安藤さん事件・その4
二〇九二年十二月二日
きょう就職課で求人票を見ていたら、DDドリンクの求人があった。大きな企業だけあって、給料やその他の条件はわりといい。
「へえ、けっこういい求人きてるよ。DDドリンクだって」
「給料もわりといいし、大きな会社ってのが魅力よね。倒産とかリストラの心配が中小企業よりは少ないから」
そばにいた人たちがそんな話をしているので、ほんとうのことをぶちまけたくなった。
むずむずした気分でいると、その二人が気になることを言った。
「それにしても、こんな大きな会社、どうしていまごろ、うちの会社に求人出してきたんだろ? 大きな会社って、夏休みあたりまでに採る人をだいたい決めてしまうって聞いたよ」
「そういや、そうねえ。内定を取り消した人とかいたんじゃないの? でなきゃ、事務の準社員は一流大学では集まりにくいとかじゃない?」
気になったので、改めてDDドリンクの求人広告を注意して見た。
たしかにいくつか並んだ職種には「一般事務」「経理補助」などといった事務系の職種が多いけれど、「総合職」というのもある。
DDドリンクは、大企業というほど大きくはないけど、規模からいえばいわゆる中堅企業の部類に入り、これまでの雇用のしかたをみているとかなり保守的だ。つまり、総合職や研究職の求人は一流大学にばかり出して、建前では男女平等だけど実際に採用するのは大多数が男性、事務の補助職はほとんどが女性で、そのうち正社員や準社員として採用するのは大多数がお嬢さま系の短大の新卒……という会社なのだ。
いや、もちろん、わたしはDDドリンクで働いたことがないからそう詳しいわけじゃないけど。以前に安藤さんに少し話を聞いたし、正社員と準社員とパートのそれぞれの男女別従業員数とか、多い出身校なんかは就職情報誌などでわかるから、推測はつく。
もちろん、男女差別はもう一世紀も前から違法とされているから、求人広告を見ているかぎり、性別によって職種や学歴や年齢に差はないけどね。でも、そんなのは建前って会社は多い。ほんの何人かだけ女性をそこそこ出世させて、「当社は女性も活躍しています」とかいっていても、正社員と準社員やアルバイトの男女比率とか管理職の男女比率を見れば、「性差別はない」という建前を取り繕うためにごく少数の女性を管理職にしているだけってのは歴然としている……。そういう会社はけっこう多くて、DDドリンクもその一つなのだ。
そのDDドリンクがうちの大学に求人を出してくるというのは、考えてみれば妙だ。うちは一流大学じゃないし、エスカレーター式の中学と高校は併設されているけど、短大はなくて四年制だけだ。それに、企業に受けがよさそうな学科よりどちらかというとアカデミックな学科が多いためか、生徒の六割以上が女性だ。
つまり、DDドリンクがうちの大学に求人を出すのって、ちょっと解せない。
これが同じように保守的だった別の中堅企業なら、方針を変えたのかと素直に受け取って喜んだと思うけど、なにしろDDドリンクだからね。この会社、いまのわたしの目には、お子様番組によく登場する「世界征服をたくらむ悪の秘密結社」の類とまではいわないけど、それをみみっちくしたような悪者として映っている。
まさかと思うけど、わたしをおびき出す罠なんてことはないだろうな?
