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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
1.死んでたまるもんですか

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12/38

私は決して負けない!


 ブース婦人の泣き叫ぶ声。


 キャメロンが怒鳴る。


 父も怒鳴る。


「黙れ――黙れ、黙れ、黙れ――くそが、黙れ――」


「黙るもんですか、私を黙らせられると――」


「うるさい、うるさい、うるさい! うるさい、オーブリーは死ぬんだ、お前がやらなくったってな、オーブリーは死ぬんだよ!」


「は、何を言って――」


「一年後、オーブリーは死ぬんだよ! なぜかって? 生贄だ! なんでナイト辺境伯がオーブリーを求めたと思う――彼の身代わりにするためさ! 彼は一年後、むごたらしい死を迎えるらしい。聖女フェイスの宣託でそう出たんだとよ! ナイト辺境伯は死を回避するため、オーブリーを犠牲にするしかないんだ! そしてその生贄はほかの誰かじゃだめで、神がオーブリーを選んだ! オーブリーは死ぬ! 死ぬんだ! どうだ! お前もついでに死ぬか? あ? 死ぬか? そうしろよ――ああ、そうしろ、この薄汚い馬鹿女め! それとも私が殺してやろうか! クソガキが、調子に乗りやがって!」


 オーブリーは呆けたように脱力し、廊下の壁に寄りかかった。


 ……何……生贄……? 私、死ぬの……? 顔も知らないナイト辺境伯のために死ぬの……? 父はその話を受けたんだ……娘をどうぞ殺してくださいと、差し出したんだ……。


 母様……私、殺されちゃうよ……どうして? ……なんにも悪いこと、していない。私が何をしたの? 私の人生って、何? 十歳から、二十三歳まで、ひとり屋根裏部屋で過ごしてきた。冬はとても寒くて、足の指が凍えそうで。階下からは父とブース婦人、キャメロンが談笑する声が響いてきて、胸が潰れそうになるほどつらくても我慢した。


 病気の母は療養所に入れられ、会わせてもらえなくて。


 寂しくても耐えた。耐え続けた。


 耐えた先に、きっと希望があると信じていたからだ。


 二十五歳になったら信託財産が動かせるようになるから、そうしたら家を出られる――それだけを夢見てきた。それで母を療養所から出して、自分が面倒を見るんだ、って。


 あんまりじゃない? こんなのあんまりだ。


 そのまま動けずにいたら、広間からキャメロンが出てきた。


 廊下に佇むオーブリーを認め、キャメロンが目を見開く。一瞬棒立ちになった彼女の瞳に殺意が宿ったのが分かった。――暗がりで見る狼の目だわ、オーブリーはそんなことを思った。


 キャメロンが近寄って来る。怒りのためか肩が持ち上がり、内側から噴き出したどす黒いもので、全身が膨れているように見えた。


「――聞いたでしょ、今の」


 瞳孔がすっかり開いている。キャメロンの口が大きく動くと、粘ついた唾液が散った。


「お前は死ぬのよ、オーブリー! ざまぁみろ、クソ女! お前が死んだあと、私がナイト辺境伯をもらうわ! お前は私のために死ね!」


 その瞬間、オーブリーの内面に劇的な変化が起こった。


 闇が祓われ、強い光が頭の中で瞬く。雷に打たれたような心地がした。


 オーブリーは背筋を伸ばしてしっかりと立ち、キャメロンを見返した。


 薄青の瞳が強い輝きを放っている。


 ――相手がすっかりしょぼくれていると高を括っていたキャメロンは、これを見て気圧された。無意識のうちに半歩下がる。


 オーブリーが口を開いた。


「――死んでたまるもんですか」


 怒鳴っているわけではないのに、彼女の声には鞭打つような力強さがあった。


「一年が過ぎても、生き残ってやる。私は決して負けない――指を咥えて、私が勝つところを見ていなさい」


 オーブリーは冷ややかに視線を切り、ドレスの裾を払ってきびすを返した。


 彼女の佇まいは静かで優雅だったが、内心では怒り狂っていた。



 1.死んでたまるもんですか(終)



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― 新着の感想 ―
[一言] よし、勝ちましょう。そしてお母さんも連れ出そう(療養先でそれなりに幸せに暮らしてるかもしれないけど)。 しかし、聖女さんは何をどこまでみて今回の指名をしたんでしょうね。 読み返すと彼女がは…
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