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ゆめのなか

作者: 智鶴

枯れ葉のように浮かんだ小舟の上で

君は得意げに薄い煙を吐き出していた

それは黄土色の空の下で

やけに白く浮かび上がって見えた

不気味なほどに静かな流れは

何処へ着くとも分からない


虚な目で君が指差した先に

怪しげに煙を吐く工場が見えた

薄ら笑いを浮かべながら

君は最後のビスケットを一口齧って

痩せた指で僕を指して言う


           こんな空には丁度いいだろう

         どうせ誰も逃げられないのだから

             欲に逃げるのが怖いなら

          お前も知ってしまえばいいのさ

            終わりが来ない恐ろしさを

              嘘臭い空の色に怯えて

          呼吸すらままならない歯痒さを

              

                  それにしても

              砂糖が少し足りないな

           味気ないなあ、お前みたいに


少し欠けたビスケットを

名残惜しそうに投げ捨てて

残念そうに僅かに笑った

それが最後

俯いたまま君はもう

何もかも忘れて動かない


           お前みたいになりたかったよ

       こんな風に、空を見上げて泣きながら

           吐き出した煙草の煙を眺めて

             美しいと感じたかったよ

                  羨ましいなあ


そんなことを言われた気がする

もう随分前だけれど

空は相変わらず不気味な色で

決して美しくは無いけれど


もうお終い、なんだろう

砂糖が無ければ蜂蜜を

今更もう遅いだろうか

君は砂になってしまった

工場の煙にむせながら

煙草を加えて火を付けて

空を見上げて吐き出した








もう

一度

甘い     。

      

       

夢      。

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