血鍋
新聞。
テレビ。
ネットニュース。
全てに目を通した。
彼が死んでいたことは記事になっていない。
ただの自殺として処理されたのだろうか。
あまりにもあっさりとしている。
私は今日は非番だ。
彼に電話をかける。
当然だが、出ない。
アリバイにもならないが、休みの日に彼に電話をかけるのは当たり前だ。
だから、彼女として電話をかけた。
電話をかけて出なかったから部屋に行く。
これは、非常に普通な流れだ。
何も問題ない。
彼の部屋の前に着く。
彼女だから合鍵がある。
『開けるよー。』
開けた。
特に捜査が入った形跡は見らない。
keep outのテープもなかった。
まだ見つかってないだけなのかもしれない。
電気を点ける。
部屋を見渡す。
ベッドを剥ぐ。
台所を見る。
トイレを開ける。
風呂場を覗く。
『あれえ?出掛けてるのかなあ?』
ドアを閉めて鍵をかけた。
彼のマンションの敷地を出て歩く。
あり得ない。
彼は死んだのだ。
だったら、死体はどこへいった??
それから1年が経った。
彼の白骨死体が今になって、出てきた。
なんでだろうか。
後輩と昼を食べながらそんなことばかり考えていた。
私の犯行を知りながら遺体を隠した人物がいる?
もしくは別の恋人がいて、その人が遺体を埋めた?
いやいや、なんのメリットがあるのだ。
殺したのは私だが、遺棄したらそれも罪に問われるのだ。
なんのメリットもないのだ。
『せんぱーい、今日、先輩の家で鍋しましょうよ。』
『鍋?こんな暑いのに?』
後輩が執務中に話しかけてくる。
執務といっても、課のお荷物の私は、ネットサーフィンをしているだけだ。
『いやあ、だって、先輩んちまだお肉ありますよね?さっさとかたさないとですよ。お肉の消費は鍋が1番ですから。』
『肉?ああ肉ね。』
冷凍庫にお肉がまだあったな。
『ええ、早くしないと。自分があげたお肉、、あんまり人に知られたく無いですから。あんなレアなお肉。』
『そうだな。じゃあ、19時にウチに来なよ。』
『やったあ!先輩んち、久々だなあ!!』
後輩は喜んでいる。
私もさっさと忘れよう。
うちにある大量のお肉を食べながら、忘れよう。