表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
2.オーブリーとナイト辺境伯の出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/38

デレるオーブリー


「いい? 私からの要求は四つよ」


 芝生の上に正座したオーブリーは、ナイト辺境伯に向けて指を四本ビシッと立ててみせた。


 ナイト辺境伯は微かに顎を引き、


「えー、そんなにあるの? いくらなんでも、ちょっと図々しすぎると思いまーす」


 と半目になって子供じみた抗議をしてきた。瞼が下がると、虹彩の色が深みを増す。


 オーブリーは前かがみになり、彼の目を覗き込んだ。


「こら、真面目に聞きなさい」


「はい、はい」


「『はい』は一回でしょ」


 めっ、と凄まれて、ナイト辺境伯はほんのちょっとだけ大人しくなった。……なにこれ、威張っている赤毛の猫みたいじゃないか?……彼はこっそりそう考えていた。


「まずひとつ目」


 コホン、と咳払いしてからオーブリーが切り出す。


「――お金貸して」


 シン、とその場に沈黙が落ちた。


 数秒置き、ナイト辺境伯はこれ見よがしに腕組みをすると、分かりやすく渋り出した。


「えー、どうしようかなー」


「いいから貸しなさいよ」


「ていうか、のっけからすごいこと言うよね、君。――悪女か」


「母を今の療養所から別の場所に移したいのよ」


 オーブリーは真面目に説明する。


 母の治療費をこれからはオーブリーが全額負担するつもりだから、すぐにお金がいる。


「できれば西部地方の、あなたの領内に移したいわ。私もちょくちょく会いに行きたいし、父の手が届かないようにしたいから」


「お金を貸すのは別に構わないが」


「よかった」


 オーブリーがホッとして頬を緩ませるのを見て、ナイト辺境伯はなんともいえない顔つきになる。


「何よ?」


「いや、ちょっと気になって。お金貸して、ってさぁ、返すアテあるの?」


「二十五歳になったら信託財産が動かせるようになるから、借りたお金は二年後に全額返すわ。利息はまけて」


「ということは君、今、二十三歳なの?」


「そうよ」


「……あのね、僕、今、二十六歳」


「ああ、そう」


「君の三歳上なわけさ」


「ええ、それで?」


「いや、もっと敬いなさいよ。僕、三歳上ですよ?」


「だったらもっと年上らしく紳士的に振舞ってよね。あなたの態度って、五歳児レベルだから。女子をオーガ呼ばわりとか、万死に値するから。ひどいクズ男だから」


「流れるような悪口……そっちこそ、ひどくない?」


「全然ひどくない」


 にっこり笑うオーブリーに対し、ナイト辺境伯は渋い顔。


「そもそもの話――お金は『貸して』じゃなくて、『ちょうだい』って言えば?」


「え?」


「僕のピンチを救ってくれるんだろう? 恩に着せて、お金をくれ、って言えばいい」


「そういう訳にはいかないわ」


「そうかなぁ?」


「そうよ……だってお金をもらっちゃったら、私もう、あなたに偉そうにできないわ」


 それを聞いたナイト辺境伯が吹き出した。


「君は僕に威張りたいから、お金をもらわないって言うのか?」


「そうよ」


「――OK。君の提案、僕は大変気に入った」


「じゃあ決まりね」


「でも、待った」


 ナイト辺境伯がここで意外なことを言い出す。


「君のお母さん、うちに連れて来なよ」


「……え?」


「行先は療養所じゃなくてもいいだろう? 介護のスタッフはこちらで手配するから」


「でも」


「婚約破棄をして、君の父親に馬鹿げた違約金を払うと思えば、介護費用なんてずいぶん建設的なお金の使い方じゃないか? ――それで、療養所の入院費ならしっかり算出できるけれど、うちに住むとなると計算が難しいから、チャラってことにしよう。どう?」


 オーブリーは頬を赤らめた。……どうしよう、これ、なんて言うか……。


 モジモジと俯き、ボソリと呟く。


「……あ、ありがと。すごく……私」


「――うん」


「すごく、嬉し、い……」


 オーブリーの頬は夕焼けのように赤くなっている。


 どうしていいか分からないというように、ドレスの布地を摘まんだり離したりしている彼女を見て、ナイト辺境伯はくすりと優しい笑みを漏らした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