番外編 繋がり
「こんにちは、シルヴィア。」
そう言ってティツィは愛馬を優しく撫でる。
カサノ村での一件の後、ティツィが元気になり、シルヴィアに改めて会いに行きたいというので現在厩舎にいる。
「あぁ、本当に綺麗な顔立ちね。全てが完璧と言っていいわ……。」
そう言いながらうっとりとシルヴィアを撫でていて、シルヴィアもティツィに撫でられるのが気持ちよさそうにしている。
「ティツィアーノ様流石ですね。シルヴィアは閣下以外に懐かないのに……。こうも素直に触らせてくれることなんてありませんよ。」
横からセルシオが感心した様に言った。
「そうなの……?でもこの子……どこかで会ったことがある様な……。」
「あるよ。」
彼女は覚えていないかも知れないが、シルヴィアとティツィは一瞬だけ会ったことがある。
シルヴィアはそれを覚えているのか、彼女にもっと触ってくれと甘えている様だ。
ティツィはシルヴィアを、じっと見つめ、記憶を辿っている様だ。
「この子……。初陣の時大蛇に……。去っていくのを見たわ。」
どこかで記憶が結びついたようにハッとティツィが呟いた。
「そう、君が私を助けてくれた時新兵の奴らに狩られそうになった子だ。君と別れた後森の出口で彷徨っていたんだ。母馬も側に居なくてこのままだと他の魔獣に襲われるだけだと思って連れて帰ったんだよ。」
あの時、ティツィを手に入れることは出来ないと思っていた心の隙間を埋める様に……、彼女との何か繋がりが、思い出が欲しくて連れて帰った。
「シルヴィアが新兵に襲われていなければ、君に会うこともなく私は領地に帰っていた。シルヴィアが君と引き合わせてくれたと……思っている。」
「レオン……。」
彼女が頬を染め、引かれる様にその頬を撫でる。
そのまま口づけを落とそうとしたところで、
「道理で!面倒見が良すぎると思ってたんですよ!!シルヴィアに餌やりから、厩舎の掃除!体調管理まで。今までに無い好待遇だったのはティツィアーノ様……!!あだっ!!」
横から雰囲気をぶち壊すセルシオにゲンコツを落とし、厩舎からつまみ出す。
ティツィは茹で上がったタコの様に真っ赤になって固まっている。
「あー……つまり。君との繋がりを大切にしたかったんだ。」
そう言うと、彼女は「嬉しい。」と花の様に微笑んだ。
その瞬間、ブツリと理性の糸が切れる音がした。
「えっ?」
ティツィが小さな声を上げたが、気がつけば藁の上に彼女を押し倒していた。
「レ、レオン?」
そう驚く彼女の頬に唇を寄せる。
そこから耳に、額、髪の毛にキスを落としていく。
「あの頃は、君に笑顔を向けて貰える日が来るなんて思っても無かった。アントニオを……消してやろうと何度思ったことか。」
腕の中で固まる彼女が可愛すぎて、調子に乗って首筋、唇へとキスが移動する。
「まままままま待って!レオン……。無理!無理無理!!しまって!その色気をしまって!!」
真っ赤になって混乱する彼女をもっと困らせたくて、キスに熱が帯びる。
「レ、レオン。」
そう呟きながらも受け入れようとしてくれるティツィが可愛くて……。
調子に乗りすぎて、その夜ティツィが熱を出したのは言うまでも無い。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
新作「妹に全てを奪われた令嬢は婚約者の裏切りを知る〜英雄騎士は愛を乞う」も、
よかったら覗いてみてください。