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ザ・ファイブス  作者: タカミツ
第二章
15/20

幕間4 警察VS爆弾魔


 爆弾魔対策本部は犯人の手掛かりが掴めずに焦っていた。


 現金百億円を積んだ輸送車は指定通り、エンジンを掛けて府警本部の前に止めてある。


 高性能の追跡装置も取り付けてあるし空からの監視も万全なので、見失う心配はないが犯人の行動が全く把握できないのだ。

 犯人からは現金を受け取るまでは、一キロ以内に警察車両が近づいたり走行を妨害した場合は、府庁だけではなく府内の数箇所で爆発が起こると念を押されている。


 十二時前に労務者風の男が府警本部前に現れると、現金輸送車に近づいていった。


「逮捕しますか?」


「あの男ひとりが犯人の訳がないだろ」

 刑事たちが取り巻くなか、男は悠然と輸送車に乗り込むと発進させた。

 警察車両が使えないので、百台近い自家用車が使用されて追跡が始まった。


 輸送車は周りを気にする様子もなく市中を走ると、豊中インターから高速へと入って行った。


「何処へ向かっているのでしょうかね?」


「直ぐに一般車両の乗り入れを規制しろ!」

 各所に設置されている監視カメラのモニターを見ている本部長の命令で、署員が慌ただしく動いている。


「犯人から高速道路を規制するなと電話が入りました」


「こちらの行動をお見通しと言う訳か」

 対策本部では苛立つ声が飛び交っていた。


 白石百々子は犯人の情報を明石龍二に伝えると共に、スマホの電源を入れたままにして本部の動向を随時伝えていた。




 京都方面に向かって走る輸送車は、観光バスの後ろを法定速度で走っていた。


「犯人は何処で現金を回収するのでしょうかね?」


「分からんが、府内の何処に爆弾が仕掛けられている分からない以上、犯人の指示に従うしかないだろ」

 空にはヘリが五機飛び、輸送車の前後には刑事が乗った車が百台近く走っているのだ、現金を奪われる心配は皆無だった。


「もうすぐ天王山トンネルに入ります」


「京都に向かっているのか」

 本部長の脳裏に、京都府警で起きた大惨事がよぎっていた。


「京都府警に応援の要請と、情報の共有を急げ!」


「はい」

 警察の動きが慌ただしくなった。


「大変です、追跡班からの無線が途切れました」


「どう言う事だ!」


「分かりません!」

 情報収集をしている署員は怒鳴られて慌てている。


「ヘリを呼び出せ!」


「こちら、ヘリ二号。現在天王山の上空です」


「状況は!」


「輸送車はトンネルに入り目視できなくなっていますし、トンネル入口では多重事故が発生して大変な事になっています」

 途切れ途切れの音声がスピーカーから響いた。


「一、二号機はトンネル入口を警戒。三、四号機は出口を警戒。五号機は周辺の警戒に当たれ。全機とも可能な限り高度を保て」


「り、よう、かい」


「ヘリの無線も怪しくなっています」


「くそう! 不味いなぁ。 ヘリを現場から離脱させろ!」

 京都府警での惨劇の詳細を聞かされている本部長は、机を叩いて大声を出した。


「何が起きているのでしょう?」

 ヘリと交信をしていた職員が、無音となったスピーカーを見詰めている。


「天王山トンネル付近で、電子機器が使用不能になっているのだ」

 椅子に座り込んだ本部長は頭を抱えた。現場で起きているだろう大惨劇が脳裏をかすめたのだ。




 天王山トンネルの入り口で車30台が玉突き事故を起こし炎上した。

 原因は電子機器の不具合で車が制御できなくなったことによるものだった。

 惨劇は続いた。高速道路にヘリコプターが墜落して炎上したのだ。

 炎と黒煙が舞い上がり、一帯は地獄と化してしまった。


 現金輸送車を降りた霧島源一は前方に止まっている観光バスに乗り込むと、手当たり次第に乗客を殺し始めた。


 霧島源一は人間とは思えない力で人を投げ飛ばし、腕や足を引き千切って噴き出す血飛沫を全身に浴びていた。


 辛うじてバスから逃げ出した乗客も、突然トンネル内に現れた見えない壁に行く手を阻まれた。


 自家用車で近くを走っていた刑事が、霧島源一の確保に動いたが車のライトは全て消え、トンネル内は薄暗い緑色の非常灯が点っているだけだった。


「射殺しろ!」

 上官の命令が悲鳴でかき消されていた。

 数十発の銃声が轟いたが、影が走るたびに刑事の姿が消えていった。


「もうすぐだ。もう少しで鬼人界への道が開くぞ!」

 不気味な声がトンネル内に響き渡った。


 霧島源一が歩く路面は夥しい血が流れて、ピチャピチャと足音を響かせている。


「ここにいる人間を全て殺して、血の道を作ってやる!」

 霧島源一は見えない壁に追い詰めた人達に襲い掛かっていった。


「キヤーッ!」

 逃げ惑う人達の悲鳴がトンネル内に響き渡った。


「来たな!」

 片手で人間を頭上に持ち上げて、流れ出る血を全身に浴びている霧島源一の額に角が生えてきていた。


「現れたか異能者、待っていたぞ!」

 暗闇に影が二つ現れては消えていた。


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