そうかんぐりながら、DDドリンクの求人ナンバーをメモした。念のために就職課の人に探りを入れてみようと思ったのだ。
「ナンバー六四五八三のDDドリンクの募集についてなんですけど」
「ああ、DDドリンクね」と、就職課の人がすぐに応じてくれた。少し気の弱そうな感じの若い男性だ。
「さすがにわりと大きな会社だし、条件もいいから、希望者が多いね。ライバルが多いけど、まあがんばってみなさい」
「あ、いや、まだ応募するかどうかはっきり決めてないんですけど、ちょっと聞きたいことがありまして……」
言いながら、どうたずねたものか迷った。
「怪しくなかったですか?」なんて聞いても、変に思われるだけだろう。
「この会社、いままで四年制の女子を採らないって聞いてたので、それについて何かいってなかったかと思いまして……」
「ああ」と、就職課の人はすぐに納得した。
「だいじょうぶ。その点は確認した。女性だからという理由で落としたりはしないそうだよ」
なんておめでたい人なんだ。そう思ったので、話が脇道にそれてしまうな……と思いながら、つい反論した。
「そりゃ、口ではそう言うでしょうよ。内実はどうでも、建前では性差別をしてはいけないことになってるんですから」
「だいじょうぶだって。そういう建前と本音が全然違うのは、ぼくにはわかるから。つまり……」
就職課の人は少しためらってから、声をひそめた。
「ぼくはテレパスだから」
「は?」
「いや、だから……。ぼくはテレパスなんだよ。あまり知られていないかもしれないけど、テレパスってのは世の中にけっこういるんだ。そうじゃない人には信じられないかもしれないけど」
そうむきになって説明してくれなくても、テレパスがほんとうにいるってのは、よく知ってるって。最近出会ったばかりなんだから。
でも、だからこそ、目の前の人の言うことをにわかに信じられなかった。
だって、そうでしょ? 二十二年生きてきて、テレパスの知り合いなんてひとりもいなかったのに、急にふたりも湧いて出てくるなんて。
「思いっきり疑っているね」
その人はため息をついた。
「まあ、むりもないけど。まあ、だからね、求人票は性別で差別していなくても、ほんとうは男子しか採る気のない企業とか、何かうさんくさいなとか、そういうことはぼくがチェックしてるから、だいじょうぶなんだ。それもぼくの仕事だから」
それがほんとうなら、うちの大学の就職課、ずいぶん良心的といえるけど、ほんとかなあ?
「つまり、DDドリンクの人にあやしい点はなかったわけですか?」
「ああ。うちの生徒が是非にと面接に行って、とても熱意があって感じがよかったので、できれば女性のほうがいいと思っている一般事務や経理補助も、四年制の大学で募集することにしたと言っていて、それが嘘じゃないというのはわかったよ」
うちの生徒が面接に行った? ほんとかなあ?
考え込んでいると、就職課の人がたずねた。
「で、どうする? なんなら説明会に行ってみて、自分の判断で確かめたら?」
「そうですね。でも、わたし、いま返事を待っているところが二社あって、自信は全然ないんですけど、その説明会の前にもしも内定の通知がきたら、そこに決めてしまって説明会に行けなくなると思います。それって、まずいですか?」
返事待ちが二社というのは嘘ではない。内定の通知がこなくても、たぶん説明会には行かないと思うけどね。「たぶん」っていうのは、DDドリンクに探りを入れるチャンスかも……と少し思っているからだ。それはやばいとは思うんだけど。
「それはかまわないよ。推薦状は希望者全員に発行するんだし。成績証明書発行の手数料がもったいないっていうのなら、説明会は次の土・日もその次の土・日もあるんだから、待ってみるかい?」
「あ、いえ、発行してください」
成績証明書は別に使いまわしできるんだし。推薦状を使うかどうかは、説明会とやらの日までに考えよう。
そう思って、会社説明会に必要な書類一式を申し込むために学生証を見せたら、就職課の人は妙な顔をした。
