第7話:趣味に興じて①~3周年目前、ボス討伐前編~
☆前回のあらすじ
夢から覚めた彗太は、結花の仕事終わりを狙って2人で会いたかったため、結花の指導する硬式野球部の練習場へと足を運んでいた。
彗太は、結花の指導が終わるのを待ちながら思いをはせる中、仕事場からのメールに続きスマホからアラーム音が鳴り響く。
それは、彗太の趣味に関するアラームだった。
今回はサブストーリー的なお話になります。
彗太君の趣味であるソシャゲのお話。
※文章表現の追加です。2つ有り。
①ゲーム内チャットでは、
チャット種類)〇〇:発言内容
と言う風に表記します。
例)
ギルド)コメット:チャットテスト!
→ギルドチャットでコメットというキャラがチャットテスト!と発言している
という感じになります。
また、②ゲーム内で連続したチャットが『同一場所で同一人物の時』は、発言間にわざと空白を入れて表現します(それで文字数稼ぎを個人的にしたくない為)
例)
PT)コメット:お前この例題
PT)コメット:これでいいと
PT)コメット:思っているのか?
↓
PT)コメット:お前この例題 これでいいと 思っているのか?
魔法詠唱中とかスキル発動中でも合間に喋りたい時とかあるけどいっぺんに喋る時間が無い時に区切って喋るときなんかのあれですね。
VRMMOとかそういうネトゲじゃなくて、あくまでスマホゲーなので。実際にやったことある人は納得出来るんじゃないかと思います。
用語
ギルチャ→ギルドチャット
ギルメン→ギルドメンバー
最終タゲ→最後にターゲット
エンチャ→エンチャント
本日よりゲーム内キャラ5名追加になります。
・コメット→メイン:ウィザード、サブ:パラディン
※↑今回の主人公である彗太のゲーム内のキャラ名です
・スターダスト→メイン:ブレイダー、サブ:ビショップ
・みのり→メイン:アサシン、サブ:トラッパー
・響夜→メイン:エンチャンター、サブ:黒騎士
・ミー子→メイン:ビショップ、サブ:精霊召喚士
4人とも古参ギルドとして彗太達と一緒にギルドを支えて来たメンバー達です。
「ログインしないと」
自分の携帯のアラームに諭され、何時もの日課をすっかり忘れていた事に気付くと、急いでスマホを取り出し、画面中央にある中心に剣が描かれたカラフルなアイコンをタップする。
早く早く。
思わず心の中で呟いてしまう起動中のそのゲームは、3年程前から俺がハマっているスマホゲー『アークレジェンディア』というゲームだった。
”メッセージが1件来ています”
アプリを起動した直後、中央にメッセージが出てくる。
「あれ、メッセージが来てる。なんだろ」
”差出人:スターダスト 件名:ちょっと忙しいかも… 本文:仕事で動けそうにないからログインだけして放置しておくね。追尾設定にあらかじめしてあるから、連れてって貰えるなら16時半のイベントだけでいいから、引っ張ってくれるとありがたいかも!出来ればお願い!”
