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ザ・ファイブス  作者: タカミツ
第二章
14/20

大阪に入る


 長野の事件から一月が経ったある日、白石百々子から電話が掛かってきた。大阪の連続爆弾魔の犯人が異能者の可能性があると言うのだ。


 連続爆弾魔は今、テレビや新聞を賑わせている事件だった。

 第一の事件は美術館に届いた爆破予告だった。

 爆破時刻までには十時間の余裕があり警察の捜索で爆弾は無事に回収されたが、問題は回収された爆弾が美術館を吹き飛ばすだけの威力があったことだ。


 三日後には、ショッピングモールに爆破予告が届いた。

 爆破時刻までには五時間の余裕があり、警察よって無事に回収されて事なきを得ている。


 警察は二件ともいたずらでないことに神経を尖らせ捜査に当たったが、犯人を特定することはできなかった。


 その三日後に、対策本部に大阪駅に爆弾を仕掛けたと言う爆破予告の電話が入った。

 三件目は一時間しか余裕がなく大勢の警察官が投入されて、大阪駅はパニック状態になったが爆弾は無事に回収されていた。


 と、俺の知っているのはテレビや新聞で報道されていることだけなので、異能者が関わっているとは思っていなかった。


「何か異能者が関わっている証拠があるのですか?」


「これは公開されていないことなのですが、爆発物を仕掛けた犯人の姿が防犯カメラに映っていないの」


「それは犯人が何らかの方法で姿を消していると言うことですか?」


「はい。爆発物が置かれていた場所を映しているカメラには、爆弾が忽然として現れたように映っているのです」

 白石百々子の声が少し上擦っている。


「防犯カメラに細工がされていたとかはないのですか?」


「大阪府警の鑑識が調べたところでは、そのような形跡は一切なかったそうです」


「そうですか。白石さんが調べて異能者が関わっているようでしたら連絡を下さい」

 大阪府警に応援に出向く白石百々子の調査依頼を保留にした。異能者が関わっていると確証がなければ、警察の事件に首を突っ込む気はないのだ。


 もしも姿を消す異能チカラが存在するとして、そんな異能を持った人間と敵対するのは危険極まりなかった。




 白石百々子は大阪に向かう途中に、俺の事務所に顔を覗かせた。


「事件はさらに深刻になっています、一緒に来て頂けないでしょうか?」


「何か確証が掴めたのですか?」


「いいえ」

 白石百々子は首を振った。


「電話でも言ったように、刑事事件に首を突っ込む気はありません」


「爆弾魔は府庁の爆破を阻止したければ、百億円を払えと要求してきたのです。政府も警察もテロの要求には応じません、府庁が爆破されたら多くの人に被害が出ます。力を貸して下さい」

 すでに事件は大きく動き出しているようだった。


「俺は人助けをしてヒーローになりたいなって、これぽっちも思っていません。今回の事件に鬼が関わっているようなら力を貸しますが、テロ事件でしたら関わりたくありません」


「私が爆発物を調べればテロかそうでないかは直ぐに分かります。一緒に大阪に来てホテルで待機していて欲しいのです」

 白石百々子が真剣な表情で俺を説得しようとしている。爆弾魔は予告なしに府庁を爆破すると言っているらしいのだ。


「いいでしょう。ただしこれは白石さんの調査依頼と受け取っていいのですね」


「と仰いますと?」


「調査費が発生すると言う事です」

 長野の一件では35万円を振り込んで貰っていた。


「分かりました。お支払いしますのでよろしくお願いします」


「俺たちは今日中に大阪に行きます。ホテルに着いたら連絡しますので、白石さんは先に行って爆弾を調べて下さい」


「分かりました」

 赤い車に乗り込んだ白石百々子が走り去ると、大阪に向かう準備を始めた。


「どうして私の車で行かないの?」


「俺は街中で小回りが利くバイクで行くから、ヒロミとサスケは車で来てくれ」

 ヒロミがライダースーツを着込む俺を寂しそうに見ている。


「それと五郎丸の鞘と柄も乗せて行ってくれ。検問に引っ掛かれば、チュンコ丸と合わせて子供の玩具だと言えばいい」


「分かったわ。それだけ準備して行くと言う事は、鬼が現れる可能性があるの?」

 ヒロミの表情が強張っている。


「念のためさ。俺は自ら危険に飛び込む真似はしないからな」

 笑って見せたがヒロミに安心感を与えてはいないようだ。


 もしも姿の見えない敵と戦う事になったら思うと、怖くて逃げ出したくなるので考えないようにはしている。




 市内では各所で検問を行っていたが、問題なく予約したホテルに入る事ができた。


 白石百々子に連絡を入れると、驚愕する報告を受けた。

 爆発物に残っていて思念は、人間を殲滅すると言った過激な物だったようだ。

 透明人間の謎は解けていないが、残留思念があったことで過激派の人間が犯人の可能性も残された。


 白石百々子の依頼で暫く大阪に滞在することになった。


「リュウジ、テレビで臨時ニュースをやっているわよ」

 テレビ局に届いた爆弾魔からのメッセージが、大々的に報道されていた。

 内容は、要求が受け入れられない場合、府庁を爆破してさらに無差別に市内を爆破すると言う物だった。

 爆破は明日から百億円が支払われるまで随時行うと、期限を明確にしないメッセージだった。


 これで百億円が支払われなかったら、明日にでも予告なしの爆破事件が起こる可能性が発生したのだ。

 テロの要求には応じないとしてきた政府と大阪府だったが、警察が犯人を逮捕するまでの対応として百億円を用意することになった。

 府庁は厳戒態勢下におかれ、業務は各支所で行うことになったがそれにも限界があった。


 テレビでの報道の後、対策本部に犯人から新たな要求が届いた。

 明日の十二時までに、現金輸送車に百億円を積んで用意しておけと言うものだった。


 白石百々子から犯人を特定できないだろうかと聞いてきたが、無理難題もはなはだしかった。

 未来を見るのも一時間が限界だし、何処にいるのか分からい犯人の心を読むことなどできる筈がなかった。


「できるだけ情報を送るから、何か分かったら教えて」

 白石百々子もかなり追い詰められているようで、早口で喋っている。


「分かった」

 対策本部にも府庁にも近づけない俺に、出来ることは何もなかった。


「どうするの?」

 ヒロミもかなり気を揉んでいるようだ。


「様子を見るしかないだろ。犯人が普通の人間なら、俺が出しゃばる必要もないだろうからな」


「京都府警での事件のように何か感じないの?」


「あの時はヒロミの心を読む事で事件の概要が分かっていたが、今回は大阪に来たばかりの白石の限られた情報しかないからな」


「リュウジ」


「何だよ」

 ヒロミが熱い視線を向けてきたので慌てて目を逸らした。


「今の私の心を覗いて」

 ヒロミが端麗な頬を朱に染めている。


「こんな時に何を言っているのだ、このホテルも爆破されるかも知れないのだぞ」

 部屋の奥に並んでいるベッドが目に入ると、胸がドキドキして息苦しくなってきた。


「それはないでしょ。私はリュウジの傍にいるのが一番安全だと思っているわ」


「言っておくけど、鬼と戦うことになったら逃げてくれよ。府警本部での時のようにヒロミを守りながら戦うのはごめんだからな」

 冷たく突き放すように言った。


「はい。自分の安全を一番に考えます」


「少し街中を見てくるよ」

 ヒロミの笑顔を見ていると引き込まれそうになるので立ち上がった。


「私も行くわ」

 ヒロミはデートに行く訳でもないのに楽しそうにしている。


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