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守り人の独白

作者: 石尾和未

 深夜、暗闇の中で月夜だけが辺りを照らす集合墓地に清らかな音色が響き渡る。整然と並ぶ墓石たちの中心、舞台のようになっている場所に彼はいた。

 鈍い金の美しい義足。肌は月光に照らされ、色白く。少し長めの髪は青年が舞う度に揺れた。

 自動オルガンの演奏に合わせて舞うのは鎮魂の演舞。今は亡き先代の墓守に教えられたもので、代々受け継がれてきた演舞を彼は大切に舞う。美しくも、神々しくもあるその光景を見る者は誰もいない。死者を弔い、鎮める者。それが彼の役割であった。

 オルガンから音色が止み、辺りに静寂が包まれる。呼吸を整えた青年は近くに掛けていたフードを深く被った。舞台から下りて、月明かりに照らされた道をひとり、歩き始める。

 死は誰にでも等しく訪れるものだ。大抵の者たちは弔われる。その中でも、誰にも弔われない者たち。そういった者たちへの餞に。彼のような墓守が守り、鎮魂を捧げるのだ。

 強く、優しかった、かの先代のようにいつかは彼も次の世代に託し、死ぬのだろう。そんなことは分かっていた。今はただ、この役割を全うしたい。それが自分のすべきこと。その為にも生きる。そう決めたのだ。

「……諦めが悪い、って言わないでくれよ?」

 小さく自嘲した彼はふと足元の小さな墓石を見る。返事は、当然なかった。

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