止めなきゃ。
1年前の河津桜まつりの帰り道のことだった。
『楽しかったねー。』
特急踊り子で海を見ながら帰る。
彼は何も言わずに缶ビールを開けていく。
仕事で疲れているのだろう。
今回の旅行も部屋ではひたすらパソコンと睨み合っていたからなあ。
彼は今回の旅行については乗り気でなかった。
しかし、私が駄々をこねたのが功を奏したのか、しぶしぶ来てくれた。
缶ビールを開けると彼は寝てしまった。
私はそんな彼の顔を横目に風景を楽しみながら帰る。
楽しいかは微妙だったのが本音だ。
『次は東京ー、東京ー。』
彼を起こす。
『ああ、もう着いたか。』
『うん。』
踊り子を降りる。
『夕飯どうしようか。』
『んあ?そうだなあ。眠いなあ。』
『・・・うちくる?』
彼の家は東京から一本だが、遠いといえば遠い。
私の家は近いので、そちらに泊まることも多い。
だから当然の流れだった。
『うーん、じゃあいくかあ。荷物もあるし。』
『荷物?ああうん。』
荷物なんて、今回の旅の荷物は少なかったはずだ。
家に着く。
彼は家に着くないなや、私の家に置いた彼の荷物を全てバックに詰め出した。
『え?どういう・・・・。』
『もう別れよう。無理だわ。』
『な、なんで、、、』
『思い当たらねえあたりもう無理だわ。』
え、なんでなんで。
意味がわからない。
どんどん荷物をかき集める彼。
私は、私はどうしたら。
彼を止めなきゃ。
とにかく動きを止めて。
それから、話し合いをしなきゃ。
私はあたりを見渡す。
『あ、、、』
花瓶を次の瞬間。
彼の頭に叩きつけていた。