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プロローグ

 かつて大いなる戦があった。

 古代エスティール大戦と呼ばれるその戦争は100年もの間続き、大陸全土を戦火の渦に巻き込んだ。


 その古代エスティール大戦において互いに憎しみあった種族があった。

 その種族は竜と虎。


 この両種族は互いに殺戮を繰り返し、覇権を争い、憎しみあった。

 やがて竜と虎、両派に別れて始まった古代エスティール大戦も終盤にさしかかると劣勢となった竜は絶滅の危機にさらされた。


 しかし、それでも虎に完全たる勝利は訪れる事はなく、天より横やりたる闖入者が攻め入り大陸を平定してしまう。


 伝承にはこうある。

 かの者、不可思議な道具を使いて竜、虎、その他の種族を殺戮す。

 かの者の侵攻により古代エスティール大戦は事実上終結し竜と虎、その他の種族の時代は終わる。

 生き抜いた者達は生き抜くためにかの者の姿に化け、かの者の中で暮らしていく。

 しかし、彼らへの迫害は姿に化けたとて消えず……


 これがエスティール大陸における魔獣と呼ばれる種族「メディル」の歴史の終結であり、人類の歴史の起源である。


 それから時は流れエスティール暦3078年、人類は比類なき繁栄を遂げていた。

 環境保全、自然保護の名目から大陸の大半は手付かずの状態であったが、政治の中枢たる王都は縦横無尽に機械が空を飛び交う機械都市であった。


 そんな文明が発達した人類社会では歴史をこう習う。


 かつてこの大地を獰猛な獣たちが支配していた時代があった。

 獣たちはそれぞれ縄張りを持ち、それぞれが自らの種族を守るべく力を振るった。

 そして長い年月を経て大陸全域にまで生息範囲を広げた獣たちは誇り高く自らをメディルと呼んだ。


 そんな中、メディルの種族間で対立が起きる。

 竜と呼ばれるメディルの統率を取る種族と竜の統率からの解放を唱える虎の種族の対立だ。


 やがて竜と虎の対立は後に聖獣戦争、人類の名称では古代エスティール大戦と呼ばれる大きな争いを生む。

 互いに憎しみ殺し会い、その余波は大地へと向けられ大規模な環境の変化を生んだ。

 そして聖獣戦争の結果、メディルの時代は幕を閉じる事になる。


 メディルはこの環境の変化を乗り切るため環境変化の少ない台地を目指した。

 やがてメディルの去った土地に新たな種族が生まれた、後にその種族は高度な科学技術を持つ人類へと進化する。

 だがメディルは全滅したワケではなかった。


 人類が繁栄の道を辿る中、特殊な力を持った獣は人に姿を変え、人間社会に溶け込んできた。

 人の時代が形作られていく過程で人間の姿に成りすましているメディルたちは奇妙な力を使う異種族として奴隷に近い扱いを受けていた。

 それしか人間社会でメディルが生き抜く術がなかったからだ。

 かくして、人間とメディルの階級社会が完成したのである。


 これが人間側に伝わる歴史である。

 しかし、実際は人類の大陸襲来によって聖獣戦争(古代エスティール大戦)は事実上終結したのである。

 人類のエスティール大陸侵略、侵攻によるメディル大量虐殺によって……


 この事実を人は歴史から抹消した。

 教育課程で学習する歴史ではエスティール侵略とメディル虐殺は教えず、メディルは人間の下僕であると教育した。


 さらに人類が作った歴史ではない、真実が記された歴史本や資料は禁書とされ、王政府が回収し、すべて焼却処分となった。


 事実上、考古学者や民間口伝による過去の逸話を聞かされていない者にとって、もはや人類によるエスティール侵略は一般常識でない、歴史を理解していない馬鹿げたお伽話となってしまったのだ。


 それでもメディルは真実の歴史を口述によって伝え続けてきた。

 しかし、メディルの言うことをまともに聞く人間がいるはずもない。


 だが、人類は気付いていなかった。

 メディルたちの中でまだ聖獣戦争が続いていることを……

 竜と虎の残虐な殺し合いはまだ終わりを迎えていなかったことを……

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