表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
1.死んでたまるもんですか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/38

壊れる


 キャメロンが下の階に行き、十分ほどたってから、何かが割れるような物音がした。


 驚いて扉を開けると、下のほうから怒鳴り声が響いてくる。螺旋階段は縦方向に空間が抜けているから、物音が伝わりやすい。


 何を言っているかまでははっきり聞き取れないが、声の主はキャメロンのようだ。怒り狂っている。


 ……どうやら、ブース婦人がとうとう真実を告げたらしい。


 結婚まであと一週間しかないので、確かにこれ以上誤魔化し続けるのは無理だろう。――いや、そもそもの話、ブース婦人はキャメロンが西部地方に出かける前に伝えるべきだった。


 あと回しにした結果、傷が深くなっただけで、何も良いことはなかったように思う。キャメロンはナイト辺境伯と対面し、彼と結婚する意志を固めてしまった。


 怒鳴り声が断続的に響き、収束する気配がないので、オーブリーは階段を下りて行くことにした。


 このまま上にいて状況が分からないままだと、いざという時に対処できないと思ったのだ。激高したキャメロンがいきなりナイフ片手に現れても困る。


 声は一階の広間から聞こえてきた。扉は閉じているのだが、大声で怒鳴っているので、近くに行くと扉越しでも内容がはっきり聞こえた。


「どうしてよ! おかしいじゃない! オーブリーが、オーブリーなんかが、なんでナイト辺境伯と結婚するのよ! 絶対許さないから! 潰してやるから!」


 不穏極まりない。オーブリーは思わず眉根を寄せる。この調子では本当に、あとでキャメロンに刺されるかもしれない。すぐにどこかへ避難したほうがいいだろうか。


「もういい加減にしないか! 黙れ、キャメロン!」


 今度は父の怒鳴り声。なんでも思い通りにコントロールしてきた人だから、今の状況は彼にとって耐えがたいだろう。


 けれどこの状態に陥ったキャメロンが黙るわけがない。すっかり理性を失っている。


「いやよ、いや、いや、絶対いやだから! 私がナイト辺境伯と結婚するの! 私よ! 私がするの!」


「お前は結婚できない!」


「いいえ、するわ!」


「キャメロン、落ち着きなさい!」


 ブース婦人も金切り声を上げる。興奮した彼女の声はすっかり裏返っている。ブース婦人が怒鳴っているのを、オーブリーは初めて聞いた。


「母様、ひどいじゃない! 私を騙したのね! 絶対許さないから! 殺してやるから!」


「なんてこと言うの、キャメロン!」


「そっちがその気ならね、私を軽く見ているなら、全部ぶちまけてやるわよ!」


「黙りなさい! 親に向かってなんて口を――」


「フォックス子爵に命じられて、ウェブ伯爵と何度も寝たくせに!」


「やめなさい、キャメロン!」


「あれはウェブ伯爵の弱みを掴むためよね――世間に全部ばらしてやる! あんたたちのイカレたやり口をバラしてやるわ! 似たようなこと、何度もやっているでしょう! この家は終わりよ! 地獄に落としてやる! それが嫌なら、私をナイト辺境伯と結婚させなさい!」


 廊下にいるオーブリーは息を殺して佇んでいた。


 これはどんな決着を迎えるのだろう? キャメロンは明らかに一線を越えた。彼女は父を脅した――父は絶対にこの裏切りを許さないだろう。


 キャメロンが私を刺す前に、父がキャメロンを刺すかもしれないわ、オーブリーはそんなことを思った。


 ブース婦人はどうするのだろう。こうなってはもう彼女がなんとかするしかない。


 その後数分間にわたり、狂気じみた罵り合いが続いた。全員どうかしている。


 オーブリーは彼らに同情することはなかったが、話し合いの結果如何によっては、自分もひどい巻き添えを食うことになる――それが分かり切っていたから、石でも呑まされたみたいに胃が痛くなってきた。


「私、死んでやるわ! オーブリーを殺して、私も死ぬ! ナイト辺境伯はさぞかし腹を立てるでしょうね! 花嫁がいなくなるんだもの! ナイト辺境伯にあんたらが殺されればいいわ!」


 獣の断末魔のようにキャメロンが叫ぶと、室内から激しい破壊音が響いてきた。ガラスの割れる音だ。


 誰かが力任せに椅子か何かを窓に投げつけたのだろうか。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