「天野梨沙さん?」
「はい、そうですけど?」
「きみはDDドリンクの面接に行ったんじゃなかったのか?」
「はい?」
質問の意味がわからない。
「さっき言ってたDDドリンクに面接に行って気に入られた生徒って、きみじゃないのか?」
「知りませんよ?」
「あれっ? たしかにDDドリンクの人が名前を出していたの、天野梨沙さんって名前だったと思ったけど? 同姓同名の人がいるのかなあ?」
「さあ?」と返事をしたけど、まちがいなくわたしと同姓同名の人が面接に行ったわけじゃないと思う。
「そのDDドリンクの人って、面接に来た人の名前をわざわざ出したんですか?」
「ああ、部長がいたく気に入ったとかいって、天野梨沙さんのことをいろいろ聞かれた」
「聞かれた?」
「うん、もちろん、『素行にまったく問題のない品行方正な生徒です』って以外、生徒のプライバシー情報になるようなことは何も話していないがね」
「その『品行方正』ってのは何が根拠なんです?」
「そりゃあ、何か問題を起こせば、名前は知られるだろう?」
なるほど、ブラックリストに載って学校の職員に名前を覚えられてしまったりしないかぎり、「素行にまったく問題のない品行方正な生徒」になるんだな。
じゃあ、ひょっとして、「うさんくさくない企業」ってのも同じような基準なんじゃ……。
「たぶん、同姓同名の人なんだろう」
就職課の人は自信なさそうに言って、「どうする?」と確認した。
いちおう、書類一式申し込んだ。成績証明書の受け取りは明日になるけど。
で、夜に一ノ瀬さんに電話して、ことの次第を話した。
「うちの学校にも求人が来てたわ」と、一ノ瀬さんが言う。
「いちおうわたしも推薦状を取っといたけど、その説明会とやらをどうするかよりも前に、そちらのそのテレパスとかいう就職課の職員にあたってみたいわね。そちらの大学に行ってみる。あさっての午後なら、わたし、講義がないから」
都合のいいことに、わたしもあさっての午後は二時半に授業が終わる。それで、一ノ瀬さんにうちの大学の生徒のふりをしてもらって、就職課に案内することにした。
二〇九二年十二月四日
一ノ瀬さんと校門の内側で待ち合わせをした。
彼女、髪を金茶に染めてポニーテールにし、伊達メガネをかけていて、以前会ったときとがらっと感じが違っていたので、すぐにはわからなかった。
「わたしよ、一ノ瀬よ」と言われ、しばらくまじまじと見つめてしまった。もしも偽者だったら……という疑惑がよぎったのだ。
だが、よく見ればたしかに一ノ瀬さんだった。おまけに『見張りがいたので変装したのよ』と頭のなかで声が響いたので、もう疑う余地はない。
たしかに、一ノ瀬さんが見張られていたのなら、別人のように雰囲気を変える必要があるだろう。彼女に尾行がつくぐらいなら、たぶん、わたしも外出するときには見張られているだろうし……。
そう思って、ちょっと不安になった。
一ノ瀬さんがいくら変装したって、わたしについている見張りに、ここでわたしと会っているところを見られたんじゃ、今度はこちらの姿でマークされるんじゃないだろうか?
気になったので、就職課のある管理棟に向かって歩きながら、一ノ瀬さんにたずねた。
「ひょっとして、わたしも見張られてる?」
「ううん。キャンバス内にまでは入りこんでいないみたいね。少なくとも、いまのところは」
つまり、これから入りこんでくる可能性はあるってことね。
「見張りがいるのとか、テレパシーでわかるの?」
「たぶん、たいていは気づけると思う。相手が肉眼や双眼鏡で見張っていて、こちらが注意していればだけど。少なくとも、校門のちょっと先の喫茶店に見張りがいたのはわかったしね」
「そんなの、いたの?」
「ええ。あなたが出てくれば、あとを尾行しようとしていたみたい」
「じゃあ、待ち合わせ場所、門の内側にしておいてよかったかな」
「そうね。まあ、門の外で待ち合わせをしてたとしても、あの店からここの門を見張るのはちょっと無理じゃないかな。双眼鏡とか、やはり目立ってまずいと思うみたいで、使ってなかったし」
