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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
2.オーブリーとナイト辺境伯の出会い

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私と結婚して


「もう、メイクが崩れちゃうじゃない」


 オーブリーは赤らんだ顔を横に向け、指先で頬を撫でた。……あとでお化粧を直さないと。


「泣くのが悪い」


 そうからかうナイト辺境伯の口角は微かに上がっている。……何よ、まだ笑い足りないわけ?


「だから、泣いてないですから」


「えー、まだ言う?」


 小首を傾げて下から覗き込もうとしてくるので、


「ちょっと、覗かないでくれる!」


 激しく威嚇。


「ねぇ、こっち見なよ」


「なんで」


「なんかグッとくる」


 ……何それ。馬鹿じゃない?


 オーブリーはふたたびナイト辺境伯に向き直り、怒った顔で彼を睨み据えた。


 毛を逆立てた猫のように肩を怒らせ、ボソリと告げる。


「私やっぱり……逃げない」


「オーブリー?」


「あなたは慰謝料を私個人宛に支払うと言ったけれど、やっぱり契約上、莫大な違約金は全額父のほうに行くと思うの。家同士の契約だから」


「それはそうだけど、違約金とは別に、君個人にも慰謝料を払うから、それでいいだろう? 希望どおり、自由に使えるお金が手に入るじゃないか」


「いやよ」


 オーブリーは声を張り上げた。


「あなたの大切な財産が父に渡るなんて、私、耐えられない!」


「…………」


「決めたわ」


「…………何かな」


「私と結婚して」


 オーブリーは膝立ちになり、彼にのしかかるようにして胸倉を掴んだ。


 ナイト辺境伯はびっくりした顔でオーブリーを見上げている。


 これまで余裕をかましていたくせに、今の彼はなんだかあどけなく見えた。


「……いやあの、オーブリーさん……」


「元々結婚するつもりでここへ来たけれど、今、しっかり心が定まったわ」


「ん? あの」


「私を花嫁にしなさい、ナイト辺境伯」


「えー……」


「えーじゃない」


「逃げられるうちに、君は逃げるべきだよ」


「敵に背中は見せない。背中を見せないというのは、あなたも含んでいるからね」


「僕は敵なのか?」


「味方とは言いがたいでしょ。あなたのせいでややこしいことになっているんだからね! 忘れないで――私はあなたのピンチを助けてあげるのだから、あなたも私を助けるの」


「そもそも僕はピンチなのか?」


「一年後に死ぬんだから、ピンチでしょ」


「なんだろう……なんか、してもいない浮気を責められている気分だ。僕に非はないのに、ひどくないか?」


「してもいない浮気って、どんなたとえよ」


「せめて僕が実際に死にかけたタイミングで、『あなたは今ピンチね』と言ってほしい」


 胸倉を掴まれたままナイト辺境伯がブツクサ言っているのだが、オーブリーは聞き入れなかった。


 ――だって宣託があったのだから、仕方ないでしょう。あなたはピンチなのよ。


「じゃあ、違約金の件はどう? そちらは今まさにピンチでしょう? 借金まみれの未来から、私が救ってあげる」


「だけどそうすると僕、オーガみたいな女性と結婚させられるわけだよね」


「誰がオーガよ、失礼ね!」


 オーブリーが殺気を放ちながら手に力を込めると、ナイト辺境伯が手の甲をタップしてきた。


「――絞まっている、首、絞まっているから!」


「私の言うことを、聞くわよね?」


「なんて狂暴なオーガだ」


「私の言うことを、聞・く・わ・よ・ね? もっと絞めてもいいのよ」


「……分かりましたよ。話だけでも聞くから」


 ナイト辺境伯が観念した様子で、両手を挙げてみせた。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今気づきましたが、下の他連載紹介リンク、1つが本作品のものになってますね。 [一言] 強い。これならきっと勝てるはず…。 あと夫婦としての主導権も握れましたかね?よしよし。
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