表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
2.オーブリーとナイト辺境伯の出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/38

えーと……僕は一年後に死ぬのでしょうか


「……どうして? ひどいじゃない」


 オーブリーは言葉を絞り出した。声が少し震えてしまう。


 怒りからか、やるせなさからか、目元がじんわりと熱くなる。込み上げてくるものをこらえるように俯いていると、彼が静かに立ち上がる気配がした。


 こちらに向き合って立つ彼の靴の爪先を眺める。


 何も言わない……言い訳くらい、したらいいのに。それとも、偉そうに怒鳴ればいい。お前に文句を言われる筋合いはないと、殴ればいい。


 調子狂う。


「あなた、強いんでしょう」


「そうだね」


 落ち着いた声音。答えを躊躇わないんだ。


 オーブリーは反感を覚えて彼の顔を見上げた。


「強いなら、どうして? どうして私を犠牲にするの?」


 言葉に出すと止まらなくなる。オーブリーは彼の顔を見ているようで見ていなかった。全部ぶちまけてしまいたい。聞いてほしいというより、吐き出したかった。


「強いくせに、どうして一年後に死ぬのよ! しっかりしなさい、死なないように頑張りなさいよ!」


「……ん?」


「大体、やり口が姑息よ。自分が生き残るためなら、妻が死んでもいいの? 犠牲になった私の死体を見て、それでも平気で息が吸えるわけ? 人でなしすぎない?」


「いや、ちょっと待って」


「待てない」


「いやあの、オーブリーさん」


「気安く呼ばないで」


「じゃあポチ」


「誰がポチよ」


「ハニー」


「誰がハニーだ」


「えーと……僕は一年後に死ぬのでしょうか」


「え?」


 ふたり、訝しげに見つめ合う。


 奇妙な空気が流れた。


「あー……」


 彼が腕組みをして俯く。そうしてガシガシと手のひらで額をこすり始めた。


「くそ、やられた……あのタヌキオヤジめ……!」


 呻き声。


 一方、オーブリーの頭の中にはたくさんのクエスチョンマークが浮かんでいた。


 ……え、まさか。


「あの……もしかして、知らなかった?」


 恐る恐る尋ねると、ナイト辺境伯はうなだれたまま腰に手を当てた。


 それから彼がゆっくりと頭を上げる。お綺麗な顔が少しやさぐれていた。


「……僕はね、伯父のマーズ子爵には大変お世話になってきたわけですよ。父が早くに亡くなって、祖父は不在がちだったから、親代わりってやつだね」


「そう……」


「そのマーズ子爵に『一生に一度のお願い』って言われたらさ、聞くでしょ」


「え」


「聞くよね」


「いや、知らないけど」


「聞くに決まっている」


 チ、と舌打ちする彼。なんだか苛々しているらしく、踵を地面につけたまま、靴の先を上げたり下げたり、トントンし出す。


「ふた月以内に結婚してくれ、相手はフォックス子爵家の令嬢だ――もうね、問答無用ですよ」


「……はぁ」


「知らん、つーの。誰だよ、フォックス子爵」


「私の父ですが」


「ロクなもんじゃないだろ、フォックス子爵。クソ腹立つ」


「口が悪いわね」


「さらに言うなら、なんで僕が狂暴なポチと結婚しなければならないんだ」


「私はポチじゃない」


「寝込みを襲って、カバンで撲殺しようとするような女だぞ。凶悪すぎないか。これもう魔物だろ」


「失礼すぎない?」


「んん……実は本当にオーガなのでは?」


 ふざけているのか、真顔で腕組みをしてマジマジと見おろしてくるので、オーブリーは歯を食いしばり、プルプルと震え出した。


「間違いない」合点がいったというように、ポンと手を叩く彼。「これは新種のオーガだ」


「……殺す」


 オーブリーは他人任せにせず、この男を今殺すことにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 確かに、彼の身代わりで死ぬということなら先に彼を始末しておけば安全なのかもしれないなあ…。 じゃあ戦って勝った方が生き残るということでどうでしょう。 にしても当人がご存知ないとは。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