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第23話 勇者パーティ珍しく酔う

「リッタふゅん……。らたし……と、らいとう……」

「おっけー。おっけー。らいとう。らいとう」


 らいとうってなに? なんて思いながら適当に返事をしてしまう。


 珍しくローラが酔い潰れてしまったので、彼女を支えながら宿泊している宿まで目指す。


 夜も深くなって来ているのに観光地だからだろうか、まだいくつかの店は開いていた。


 むしろ、この時間から開店をしたのかもしれない。


 夜遅くまで起きている人のためだろうか。


 やはり、自分の地元じゃない町を歩くと色々な発見があるから楽しいのだが、酔っ払いを抱えては素直に楽しめない。


 こういう時こそフレデリカの風魔法で、ぷゅーと飛ばしてくれれば楽だろうに。


 まぁ、その時はローラの嘔吐のオマケ付だろうがね……。


 そんな姿を見せればエシオ・オールコックも幻滅するかもな。


 いや……もしかしたら「汚い部分も見せてくれるということは信頼の証」とか言うタイプの男っぽいな。


 一目惚れだもんな。


 多少のことじゃ動じなさそう。


 ローラの嘔吐を浴びても嬉しそうにしそうだよな。あのハチマキ兄さん。


「リッタふゅん……」


 夜風に当たりながら宿を目指しているのだが、先程から呂律の回らない舌で、やたらと俺の名前を呼んでくる。


「ん?」

「えへ……♡」


 顔を真っ赤にして、幼い笑顔を見せてくれる。


 あー、うん。


 珍しく酔ったのは俺と2人だったからか。


 それこそ、ローラが俺を信用してくれているからと受け取ることができる。


 そして、この笑顔。


 この笑顔を見せてくれるなら、嘔吐した姿を見ても何にも思わないな。


 ハチマキ兄さんのことを妄想でとやかく言ったが、俺もその類の人間かも。


 改めて、ローラ・ヴァレリーという女性がどれほどに美しいか出来た夜。


 再認識をしたところで彼女の宿泊施設へと到着。


 だが運悪く、今日の宿は階層が高い。


 流石は観光地というだけあり、宿が大きい。その分サービスも良いのだろう。


 勇者パーティは個人で部屋を取ったり、2、2で分かれたり、時には全員同じ部屋だったり。


 その宿、その状況で宿泊の形を変えているのだが、今日は宿が大きいこともあり、別々に部屋を取っているみたいだな。


 階段で5階まで。


 ローラにはキツいだろうが頑張ってもらいなんとか部屋の前まで着く。


「えへ〜。リッタふゅん。今日は一緒に寝よーよー」

「いや、それは流石に……」

「ひぃじゃんかぁ。おひょーひゃまのあたしのいうふぉとが聞けないのかあ?」

「酔ってるからキャラがブレてるぞ」


「あへ〜?」と回らない呂律でとぼけてた顔をしやがる。


「良いから。先っちょだけ。先っちょだけだから」

「それ、結局は本番ってことだろ。しかもそれってこっちのセリフじゃ?」

「本番♫ 本番♫」

「下ネタをそんなに可愛く元気に言うと、下ネタと感じねーよ」

「よーい、アクション」


 なぜか、いきなり物凄い力で引っ張られる。


「ちょ!? 酔っ払いの力じゃないぞ!?」

「えへへ。朝まで可愛がってね♡」

「これ、俺の方が可愛がられるのでは!?」


 このままじゃ部屋に連れ込まれて、朝まで営んでしまうだろう。


 それはそれで全然アリだが……。


 やっぱり、まだお互いの使命を果たしてないから子供はだめだ。


 だが、なんやかんや俺も酔ってるから力があまり入らない。


 このままでは……俺のフレキシブルな部分が鉄の棒へとジョブチェンしてしまう。


 まぁさっきからローラと密着してたから、既にカチカチなんですけどね!!


「ローラさん」


 ガシッと、俺を引っ張る手を掴んで離してくれたプラチナの髪の美少女。


「部屋の前で男の人を連れ込もうとするなんて、下衆すぎて笑えません」


 ゴミを見る目でルナがローラを見るが、ローラはなんのダメージもなく、にこやかに言ってのける。


「あへ〜。ルナちゃんも一緒にする?」

「な、なにをですか……?」

「3人で朝までイチャイチャだよ〜」

「さっ!?」

「あ、フレデリカちゃんとエリスちゃんも呼ぼうよ〜。5人で〜。ックスン!」

「ゴッ!? セッ!?」


 大きな声を出したルナは小さく口を開く。


「ゴッ……。セッ……。むしろそれがハッピーエンドなのでは……。これがトゥルーエンド……」

「おーい、ルナ……。酔っ払いの戯言を受け入れる気か?」


 聞くと「はっ!?」と我に戻ったルナはいつもの美しい顔で俺を見た。


「そんなはしたない提案はのみませんっ!」


 訂正。


 ルナの奴、鼻から鼻血出してやがる。


 むっつりスケベ勇者め。


 鼻血に気が付いたルナはすぐに鼻を拭いてからローラの様子を見る。


「というかローラさん。珍しく泥酔ですね」

「そうなんだよ。こんなローラは数えるほどしか見たことないよな」

「ええ」


 ルナがローラを見ると「まったく」と呆れたため息を吐いた。


「仕方のない人ですね」


 ルナはローラの手を握ったまま、ローラの部屋に入って行く。


 すると、すぐに「くがぁ」とイビキが聞こえてきた。


 イビキが聞こえてくると、ルナが彼女の部屋から出てくる。


「寝た?」

「ええ。ベッドに転がしたらすぐに寝てしまいました」


 状況を説明してくれると「リッタ様」とルナが名前を呼ぶ。


「これからローラさんへお水を買いに行きますので、よろしければ散歩がてらお付き合いお願いできませんか?」


 夜の海沿いの町をルナと散歩か。


 それはなんとも魅力的な提案だ。


「うん。行こう」

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