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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
3.結婚しよう

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千年にひとり


 ふと気がつけば、境界がくっきりした長身のイケオジが佇んでいる。


 これにより初めてインベルの姿を認めたナイト辺境伯が、げぇと吐きそうな顔になった。


「うわ、なんだその服、目が痛い!」


「そうよね?」


 やっと感想を共有できて、嬉しいオーブリー。


 インベルの服は緑も紫も色彩が濃くて、毒々しいのだ。


 ナイト辺境伯が眉根を寄せる。


「全体的に気持ち悪いわぁ……僕、そういう押しつけがましい装い、嫌いだわぁ……」


「あるじ、馬鹿げた意見ですね――お洒落は紳士のたしなみですよ。あるじの感覚が子供じみているのです」


 ……あ、こういう声なんだ。


 インベルの声は冷静で平坦、そして少し気取っている。


 オーブリーは感慨深さを覚えた。不思議なことに、たったこれだけのことでも親近感が湧く。 


「いや、正反対だろー」ナイト辺境伯はまるで遠慮がない。「お前、ガワはオッサンだが、中身がはしゃぎすぎている。いい加減にしろ」


 散々な言いようだが、インベルは傷ついた様子もない。


「あるじは戦闘以外センスがありませんね。しっかりしてください。私こそがフォーマル――私こそがたしなみの体現者です」


 このやり取りを聞いていたオーブリーはドン引きしてしまった。……自信満々の狂人ほど怖いものはない。


 せめて『私は個性的なのが好きなのです』と、現状を正しく認識できていれば、こちらも安心できるのに。


 それに考えてみれば、インベルはもともとおぞましいムカデモドキの姿をしていたわけだから、『お洒落は紳士のたしなみ』という言い草はおかしくないかしら?




   * * *




 個性的なインベルが加わった。


 服以外はイケオジのインベル――彼はなぜか正座をしている。


 この座り方はオーブリーにならったのだろうか……謎だ。


 ナイト辺境伯が仕切り直し、ブルーバードに尋ねた。


「アヴィス、お前がオーブリーと知り合ったのはいつだ?」


「十二年前だな。オーブリーはまだ子供で、当時十一歳だった」


 アヴィスはキリリとした顔で告げるのだが、相変わらず、女の子が一生懸命低い声を出しているような喋り方である。


 見た目も頬っぺたがピンクの小鳥なので、全部ひっくるめて、ひたすら可愛いとオーブリーは思った。


「十二年前……」


 ナイト辺境伯が微かに眉根を寄せる。


「そのあいだ、なぜ一度も実体化しなかったんだ? 共感覚体をやめれば、オーブリーと会話することもできただろうに」


「それはだな……絶えず結界を張り続けていたので、実体化したくてもできなかったのだ。私は実体化してしまうと、高度な作業ができなくなるでな。オーブリーがマズイやつに目をつけられないように、隠しておく必要があった」


「隠しておく必要がある、というのはどういう意味?」


「貴殿には分かっているはずだ、私に訊かずとも」


 ナイト辺境伯とアヴィスが見つめ合う。


 ナイト辺境伯は何事か考えを巡らせているようだった。しばらくしてから慎重に口を開く。


「お前がオーブリーと出会ったのは、偶然なのか?」


「そうだ。空を飛んでいたら、なんだか心惹かれるものがあってな――……フォックス子爵家の屋根裏部屋に近づいてみた。そこにオーブリーがいて、目が合ったのだ」


「目が合って、さぞかし驚いただろう」


 ナイト辺境伯がふっと笑みを零すと、アヴィスはくちばしを持ち上げ、機嫌良さげに瞳を細めた。


「驚いたなんてもんじゃないさ。共感覚体を目視できる人間に出会えるなんて、ほとんど奇跡だ――いたとしても、千年にひとりか」



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