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聖女と副将軍 2


「あの、ハイエル様」

「様など不要なのですが……。まあ、その方が呼びやすそうですね」

「……あの、少しお休みになっては」

「ありがとうございます。ですが、慣れておりますのでお気遣いなく」


 その言葉は、どこかライナスを彷彿とさせる。

 幼い頃からの友人だという二人。

 見た目や印象は違っても、似ているところがあるのだろう。


「では、せめてお茶でも」

「……ふ」


 その直後、ディグノが頬を緩めて笑った。

 笑った顔は、無条件で信じてしまいたくなるほど優しげだ。


「あの……?」

「顔に書いてありますよ」

「な、何がですか?」


 柔らかくまろやかな頬を両手でこするシルビア。

 もちろん、何も書いてはいない。

 けれど、ディグノはいかにも楽しそうだ。


「そうですね。お茶にしましょうか」

「はい! 特製のお茶を入れますね」

「特製……?」

「はい! 疲れが取れますよ」


 カチャカチャと準備を始めたシルビア。

 乳鉢でゴリゴリと潰す音、グツグツと煮込む音、ギュウギュウと布巾で絞る姿を見ながら、少しだけディグノは視線をさまよわせた。


 最後の仕上げに吸い込まれたオレンジ色の光が、完成を告げる。


「長老様直伝、スタミナティーです! さあ、召し上がれ!」


 ディグノの目の前に置かれたティーカップには、何色と表現してよいのか分からない泡立つ液体。

 香りはよいとは言えないし、不透明すぎて底が見えない。


「……はは」


 乾いた笑いをこぼしたディグノは、それでもにこやかにお茶と形容していいか分からないそれを一息にあおった。


「ぐっ、……ごちそうさまでした」

「どうですか!?」


 テーブルの向かいに座って乗り出してきたシルビアに他意はない。

 むしろ、最高の歓迎と感謝の気持ちが込められているに違いない。

 最悪な後味なんてみじんも感じさせずに、ディグノは微笑んだ。


「ああ、でも疲れが取れました」

「そうでしょう。一番効きがいいのですよ! 材料はですね」

「ふ、聞かない方がいい気がしますので……。それよりも、聖女様は俺に聞きたいことが、おありなのでは?」

「えっと……」


 ――――もちろんある。


 だって、ディグノとライナスは幼い頃からの友人なのだ。

 けれど、本人がいないところでその人の話をするなんて、聖女らしくないと長老様は言うだろう。


「ライナスの幼い頃の話は、俺からしか聞けませんよ?」

「……あぅ」

「例えば、あんな姿になる前のライナスは……。いや、ご興味なさそうですね」

「きっ」

「き?」

「きっ、聞きたいです!!」

「そうでしょう、そうでしょう!」


 残念なことに、長老様に厳しく教え込まれたはずの聖女としての矜持は、副将軍からの誘惑に、いとも容易く負けてしまったのだった。

 

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