばして正座しているものの、終始我関せずの態度である。



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