「で、見張りの頭のなかとか読んだんでしょ? 何かわかった?」
「下っぱで、理由とか何も知らされずに見張ってるってことぐらい。あなたを見張ってるやつも、わたしを見張ってるやつもね」
話しているあいだに、わたしたちは就職課の前まできた。
いまの時期、就職課に一ノ瀬さんのような頭で入るのはちょっと目立つけど、たまには髪を染めている人もいないわけじゃないので、べつに不審がられはしない。
それより心配なのは、あの就職課の人の読心能力だ。あの人のほうが一ノ瀬さんよりテレパスの能力が強かったら、彼女がニセ学生のうえにテレパスだとばれてしまう危険があるんだけど、きのうのうちに話し合ったところ、一ノ瀬さんの考えでは、そういう可能性は低いという。
彼女は、テレパスとしてはかなり高い能力の持ち主で、おおかたのテレパスはそれほどの力はないんだそうだ。
で、わたしが就職課の窓口にいき、一ノ瀬さんは数秒遅れて無関係の就職希望者のようなそぶりで入り、カウンターの横の机にいくつも置いてある就職関係の資料に目をパラパラ通しはじめた。
きょう窓口にいたのは、きのうとは別の人だったが、きのうの人は少し奥の机で仕事をしていた。
で、資料を渡してくれた女性の職員に、「あの人にきのういろいろ相談に乗っていただいたんで、お礼を言いたいんですけど」と頼んだら、すぐに呼んでくれた。
「この人がお礼を言いたいんですって。もてもてでいいわね」
女性職員はくすくす笑いながら自分の机に戻り、かわりに、きのうの職員が「ああ、きのうの……」と言いながら窓口にきた。
おおぜいの生徒を応対しているのだから、覚えていないかもしれないと思っていたが、覚えていてくれたようだ。
きのうのお礼を言うと、「で、行くのかい、DDドリンクに?」と聞かれた。
「ああ、ええ、連絡待ちのところがだめだったら、行ってみようかなと思っています」
「う……ん、そうだね。連絡待ちのところ、受かってるといいね」
どうも、きのうと違って歯切れの悪い言い方をする。
「あの? DDドリンクに何か問題点でも?」
「あ、いや、きのう、きみと話したあと、気になりだしただけだ。でも、ぼくが会って話をした人、田村課長さんって人だけど、何も不審な点はなかったから、心配することないよ」
で、もういちどお礼を言って就職課の部屋を出ると、しばらくして一ノ瀬さんが出てきた。
「ついでにDDドリンクの求人票も確認してきた」と、一ノ瀬さんが言った。
「うちの学校に来てたのとまったく同じだった」
それから、校舎の一角にある休憩コーナーに行った。
うちの学校には、学生食堂とは別に、ソファとドリンク類の自販機があるだけの休憩コーナーが何ヶ所かある。そのうち、あまり利用者のいないコーナーに一ノ瀬さんを連れて行ったのだ。
「あの就職課の人、ほんとにテレパスだった」
買った缶コーヒーのふたを開けながら、一ノ瀬さんが言った。
「あんまり力は強くないけど、この学校に就職するとき、テレパシー能力をウリにして採用されたみたいね。DDドリンクの息がかかっている人じゃないわ。それが心配だったんで、確かめようと思ったんだけど」
そういう心配をしてたのか。いや、わたしもそういう可能性はチラッと思わないでもなかったけど、いくらなんでも考えすぎだろうと思ってたんだ。
「あの人は、少し疑問を持ちかけているけど、それほど本気で疑っているわけでもないみたいね」
「疑ってるって、何を?」
「DDドリンクの担当者があなたの名前を持ち出したことをよ。ちょっと含みのある言い方をしていたでしょ?」
たしかに、「連絡待ちのところ、受かってるといいね」という言い方は、暗にDDドリンクの面接に行かないほうがいいと言っているみたいだった。
「あの人は、念のためにあなたと同姓同名の生徒がいるかどうか調べてみて、いないとわかったので、不審に思ったのよ」
「あ、そうか。ちゃんと調べてくれたんだ、あの人」
