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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
3.結婚しよう

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絶叫悲鳴!


「……オーブリー」


「聞いて。たとえ婚約破棄したとしても、私はもう安全じゃない――だって、聖女フェイスの宣託は表に出てしまった。彼女の熱心な信者は『フォックス子爵令嬢は一年後に死ぬべき』と考えているはず。たとえ婚約しなかったとしても、信者に殺される可能性はあるでしょう?」


 オーブリーは彼に訴えながら、『なぜ私はこんなに必死になっているのだろう?』と不思議に思っていた。


 それは、母のため?


 ナイト辺境伯から「君のお母さん、うちに連れて来なよ」と言ってもらえたこと、本当に嬉しかった。それが婚約破棄でだめになるのが嫌なのだろうか?


 そうかもしれない……でも。


 オーブリーが今感じている衝動は、実はもっとシンプルなものなのかも。


 ――彼が一年後に死んでしまうのが嫌だ。


 だって、彼はオーブリーに「逃げなよ」と言ってくれたのだ。自分が損をすると分かっているのに、こちらの身を案じてくれた。


 そんな不器用で優しい人と、ここでお別れしていいの?


 婚約破棄してしまったら、なぜ彼に死の宣託が下されたのか、その真相を知る機会もなくなり、縁が完全に切れてしまう。


 そして自分は元の生活に逆戻りだ――まったく気が合わない、父、キャメロン、ブース婦人のいる、あの屋敷に帰る。


 ――嫌だ。そんなのはもう耐えられない。


 自分を虐げる人と、これ以上は一分一秒たりとも一緒に過ごしたくなかった。


 これは私の人生よ――これからは誰と一緒にいるのか、どこにいて何をするのか、私が自分で決める。


 たとえ一年後に死んでしまうのだとしても、そのたった一年を楽しく過ごせたら、後悔しながら生き長らえるより、ずっと幸せなんじゃない?


 それにふたりで頑張れば、死なないですむ方法が見つかるかもしれない。


 力を合わせて一緒に解決したい。


 そんなふうに強く心に誓ったのに……。


「――オーブリー、聞くんだ」


 ナイト辺境伯が静かにそう切り出した時、オーブリーは内容を聞く前に『良くない話だ』と察した。


 真面目で誠実な態度を取られると、彼の顔があまりに端正なことに気づいてしまい、悲しくなってくる。


 やめて……馬鹿なあなたのままでいてよ。


 彼の瞳が優しくて、エメラルドとアメジストの輝きが、真っ直ぐオーブリーだけに向けられているから、胸がうずいた。


 ……確かに、そう……オーブリーにも分かっている。――なんだかんだと理屈をつけてみても、彼と結婚しないのが一番安全だ。


 でも。


 彼から決定的な言葉を告げられたくない。


 オーブリーは泣きたい気持ちをこらえて、何かを言おうとした。頭の中はグチャグチャで、考えはまとまっていない。


 するとその時――視界の端にふたたびブルーバードが映り込んだ。


 オーブリーが誰かと話している時は、いつもならここまで近寄って来ないのに。ブルーバードは大空を旋回しているのだが、段々と高度が下がってきている気がする。


 ――ふと、ナイト辺境伯が何かに気を取られたように、右のほうに顔を向けた。まるで横手から誰かに声をかけられ、反応したような動きだった。


 オーブリーはナイト辺境伯の横顔を見上げる。


 彼の形の良い唇が動き――……


【――ブルーバード――】


「え?」


 オーブリーは呆気に取られ、ナイト辺境伯をマジマジと見つめた。


 彼はまだ顔を横に向けている。


 今、なんて言った? 聞いたことがない言語だった――……でも、なんていうか、すごく懐かしいような。


 心臓が早鐘を打ち始める――オーブリーも彼と同じほうに顔を向けてみた。


 その結果、目を限界まで見開くことになる。


「――んぎゃああああああ‼」



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