割とよくあるスダさんからのいつものメッセージ。差出時間は昼の1時過ぎか。
そもそもゲームをやるプレイヤーっていうのはほぼ中身は男だろうから、スダさんも男なんだろうけど…。
あんまり男と喋ってる感じがしないんだよなぁ、なんか調子が狂う。
俺はそんな事を思いながら、指先でアプリを操作し本日のログインボーナスを貰う為、サインインする。
危うくログインボーナスを受け取り忘れるところだった…。アラームセットして置いてよかったなあ。結構大きいんだよなぁこれ。
ゲーム内の特定のダンジョンに侵入するには1日当たり回数制限がある。ログインボーナスではその回数券を増やすことが出来るので、課金を基本的にしないプレイヤーには特にこのログインボーナスが大きいのだ。
今日は毎月1日開催の16時半~17時までのボス討伐。9時~11時、14時~16時、19時~21時の間にログインボーナス。そして明日行われるギルド戦と日曜日に発表される攻城戦の対戦相手の発表だ。
「日曜日の相手は…。って、フェアリーテールかよ」
フェアリーテールはうちのギルドと同時期に出来た数少ない古参のギルドだ。
攻城戦を陥落させる挑戦権を得るには、別途開催されるギルド戦で上位の成績を収めている事が必須条件となる。
先月に開催されたギルド戦のポイントランキング1位が、そのフェアリーテールだ。
うちも今じゃ10連続以上も防衛中の大規模ギルドだけど、そもそもこのフェアリーテールからこの城を奪ったという経緯があり、言うなれば因縁の相手だ。一筋縄じゃ行かないだろう。
城を所持することで常時得られるデイリー報酬が、月日を経つごとに跳ね上がっているのも、攻城戦が白熱する一つの要因だ。
だから、城を長期に渡って所持し続けるというのはトップクラスのギルドの証でもある。
うちのギルドメンバーは、他のギルドと比べても比較的微課金以下が多いから、この報酬が有るのと無いのとでは、モチベーションが段違いに変わってくる。
今回の攻城戦できちんと防衛することが、今後のうちのギルドの活動にも大きく影響するのは間違いない。
しょうがない、今回はギルマスに幾つか対策案をメール打ちしておくか…。
そして俺は、出来るだけ多く、今までの経験からあらゆる可能性を考える。
てか、定期試験の試験対策をする時よりも頭使ってんな俺。まー、趣味に情熱を傾けたら皆こんなもんか。
そんな阿呆な事を俺は思いながら、攻城戦について対策を練るのだった。
*********
「アラーム…。ボス討伐の時間か」
追加でセットしておいたアラームの時間は16時20分。一通り案については纏め終わったから、ギルマスに送信しておこう。
俺は慣れた手付きで手早くメールを送り終えると、すぐさま16時半からのイベントの準備をする。
”スターダストを仲間にしますか はい いいえ”
PT組もうとするとメッセージが発生する。毎度の事だ。はいはい。
”スターダストが仲間になりました”
ブレイダーにされてたらちょっと困ったが、ビショップになってたのは有り難いな…。
このゲームは基本的に、ログイン後放置したままのメンバーが、予め追従設定をONしておけばオート戦闘は行ってくれる為か、放置中の人を連れ回すのは良くある話だ。
とはいうものの、スキル回しをオートで取り敢えず行うものだから、手動と比べて精度はかなり低い。
ビショップは基本的に回復をする支援職なので、ダメージを出す職ではないから比較的オート戦闘でも精度は落ちないのが強みだ。要は放置戦闘向きって事だな。
回復手段があまりないこのゲームには、ビショップが仲間に居るのは非常に有り難い。ネトゲで時々耳にする歩くポットとは正にこの事。いつも感謝してるよスダさん。
ギルド)コメット:5分後に始まるボス討伐参加したい人募集@3(こちらビショ、WIZかパラディン
何時もの様にギルチャへ募集の書き込み。
(うちのギルメン、ログイン表示は出てるんだが時間帯的に忙しいのかな。そもそも16時半~17時とか時間が悪いんだよなぁ…。9時5時の普通のサラリーマンなら仕事終わるかどうかの時間帯だっての)
そう思うと自分の環境が如何に恵まれているなっていうのを実感する。学生という肩書は今月で終わりだけど、卒業してもある程度は仕事の自由が聞くからな。忙しい時は忙し過ぎて困るけど。
ギルド)みのり:うちらも2人なんだけどそっちはまだ2人?
そんな事を思っていると早速ギルチャで反応が来た。
ギルド)コメット:まだ2人のままです。そっちはみのりさんと…響夜さんでいいのかな?
ギルド)みのり:そそ。アサとエンチャね。うちらもまだ組んだばっかりなんだよね。そっちと合流していい?
ギルド)コメット:いいですよ。あ、スダさん放置中のビショだけど大丈夫です?
