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私を生贄にしようとするサイコパスたちを、隠れた魔法の才能で見返します  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
1.死んでたまるもんですか

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三秒も私の目を見たの!


「……どんな話をしたの?」


 そう尋ねるオーブリーはすっかり元気がなくなっていた。


 対し、キャメロンは有頂天だ。


「ナイト辺境伯領の手前で、リユニオンという都市に立ち寄ったの。そうしたらナイト辺境伯が滞在していると噂になっていて」


「彼はそこで何を?」


「魔物退治を依頼されて、出張でばりしていたみたい。――ねぇ知っていた? ナイト辺境伯ってものすごく強いんですって! 山を抉るくらいの、とんでもない攻撃魔法も使えるらしいの! リユニオンでは皆が彼のことを話していた」


「よく本人に会えたわね」


「私、あちこち歩き回ったわ。彼の特徴については聞き込みして、頭に入れてあったから、視界に入りさえすれば、見つけ出す自信があった」


 すごい情熱だわ……オーブリーは圧倒されてしまう。そして先ほどからキャメロンは『ナイト辺境伯に会った』と言っているので、そのやり方で実際に本人を発見したわけだ。


 キャメロンこそ魔物退治をすべきだとオーブリーは思った。鼻が利くし、ガッツもあり、腕力も強い。


 キャメロンが得意気に続ける。


「探し始めてから三日後、リユニオン大聖堂から出てきた彼にばったり会ったの! これって奇跡よ! 運命だと私は思った!」


 地道に足を使ったのね。見上げた根性だとは思うけれど、対象がその都市に滞在していることが分かっていて、その上で三日探し回ってやっと発見した場合、それを運命と言ってしまっていいのだろうか。


「……あなた、名乗ったの?」


 そこが気になる。


「いいえ」キャメロンが首を横に振ってみせた。「家を出る前に母がね、『ナイト辺境伯に会っても、名乗ってはだめよ』と言っていたから」


 ブース婦人はキャメロンにまだ真実を話せていないようだが、旅前にそれだけは言い聞かせておいたらしい。


「あなたがブース婦人の言うことを聞くなんて、意外だわ」


 オーブリーはポツリと呟きを漏らした。親の言いつけを守るような、そんな従順な子だった?


「私、ナイト辺境伯に出会った瞬間、こう思ったのよね――偶然出会った私に恋してほしい、って。初対面で『婚約者です』って明かしてしまうより、『旅先で偶然出会った可愛い子』みたいな入り方のほうがよくない? それでね、あとで正式な場で対面して、驚いてもらうの。彼からしたら嬉しさ倍増でしょ。以前ひと目惚れした可愛い女性と結婚できるんだから」


 キャメロンは両手の指を胸の前で組み合わせ、うっとりした顔で、その場でターンしてみせた。


 オーブリーは精神力を削られ、会話を続けるのがしんどくなってきた。


「……それでどんなふうに話しかけたの?」


「リユニオン大聖堂から出てきた彼はね、初め、通りにいた私に注意を払っていなかったの。そのまま行ってしまいそうになったから、腕を引っ張って足を止めさせたわ。彼、びっくりした顔でこちらを見おろしてきた。私の顔をしっかり見たわ。可愛い女の子がしがみついてきたから、こんなラッキーがあるはずないという気分だったんじゃない? 私は観光客のふりをして、『クレリー・パークはどこですか?』と彼に尋ねたの。彼は目の前の通りを指差して、『あの角を右ですよ』と教えてくれた」


「……そ、そう」


 オーブリーはなんとか相槌を打ち、奇妙な気まずさを覚えながら続きを待った。しかしキャメロンはなんだかやり遂げた顔をしている。


 ……え? それでどうなったの? 彼と意気投合して一緒にクレリー・パークを観光したとか、そういうことよね?


「そのあとは?」


「そこで別れたわ。彼、会話の際、三秒も私の目を見たの。三秒よ! こちらに気がないなら、三秒も目を見るはずない」


 そうだろうか? 少なくともオーブリーは誰かと会話する際、相手が男性であっても女性であっても、礼儀として相手の目は見るけれど。


 今の話だと、道を訊かれて、答えての流れなら、三秒間相手の目を見てもなんの不思議もない気がする。


 しかも通りを歩いていて、いきなり見知らぬ誰かが腕にぶら下がってきたら、相当びっくりするわよね。


 ナイト辺境伯はとても強いらしいから、殺気のたぐいには敏感なのだろうけれど、キャメロンに対しては脅威を感じず、風景の一部として注意を払わなかったのではないか。キャメロンは身なりも良いから、真っ先に警戒対象から外したはずだ。貴族令嬢らしき相手が、まさかいきなり体に触れてくるとは思ってもみなかっただろうし。


「――私、母にも報告してくるわ!」


 キャメロンはそう言うと、バタバタと屋根裏部屋から出て行った。



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― 新着の感想 ―
[一言] あれ、タイトル変わりましたか。 妹わけがわからない(笑)。凄いなこんなに話が通じない人は現実にもなかなかいないだろうな。
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