私と私
『お肉、お肉。』
後輩がスキップしながら、道を歩く。
『せんぱーい、なんかお酒買っていきますー??』
『ああそうだなあ、ワイン。血の滴るような色の赤ワインが、、、』
血の滴る、、
普段こんな表現を、私は使わない。
『いいですねえ、血の滴るようなワイン!』
後輩がくるりと一回転する。
『今日はたくさん食べなきゃいけないとですからね。』
『腐肉を食らうのはもう勘弁したいからなあ。』
腐肉?
私なんで、今腐肉って、、、、
『せんぱーい、お肉って冷凍でも1年持つんですかねえ??』
『さあ?でも食べないと、、バレちゃうから。』
私は何を、、、、
『せんぱーい、大変だったんですよお?取り調べを切り上げるの。自分がいろいろ根回ししたおかげなんですから。』
後輩はわざとらしく、職場の挨拶の仕方である、
『敬礼』をする。
『ああ、、、まあ、でも課長も安心だろ?まさか、コロシ専門の課から、殺人犯が出るなんて、避けたいでしょうに。』
『先輩、それを言っちゃあ、だめでしょ?』
人差し指で私の唇を触る。
私はいま、私を俯瞰している。
それは、私ではないみたいに。
部屋に入り、肉を出刃包丁で裁断する私。
ドン!
ドン!
まな板に肉を叩きつける。
『先輩!お湯沸けましたよ?』
肉をお湯に潜らせる。
見るからに腐っている肉だ。
匂いも酷い。
『この匂いがたまらないのよね。』
私は肉を口に運ぶ。
吐き気がする。
食べている私は、、
美味しそうに食べる。
俯瞰している私は何回も何回も肉を吐き戻していた。