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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
2.オーブリーとナイト辺境伯の出会い

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今なら、なんでも聞いてあげる


 オーブリーが瞳をキラキラさせて、前のめりになる。


「OK、任せて。私、猫さん好きだから、真似できる。私、できる!」


「なぜか花嫁がやる気だ」


「メイドがこっそり飼っていたらしくて、白猫が屋敷の敷地内に住み着いていてね、部屋の窓からよく観察してたの」


「ああ、そうなんだ」


「えっとね、そう――人に甘える時は、こんな感じ」


 オーブリーは腰を上げ、ナイト辺境伯のほうに歩み寄った。


 そして彼の左膝の上にストンと腰を下ろした。


 あぐらをかいていたナイト辺境伯は一瞬呆気に取られたものの、彼女が滑り落ちないよう、さり気なく腰に手を回して抱え込む。


 そうしたらなんとオーブリーが、右側頭部をこちらの肩にグリグリこすりつけてくるではないか。縋るように、礼服の下襟ラペルをキュッと華奢な左手で握りしめているのが、妙にキュートだった。


 ていうか……せっかく綺麗にハーフアップにしてあるのに、ほつれるぞ、お転婆娘。


 それに、なんの香りだろう。甘い……フルーツのような、花のような。


「……これ、なんの香り? 爽やかな……花、みたいな」


 考えていることを、思わず言葉に出してしまったのか――……ナイト辺境伯はそう錯覚した。しかし一拍置き、先の呟きは、オーブリーが漏らしたものだと気づいた。


「ああ……ポプリの小袋を内ポケットに入れている」


 ナイト辺境伯が静かに答える。


「おまじない程度だけれど、魔除けになるから」


「ふぅん、そうなんだ、それって――……」


 オーブリーは無邪気に顔を上げ、彼の端正な顔がすぐ近くにあることにやっと気づき、ガチリと固まった。視線を外すこともできず、彼のオッドアイをじっと見つめる。どうしていいか分からなくて、掴んでいた下襟をさらに握り締めてしまう。


 ナイト辺境伯もまた、じっとオーブリーの瞳を見おろしていた。彼女の薄青の虹彩――晴れた日の空というよりも、澄んだ水面のような、涼やかなブルーだ。


 彼が瞬きする――……それは艶っぽいような、それでいて不思議と清潔感のある仕草だった。


「……オーブリー」


「あ……」


「オーブリー、三つ目のお願いは?」


「ん……三つ目?」


「言っていいよ。たぶん今なら、なんでも聞いてあげる」


 甘く蕩けるような口調でもない。けれど素敵な声だとオーブリーは思った。


 落ち着いていて、柔らかで、鼓膜がジンと痺れる。


「あの、私……」


「うん」


 オーブリーはドキドキしながら口を開いた。


「――あなたにもっと強くなってほしい」


 ナイト辺境伯は呆気に取られた。



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