DDドリンクの人は、「面接に来て気に入った」という理由で、わたしの名前を持ち出したんだものね。で、わたしが知らないって言って、同姓同名の生徒もいなければ、そりゃ不審に思うでしょうよ。
「あれ? じゃあ、なぜ、それほど本気で疑ってないんだろ?」
「自分が聞いた名前がほんとうに『アマノリサ』だったかどうか、自信がなくなったのよ。会話の途中でちらっと聞いただけの名前だもの」
「なるほどね」
「それに、DDドリンクの担当者と会ったとき、テレパシーのチェックに引っかかってこなかったってのも大きいでしょうね。テレパスは、まあ、人の心を読むことにかけては自信を持ってるもの。田村課長とかいう人の心を読んで、嘘をついている形跡がなかったのなら、ちらっと聞いた名前の記憶のほうがまちがってたんじゃないかと思うでしょうよ。とはいっても、DDドリンクに対して抱いた疑惑は捨てきれないみたいだけど」
「どういうことなんだろ? あの人はテレパスなのに、その田村課長って人と話をして、何も変に思わなかったってことは……。田村課長って人は事情を知らなくて、ほんとにわたしが面接に行って、DDドリンクの偉いさんのだれかに気に入られたと思ってるってことかな、やっぱり」
「たぶんね」
一ノ瀬さんがため息をついた。たいしたことがわからなくて、がっかりしているのが感じられた。
「田村課長って人のほうが、あの就職課の人より強力なテレパスなので、だましとおせたという可能性もないわけじゃないけど……。事情を知らないという可能性のほうが高そうね」
あーあ。結局わかったのは、犯人じゃない人の名前だけか。ま、その田村課長って人が犯人一味のだれかの部下なのはまちがいないんでしょうけど、事情を知らずに求人広告を出すよう命令されただけじゃねえ。
いや、待てよ。何かが引っかかっている……。
「その田村課長って、どうしてわざわざわたしの名前を出したんだろ?」
「そういえばそうね」
「わたしの耳に入るのを予測して、挑戦を突きつけてきた……ってことは、いくらなんでもないよねえ」
「うーん。どうだろ?」
「わたしのことを探ろうとしたのかな?」
一ノ瀬さんはしばらく考え込んで口を開いた。
「何の目的であなたの名前を出したのかってのが、あの求人広告を出した目的につながってると思う。あの求人広告の目的、わたしたちをおびき出すためって可能性と、たんにわたしたちのことを探るための口実って可能性があるよね」
「探るためだけなら、やり方が大げさな気がするけど?」
「そんなこともないと思う。だって、あなたの学校は就職課の人がわざわざ面会したりして、用心深いけど、うちの学校なんて、メールか電話で連絡してそれで終わりよ。ふつうはそうよ。求人広告を出すのに手間なんてかからないわよ」
「でも、それなら探れないじゃない? ……あ、そうか、広告を出したあと、面接に来たとかいって情報収集できるか」
「うーん、その田村課長って人、どう命令されたのかなあ。あの就職課の人が田村課長から読み取ったこととかは、あの人が思い出した範囲で読み取れたんだけど……。とにかく上のほうの人が突然言い出したことらしいってのと、田村課長本人は四年制の大卒女子を事務職に採るのはあまり乗り気じゃないけど、上司のやることに反対する気はないってことぐらいしかわからなかったわ」
それじゃ、これ以上のことを調べようと思ったら、とりあえずあの求人に応じるしかないのかなあ。
そう思って、一ノ瀬さんに言ったら、彼女は厳しい顔になった。
「面接に行ったらテレパスが待ちかまえているかもしれない。まさかとは思うけど……。あの就職課の人ぐらいのテレパスなら、けっこうたくさんいるし……」
ちょっとぉ。相手がテレパスだとしたら、こっちが考えていること、読み取られてしまうじゃないのさ。そんなのと太刀打ちできないよ。
「どうしたらいいのか考えてみる」
一ノ瀬さんはそう言い、わたしも彼女が帰ってからずっと対策を考えているんだけど……。どうすればいいのかわからない。