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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
2.オーブリーとナイト辺境伯の出会い

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旦那様が弱いの、私、つらい


 オーブリーは彼の下襟を引き、懸命に伝える。


「詳細は分からないけれど、あなたは一年後、誰かにむごたらしく殺されるらしい。『誰か』というのは、おそらく魔物のたぐいかしら? それで私は、あなたを死なせないために、生贄にされる予定とのこと――……でも待って、なんていうかこれって、根本的に何も解決していないわよね」


「いや、そもそも僕は誰かを生贄にするつもりはなく――」


「まぁ聞いて。仮定の話ね――期日が近づいてきたら、聖女からなんらかの指示があり、私はそれに従って死ぬことになるのでしょう――そして宣託によれば、あなたはそれで助かる」


「いや、知らんけど」


「助かるらしいのよ」


 話を強引に戻すオーブリー。


 ナイト辺境伯は『キスする数秒前みたいな距離感で、この女は何を言っているんだ』と考えていた。情緒はどうなっているんだ、イカレているんじゃないか?


 オーブリーが続ける。


「あなたは死なずに済むけれど、実力でピンチを切り抜けたわけじゃないから、また新たな災難が形を変えて現れると思うわ。――だって人生ってそういうものでしょう? 課題をクリアしないで逃げると、結局、似たようなことがまた起こる」


 彼女は真理を述べている気もしたが、それでもナイト辺境伯は『ちょっと待て』という気分だった。


 これ、どこから突っ込んだらいいんだ。


「私、嫌よ――せっかく生贄になって死んであげたのに、数年後にまた宣託が下されて、『ナイト辺境伯、やっぱり死んじゃいそうです、テヘ』みたいな感じで、新たになんの罪もない令嬢が選ばれて、犠牲になる――その子も、私も、どちらも浮かばれないわ! 全部、あなたが弱いせい!」


「弱いって言うな」


「じゃあ、頼りがいがない」


「失敬な」


「そしてまるで期待が持てない。その上、女子をオーガ呼ばわりする、残念極まりないマインド――新しい花嫁も、たぶん同じハラスメントを受けるんだわ、すごく可哀想」


「どんどん足すね。なんなの君、悪口の才能、すごくない? 十歳からまともに教育を受けていないって、絶対嘘だろ。悪口の英才教育を受けてきただろ」


「旦那様が弱いの、私、つらい」


「情に訴えてきた――ちょっと待ってくれ――僕は何も悪いことをしていないのに、『弱い』『頼りがいがない』『期待薄』と散々な言われようだよ」


「――じゃあ、頑張ってもっと強くなってくれる?」


「いや、そもそも僕は、日々退屈しきっているくらい強いんですが」


 見つめ合う、ふたり。


 ……風がさぁっと吹き抜け、オーブリーの赤毛を揺らした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ナイト辺境伯は『キスする数秒前みたいな距離感で、この女は何を言っているんだ』と考えていた。情緒はどうなっているんだ、イカレているんじゃないか? この部分で笑いました。あとは情に訴え出すオ…
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