ギルド)みのり:別に問題ないよ。回復ある程度飛んで来ればそれで問題なし!
ギルド)響夜:同じく問題なし( ゜Д゜)
ギルド)コメット:響夜さんもこんばんは。それじゃあ2人を招待しますね。
”みのりが仲間になりました”
”響夜が仲間になりました”
ギルド)響夜:(*`・ω・)ゞヨロシク
ギルド)みのり:宜しくお願いします。
ギルド)コメット:よろしく。メンツ的に@1は火力職でいいかな。火力@1誰かいないか?
いないかな。反応が無いって事は放置中か別のPTに既に入っているのだろう。
10秒程待ち、他に誰も反応が無いので野良募集をしようとチャットに打ちかけた時だった。
ギルド)ミー子:あのー。私も入りたいんだけど。ビショップじゃやっぱりだめですか?
ギルド)コメット:ビショップか。ちょっとまってね。
PTチャットに切り替えるか。
PT)コメット:俺は別に問題ないと思っているのだけど、2人はどう?一応聞いておきたい。
PT)みのり:火力的には既に足りてるから問題ないんじゃないかな
PT)響夜:ボス討伐っていっても何あるか分からないからねぇ。ビショ2でも別にいいんじゃないかなぁ(=゜ω゜)
響夜さんには今までも結構助けられたことがある。察知能力というか勘が鋭いプレイヤーだからな。
ギルド)コメット:ミー子さん問題ないので、PT申請飛ばしますね。
俺は急いでギルチャで反応を返すと、PT申請欄からギルドの項目のミー子に対して申請を飛ばした。
”ミー子が仲間になりました”
PT)ミー子:ありがと~(><)
PT)みのり:よろしくね~。
PT)コメット:よろしく。それじゃあ開始前1分なんで飛びますね。みんな追従設定お願い。
PT)響夜:(*`・ω・)ゞヨロシク
PT)コメット:募集〆 間違えた
ギルド)コメット:募集〆
俺は早速イベントがあるフィールドへと飛ぶことにする。今回のフィールドは…。
なんだ火山地帯か、ビショ2は別に問題なかったかもしれない。
*********
PT)みのり:いつも思うんだけど。画面越しで見てるだけで体温が上がりそうだわこのマップ。
PT)響夜:(´Д`υ)アツイ
相変わらずグラフィックに凝ってるよなあこのゲーム。生肉を床に落としただけでステーキーが出来そうだ。
PT)ミー子:持続回復をパッシブに入れておきますね
このフィールドは常に持続ダメージでHPが減る場所だ。恐らくは溶岩の傍にいるからという演出の為なのだろうが、此方からすれば良い迷惑なんだよな。スダさんはパッシブに持続回復がはいっていないからとても助かる。
”これよりボス討伐イベントをこれより開始します”
時間になり、画面中央にテロップで運営からそのアナウンスがなるのと同時に、フィールドの至る所に巨大モンスターが姿を現す。
PT)コメット:今回はやけに多いな、新規のプレイヤーが一気に増えたせいか。
出現する巨大モンスターの総数は、フィールド内にいるプレイヤーの人数で決まってくる。それが今回はいつもより比較的多いのだ。今回プレイヤーが一気に増えたのも、あの人がこのゲームをやってるってメディアでいったからなのが関係しているんだろうな…。
PT)みのり:それじゃああいつにアタックするからコメちゃん最終タゲ頼むよ
PT)コメット:了解。響夜さん氷エンチャ頼みます。
PT)響夜:∠( ̄◇ ̄)了解
こうして俺達5人は、ゲーム内イベントのボス討伐へと挑むのだった。
パーティーメンバー
コメット(黒木彗太):パラディン(タンカー)
スターダスト(???):ビショップ(回復職:放置気味)
みのり(???):アサシン(火力職)
響夜(???):エンチャンター(支援職)
ミー子(???):ビショップ(回復職)