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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
2.オーブリーとナイト辺境伯の出会い

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私に家庭教師をつけてほしい


「要求は四つあるんだっけ? ふたつ目は何?」


 ひとつ目は『お金を貸して』だったが、オーブリーの母を呼び寄せるということで、金銭の貸し借りよりも前向きな解決策が見つかった。


 ナイト辺境伯が芝生の上にあぐらをかき、横目でこちらを眺めてくる。


 この砕けた態度……彼ってほんとに貴族らしくないわ……オーブリーは伏せていた顔を上げ、複雑な形に眉根を寄せた。それは困っているような、照れているような、なんともいえないあどけない表情だった。


 彼はまったく貴族らしくないのに、それでいて不思議な品の良さがある。たとえ軽口を叩いていても、こうしてあぐらをかいてリラックスしていても、その品性が消えることはない。


 教養の基礎がしっかりしているからだろうか。できる人があえて崩しているのと、できない人がありのままできていないのとでは、大きな違いがあるような気がした。


 オーブリーはコホンと咳払いをしてから口を開く。


「ふたつ目のお願いは、私に家庭教師をつけてほしいの」


「なぜ?」


「十歳から、まともな教育を受けていないから」


 オーブリーは正直に答えた。隠していても、一緒に生活し始めたら、基礎が欠落していることはバレてしまうだろう。


「ふぅん……」


 ナイト辺境伯は小首を傾げ、まじまじとこちらを見てきた。


「何よ?」


「いや、なんか、散々オーガ呼ばわりして、ごめんね?」


 なんで詫びるの? オーブリーははっきりと眉根を寄せた。


「何それ、どういうつもり?」


「君が狂暴な理由が分かったから、からかったりして、申し訳なくなっちゃってさ」


「どう分かったというの?」


「君さ、子供時代にオーガに攫われて、それ以降は山で魔物と暮らしてきたんだろう? オーガに育てられたなら、雰囲気が似るはずだよね。悪いこと言っちゃったな、って」


 ……この野郎。


 オーブリーは右手をサッと伸ばし、ナイト辺境伯の首を正面からガツッと掴んだ。的確に急所を押さえる素早い動きだった。


 膝立ちになり、一点を見つめてブツブツと呟きを漏らす。オーブリーの顔は半分陰になり、どこか禍々しい。


「……先ほどちょっとだけ上がった好感度が、ふたたびマイナスに逆戻りだわぁ……なんなのあなた? 母親のお腹に、礼節を置いて出て来た?」


「オーブリーさん、ジョークです。場を和まそうかと」


「黙れ」


「ほらほら、どうどう」


 ポンポン、と手の甲をタップされ、オーブリーはゆっくりと手を離し、ふたたび腰を下ろした。けれど殺し屋のような目つきは改まらなかった。


「私は別にオーガらしさを直したいから、家庭教師を求めているわけじゃないのよ。社交マナーや一般常識に抜けがあると言っているの」


「でもなんか君、結構ちゃんとしてない? ……あのね、僕は本当に洒落にならないくらい粗野な人だと思ったら、オーガ呼ばわりなんてしないよ。教養のなさを笑うのは、後味が良くないしね」


 ナイト辺境伯が首をさすりながらそんなことを言う。この台詞は実感がこもっていたので、本心からの言葉のようだった。



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