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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
2.オーブリーとナイト辺境伯の出会い

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気が合うわね、私も猫さん派ー


「ふたつ目の要求も呑もう――君に家庭教師をつけるよ」


 ナイト辺境伯にそう言われ、オーブリーは空を飛んでいる青い鳥から視線を外した。


 そして、左右で色の違う彼の虹彩を見つめる――エメラルドとアメジストの煌めき。


「……ありがとう」


 実は少しだけ気後れしていた。


 十歳以降、オーブリーの言葉に誰かがちゃんと耳を傾けてくれたことはなかった。価値がないものとして扱われ、軽んじられてきた。


 ところがどうだろう。


 ナイト辺境伯は口が悪く、のらりくらりと失礼な態度ばかり取るのに、その実、オーブリーの話を意外なほどしっかり聞いている。その上で的確な返事をくれる。


 からかいはしても、肝心な部分は誤魔化さないし、直球だ。


 それがオーブリーは嬉しかった。


 ……生贄として花嫁に選ばれたオーブリーに対し、申し訳なさを感じているから、彼は親切なの?


 それはもちろんあるだろう――けれど、それだけではなさそう。


 こちらが強気に要求しても、彼は『嫌だ』と感じたら、はっきり断りそうだ。


 彼の尺度で『OK』と判断したから、了承してくれた――シンプルに、ただそれだけなのかも。


 ――ところが、オーブリーがこっそり感謝していると、それを見事にひっくり返してみせるのが、この男のすごいところである。


 ナイト辺境伯がヘラヘラ笑って続けた。


「君のオーガっぽさを消してくれる、優秀な家庭教師をつけてあげるよ。せめてゴブリンレベルにまで中和できないかなぁ……て、さすがにそれは高望みしすぎかぁ」


 くっ……これさえなければ……!


 オーブリーは『ここで怒ったら、この男の思う壺だわ。私が苛々するのを見て、愉悦を感じるド変態なんだから、喜ばせたら負け! 大人な態度で受け流すのよ!』と自分自身に言い聞かせるのだが、それでもやっぱりムカムカが治まらない。


 ヒクヒク目元を引き攣らせながら、オーブリーはにっこり笑ってみせた。


「……あら、だけど私、オーガっぽさはできるだけ残しておこうと思うの」


「えー、僕、やだなぁ。オーガな嫁」


 ブーブー言うんじゃないわよ、腹立つわね。大体、『オーガな嫁』って何よ。人間界にそんな嫁いないから。


「ねぇ、『()(なべ)()(ぶた)』って言葉、知っている? ――ほら、あなたって人格が破綻した、ド変態クズ人間でしょう? ド変態クズ人間のくせに、天使みたいな奥さんをめとれるわけがないわよね?」


「ひどい……夫になる男性を、ド変態クズ人間呼ばわり」


「いや、この流れで被害者ぶれるの、逆にすごいわ。悪口言われるのが嫌なら、人をオーガ呼ばわりするのをやめなさい」


「それは褒めているのにぃ」


「褒めているから、は万能の言い訳じゃないから。あなたのほうこそ家庭教師が必要そうね――至急『デリカシー養成講座』を受けたほうがいい」


 オーブリーはプリプリしながらそう言い放ち、ドレスを払って正座し直した。


「――じゃあ三つ目の要求を言うわね」


「山賊のやり口……花嫁が可愛くお願いせず、脅してくる」


「やかましい」


「花嫁に可愛げがない」


「…………」


「花嫁が可愛くない」


 ……畜生。


 オーブリーはチッと舌打ちした。


「分かったわよ、どうしたら可愛げが出るのよ? 言ってごらんなさいよ、やってあげるから」


「すごい上から目線……でも嫌いじゃない」


「なんなのよ、早く言いなさいよ、私の気が変わらないうちにね!」


「えー、じゃあ、もっと上目遣いで甘えながら頼んでほしいなぁ! 猫さんみたいに」


「何よ、あなた猫さん派? 犬さん派じゃなくて」


「まぁそうかな」


「気が合うわね、私も猫さん派ー」


 ひょんなことから、オーブリーの機嫌が直る。


 オーブリーはニコニコウッキウキでナイト辺境伯を見つめた。


 ――ナイト辺境伯は内心度肝を抜かれながらも、この展開に少し興味が湧いたので、しばらく彼女を泳がせることにした。


 ……実は彼、どちらかといえば犬派なのだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 三作読ませていただいています。 オーブリーの性格と掛けあいの楽しさで、こちらの作品を特に楽しく拝読しています。 シリアス展開が待っているんだろうな、と緊張していたはずなのに、いい感じに眉間の…
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