表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侑碍坂線 怪奇巡り  作者: mom
本編
2/10

YU02 多可禍(たかまが)の駅員



宅飲みの帰り、終電間際の人の少ないホームで電車を待つ。

さっき別れたばかりの友達からのメッセージに返信していると、画面の上に通知が来た。


《駅員からのお知らせ:ホームで漏電がありました。お客様は駅員室まで避難をお願い致します。》


「げっ、まじかよ」


漏電、っつーと感電とかするやつか。

さっさと避難しようと思うも、駅員室がどこかわからない。

他のヤツについていけば良いかと周りを見ても誰も動く気配はない。


「……ん?」


向こうの椅子に座っているオバサンに目を向けると、緊急事態らしい様子もなく普通に座っている。

よく考えたら、この通知はスマホがないと見れない。普通アナウンスだろ。

すげー不親切だな。


オバサンに言った方がいいだろうかと考えていると、また通知音が鳴った。


《駅員からのお知らせ:虹色の土偶のキーホルダーの付いた鍵の落し物を預かっております。お心当たりのある方は、改札階、東側の駅員室までお越し下さい。》


めちゃくちゃ心当たりある。

それは俺がリュックにぶら下げている鍵だ。

今度は駅員室の場所がちゃんと書いてあって助かった。取りに行こうと改札階に戻ろう。


────いや、漏電は?


「いやいや、漏電どうなった」


おかしい。漏電で避難とか言ってから数分も経ってないのに、落し物とか呑気にお知らせしてる場合じゃないだろ。

階段に向けた足を戻す。少ない客は何もないみたいにまばらに電車を待っている。


そもそも、俺は駅の情報メール的なものに登録なんてしてない。特に気にしてなかったけど、このお知らせ何で来るんだ?


そう思いだすと、色々と変だ。気味が悪くなってきたところに駅のアナウンスの音が響く。

驚いてスマホを落としかけた。


《幸崎 康太さん、伝言を預かっております。至急駅員室までお越し下さい》


滑舌のいい男の声は、確実に俺の名前を呼んだ。

……なんだ、なに? また駅員室だ。名指しで、俺を呼んでる?

全部内容がコロコロ変わって、手を替え品を替えとにかく駅員室に来るよう誘導されている気がする。しかも、俺の名前を知ってる。…………何で?


頭が混乱してきて、勝手に後ずさった体がホームの壁にぶつかる。

ガチャンと音がして、リュックのポケットにぶら下げていた鍵が揺れた。


「あ………………?」


ある。鍵、ある。

じゃあ何だ? 落し物って俺のじゃない?

いや、虹色の土偶のキーホルダーとか被るか?

え、じゃあ嘘? まさか、俺を呼び出すため……何のために? 何でキーホルダー知ってんの??


固まっている間にも、スマホが連続して震える。ブブー、ブブー、と音を立てて、画面の上に入れ替わり入れ替わり通知が来る。




《駅員からのお知らせ:幸崎 康太さん、早く来てください。》

《駅員からのお知らせ:駅員室は改札階すぐです。》

《駅員からのお知らせ:迷ったらヒント出しますので。》

《駅員からのお知らせ:駅員が待っていますよ。》

《駅員からのお知らせ:康太さんまだですか?》

《駅員からのお知らせ:お知らせ届いてますか?》

《駅員からのお知らせ:届いてますよね?》

《駅員からのお知らせ:寂しいです。寂しいです。うさぎになって死にそうです。》

《駅員からのお知らせ:首を長くして待っていますよ、これじゃあキリンですね。》

《駅員からのお知らせ:大丈夫、気長に待ちます。》

《駅員からのお知らせ:お菓子もありますよ。》

《駅員からのお知らせ:嘘ついてごめんなさい、ごめんなさい。来てください。》

《駅員からのお知らせ:すぐ帰すから》

《駅員からのお知らせ:なんで来ない? なんで? なんで?》



「お、おわぁああああ!!」


危うくスマホを投げそうになったところで、電車がホームに入ってきてドアが開く。

飛び乗れば、ひっきりなしだった通知はピタッとなくなり、後には発車のアナウンスに混じってホームのアナウンスから舌打ちが聞こえた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